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熊本奈々子
1996年の大統領選挙でクリントンが再選された理由を追跡するには、クリン
トンの第一期目の政策に注目する必要がある。特になぜ中間選挙で共和党が逆
転するに至ったかの経緯について調べてみる。まず、始めに92年の大統領選挙
でクリントンが当選した理由、そしてその時の米国社会について述べることに
する。
<第1期クリントン政権の米国の社会背景>
- クリントン大統領は、冷戦後はじめての大統領であった。ソ連という核
を持った軍事大国が消滅した結果、米国は外交よりも内政に力をいれる時にあっ
た。
- 米国の景気低迷の長期化。また、人種問題、貧富の差、教育の荒廃、犯
罪の多発、モラルの低下などといった社会問題が増加し、「アメリカン・ドリー
ムの崩壊」ともいえる閉塞感が国民の間で広がっていた。このことがブッシュ
大統領の最大の敗因ともいわれる。
- 92年大統領選は、国民がクリントンを支持したというよりも、ブッシュ
に反発した結果という見方が強い。また、国民の政治不信が広がり、既存の二
大政党以外の第3の革新的な候補者であるぺロー支持に有権者はまわった。
92年の大統領選の流れをみていくと、1980年代に強い勢いをもったレーガノミッ
クスと呼ばれた「小さい政府」と「福祉国家的政策志向からの離脱」に特徴づ
けれれる政策方針がその後の財政赤字と貿易赤字の急激な増大で破綻し、国民
の間に不満が蓄積した。その不満を代弁していたのがぺローであるが、クリン
トン自体も、従来の民主党の伝統的な政策からは一歩距離を置き、中道寄りに
構えることでいわゆる「レーガン・デモクラッツ」の引き戻しに焦点を絞った。
その結果、ブッシュを支持していた層の相当数がぺローもしくはクリントンに
流れたのである。
少なくともこの頃の米国民は、クリントンの唱える撮にある種の希望を抱いていたはずである。
有権者の92%はアメリカの現状に不満で変化を求めると答えていたのとは裏腹
に、1992年の出口調査によると55%のアメリカ人が引き続き「小さな政府」を
望んでいた。
つまり、クリントンが当選後提唱した医療保険改革など社会資本充実の重視と
いった政府の積極的関与の方向へ有権者の関心が傾いていったのではなく、ク
リントンの示すような新しい「民主党」の政策に期待していたという面が強かっ
たと思われる。
この有権者の保守化志向が形をもってあらわれたのが94年の中間選挙、96
年の大統領選であった。一体、この92年から94年の間に何が起こったといえる
のだろうか。
Shuichi Shibukawa
Thu May 8 12:52:18 JST 1997