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国防長官〜ウィリアム・コーエン〜

クリントン政権の1期目は、民主党・共和党の政策対立と政治抗争で明け暮れ た4年間だったと言っても過言ではない。クリントンはその反省に立って、大 統領就任演説でも議会に協調を訴え、同時に人事においても超党派人事を断行 した。その結果が、国防長官に就任したウィリアム・コーエン氏である。クリ ントンが議会運営を考慮して中道派の共和党議員から閣僚候補を検討したとき、 腹心のゴア副大統領が、上院議員時代に一緒に国防問題に取り組んだコーエン を強く推薦した。ライバル政党から閣僚が指名されたのは、ケネディ政権の際 のダグラス・ディオン財務長官以来のことである。彼はこれまで共和党議員と してボスニア・ヘルツェゴビナ派兵問題などでクリントン政権を激しく攻撃し てきたが、これからは超党派外交のパイプ役として、議会とホワイトハウスの 円滑な政策仲介の努力が期待されている。

最近では、彼が訪日直前に、「朝鮮半島統一後も在日米軍の駐留を変えず、沖 縄の米海兵隊の将来の削減の予測もない」といった趣旨の発言をして日本政府 を驚かせ、沖縄県や野党の強い反発を招いた。

いずれにせよ彼の起用は、冷戦後の地域紛争への対応や、今年から本格化する 軍事力の総合的な見直し作業をめぐって、議会共和党の批判を封じ込める意図 が見えかくれしている。持論の「国益にかなう超党派の防衛政策」をいかにう ちたてられるか、力量が問われる時である。



Shuichi Shibukawa
Thu May 15 15:42:32 JST 1997