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3.ネットワーク・コミュニティの生成
2015年の情報化にかんしては、現在想像できる水準はほぼ達成されていよう。 マルチメディアを基本して超高速のモバイル・ネットワークが充実して、いつでも どこでも簡単にアクセスできて、インターラクティブなコミュニケーションが自由
にしかも低コストできるような情報インフラができていよう。とすると、地球規模でのサイバースペースへの瞬時アクセスが可能になるから、 グローバル・コミュニティが実質的な機能を果たすようになるだろう。ネットワー
クは、あらゆる境界を超えてどこまでも拡散する。それがグローバルでしかも多様 性を前提にしたコミュニティの形成を約束する。しかしこれと対照的に、身体性との関連で空間的に制約されたコミュニティが再
生されることが、さらに重要なことである。55年以降の産業化と都市化の段階では 地縁・血縁のコミュニティ(村社会)は拒否され、弱者保護の行政による福祉コミュ
ニティ(老人会とPTA)だけは機能したが、基本的にはコミュニティは無用であっ た。
しかしこれからのネットワーク社会では、新しいコミュニティが不可欠になって くる。それは、階層的組織と核家族のセットが崩壊した後、その受け皿としてコミュ ニティが必要になるからである。仕事場は、SOHOとかモバイル・オフィスに見られ
るように、既存の組織の境界を超えて、家族にまで浸透するようになるが、それは 同時に、核家族の境界が解消され、機能的な専業(夫は外、妻は内)体制が崩壊し て、両者の融合が一気に浸透する、という新しいシステムへの変化を要請すること
でもある。このとき、ネットワーク環境に支えられた新しい家族(これを携帯家族 と呼ぶ)は、核家族のように閉じた境界にこだわることなく、もっと積極的に外部 に開いた家族になる。そこでは、従来ならば家族の中で保護されていた子供や老人
も、ここでは外部からの支援を自明として、ネットワーク環境で支援されるように なる。このとき、家族そして組織も、コミュニティを欠落させては存立しえなくな る。
しかもこのコミュニティは、かつての地域社会(村社会)とは違って、グローバ ルなネットワークとストレートにリンクしているから、コミュニティ自体も閉じる ことがない。それがネットワーク・コミュニティである。ネットワーク・コミュニ
ティは、組織や家族という社会とグローバルな社会とを、国家という媒介を超えて、 ストレートにつなげる新しい結節点である。それは、かつての地方の時代のスロー ガンのような、中央に対する地方の自立ではなく、コミュニティが一気に世界に開
かれると同時に、世界をストレートに内に取り込むことで、地球規模での多様性に 貢献することを使命としたコミュニティである。
1995年を過ぎて早くも2年、2015年に向けて期待と自覚を明確にしなければい けない時期にきている。
※データは、1995年と2015年にかんしては、厚生省人口問題研究所の平成4年9月の将来推計人口を採用。
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