箕原辰夫


メニューバーとメニュー

WindowsやUnix上のX11と異なり、Macintoshではメニューバーは、 基本的には画面の一番上方に一つしか存在しません。 他のウインドウシステムでは、ウインドウの中にメニューバーが配置されるのが一般的です。 これは、最初にMacintoshが設計されたときにユーザ・インタフェースのシンプルさを考慮したからです。 Mac OS Xになってからも、この配置のままですし、 おそらくMacintoshのデスクトップの見た目を一番特徴づけるものでしょう。

特に、アプリケーションを切り替えたときも、 「メニューバーだけが切り替わる」 つまり切り替えられたアプリケーションのウインドウがまったく表示されない場合があるということは、 ウインドウの中にメニューがあると信じているWindowsユーザには新たなパラダイムを呈示されたことになり、 かなりの混乱をきたすと思われます。

Windowsユーザは、あまり考慮していませんが、設計当初から、メニューバーとその中にあるメニュー、 そしてメニューから引き出されるメニュー項目(Menu Items)は、 Macintoshでは一貫して「対象に対しての操作(Operation)」という意味合いが持たされています。 そのため、もし操作の対象が選択されていない場合は、いくつかのメニューやメニュー項目は、 灰色で表示されるものの選択できない状態(Inactive)になります。 また、選択できるメニューおよびメニュー項目は、 その状況で、その操作を実行しても構わないことを意味しています。 いつでも選択できるものは、モーダレス(状態に拘らず)に実行できる操作を意味しています。

いくつかの代表的なMacintoshのメニューについて御紹介します。 たとえば、テキストエディト(TextEdit)などのアプリケーションをドックから起ち上げて見て下さい。

■Appleメニュー

メニューバーの一番左にある青い色をしたアップルマークから、メニューを開くことができます。 ここでどのアプリケーションが前面にあるかに拘らず、Macintosh全体に対しての操作を行なうことができます。 主要な操作は次のようなものがあります。

■アプリケーション・メニュー

現在操作の対象となっているアプリケーションの名前が出ているメニューです。 たとえば、デスクトップだけが見えている状態では、「Finder」になっていますし、 テキストエディトを起動した状態では、「TextEdit」あるいは日本語版では「テキストエディット」と 表示されています。 Windowsユーザは、これがメニューであることを気付かない人もいます。 もっとも、Windows VistaやOffice 2007のメニューは、誰も気付かないところ(Windowsの マークが付いている丸の中)にあって大変ですよ! まあ苦労してください。 さすが、混沌をユーザ・インタフェースの基本方針とするMicrosoftならではです。 さて、Windowsではいろいろなメニューに分散されている機能が、このメニューにまとまって集約されています。 このメニューの項目は、だいたいのアプリケーションで共通のものになっています。

■ファイル(File)・メニュー

これは、Windowsでも共通なファイルに対する操作で、新規ファイル(ウインドウ)を作ったり、 既存のファイルを開いたり、ファイルを保存する、あるいは別名でファイルを保存したりする項目が あります。 そうそうWindowsでは、「別名で保存」は「名前を付けて保存」というよくわからない名称が ついていますよね。 別名でファイルを保存した場合は、ウインドウのタイトルを見てみると、 新しく保存された方のファイルが編集対象になっているのがわかります。 これは、Windowsでも同様ですが、どちらのファイルが編集対象であるか注意しておいてください。

■編集(Edit)・メニュー

もともと、WindowsがMacintoshのまねをしていますので、ここら辺も共通です。 Undo/Redo(操作を取り消したり・再実行する)や、コピー&ペースト関係の操作項目が用意されています。 Windowsでは、「ペースト」は「獄門はりつけ」もとい「貼り付け」と訳されています。

メニューバー上には、これ以外に、主に右の方に、いろいろな状態を示すメニューが表示されています。 国旗が表示されたり、「A」とか「あ」などと表示されているのは、スクリプトメニューと呼ばれていて、 各国の言語の入力を切り替えるためのものです。ここで、多くの国の言語を切り替えて入力させることが できます。切り替える言語を増やしたい場合は、このメニューから「"言語環境"を開く」で切り替える 言語を選択することができます。ちなみに、Windowsにもこのようなものがついています(XPぐらいから)。 それ以前は、それぞれの言語用のOSを購入しないといけないというMicrosoftが儲かる仕組みになっていました。

それ以外は、表示させるかどうかの設定によるのですが、音量やノート型の場合はバッテリー容量、 日付や時間、BluetoothやAirMacの状態、ディスプレイの大きさの変更、Mac OS X 10.4からは ファイル検索のためのSpotlightなどのメニューを所狭しと並べることができます。 これらのどうでも良いメニューは、アプリケーションのメニューが多くて右側まで占拠する場合には、 そのアプリケーションが前面にある最中は表示されなくなります。

ショートカットキー

さて、ショートカットキーについて説明しなければなりません。 ⌘あるいは、リンゴマークのついたキーは、Windowsユーザは 「Appleキー」と呼んでいますが、 Macintoshユーザはすべて「コマンド(Command)キー」と呼んでいます。 これはもともと、4つ葉のクローバーからデザインされたものだそうです。

コマンドキーは、メニュー項目をマウスで選ぶかわりに、このキーと共にアルファベットや数字のキーを 押せば、同じことができるということで、用意されています。このような操作の替わりをキーボードだけ で行なうものを「ショートカット(Short Cut)キー」と呼んでいます。Windowsでは、Controlキーや Altキーでした(この頃のWindowsユーザはAltキーを使ったショートカットですべてのメニュー項目を 選べることを知らない人が多い)。 ショートカットキーは、メニューでも表示されていますので、確かめてください。 Commandキーは、修飾キーと呼ばれていて、Shiftキーと同様に他のキーを押す前に予め押しておきます。 このキーだけを押しても、何の効果も起こりませんので大丈夫です。

Macintoshでは標準的に次のようなコマンドキーがどのアプリケーションでも使えようにすると 推奨されています。Windowsでも当初はControlを使ったショートカットキーでも、同じように なっていましたが、守らないベンダーも一杯出てきています。 だいいち、Microsoft自身が崩していますから。 Macintoshでは、 特に強固な思想に凝り固まったアプリケーションでない限り(別のパラダイムを持つSqueakなど)、 だいたい以下のようなショートカットがどのアプリケーションでも使えます。

なお、メニュー項目で表示されるショートカットキーの中で、Commandキー以外にもいくつかの 記号があります。


キーボード・マウス・スイッチ類

■修飾(Modifier)キー

一緒に押すのではなくて、予め押しておいて、キーの役割を代えるものを修飾キーと呼んでいます。 Shiftキーが代表的なものです。 Windowsユーザにとって目新しいのは、Commandキーでしょうか。Optionキーは、Windowsユーザ にとっては、「Altキー」(Alternate)と思えば、対応がつきます。実際に、最近のMacintoshには、 ご丁寧に「option」と書かれた上に「alt」とキートップに書かれているのでわかるでしょう。

■特殊キー

基本的には、Functionキーと兼ねていますが、画面の明るさを調整するもの、 音量(ミュート、小さく、大きく)を調整するもの、NumLockは、キーボードの一部を 10(テンキー)にするもの(ノート型のもの)、 ミラーリング(プロジェクタなどを使った場合)を制御するもの、暗いところでキーについた 照明の明るさを調整するもの(PowerBookやMacBook Proなど)、 および内蔵のリムーバブルディスク(CD/DVD)をエジェクトするもの(上向き三角▲に下線が入ったもの) などがあります。

■Functionキー

特殊キーとFunctionキーが兼ねている場合は、「fn」キーを押して動作させます。 だいたい、Mac OS X 10.4では、次のキーが使えます。10.5では、これに更にF8やF7あたりが、 使われ、変更がなされています。

それ以外に、アプリケーション・メニューから、そのアプリケーションに関してのウィンドウだけを 隠したり、他のアプリケーションのウィンドウを隠したり、Dockに一時的にしまったりすることもできます。

■マウス・タッチバッドの使い方

標準のMighty Mouseは、左クリックと右クリックに分けることができます。 また、真ん中のボールを使って、上下左右にスクロールさせることができます。 この設定は「システム環境設定」の「キーボードとマウス」で変えることができます。 なお、実習室の環境では、マウスは下のマウスパッドがないと、ほとんど動きを認識してくれません。 マウスパッドを使って下さい。

また最近のノート型のMacintoshではタッチバッドで、iPhoneやiPod Touchのようなマルチタッチの機能を 一部持っているものがあります。これも「システム環境設定」の「キーボードとマウス」で 設定することができます。 特にスクロールを、2本指で行なえるのは便利かもしれません。

■電源スイッチ

長押しすると強制リセットになります。 電源を落としたり、きちんとした再起動をするには、基本的にはAppleメニューの方で行ないます。 この強制リセットは、あくまでも(実習室ではファイルサーバやアプリケーションサーバの応答が 遅いために良く起こるのですが、通常のMacintoshでは、ソフトウェアをアップデートしたときにしか 使いません。

■標準以外のシステムで共通に用いるショートカット

アプリケーションの起動や切り替えに関するショートカットは、アプリケーションの欄で 説明することにし、ここでは、それ以外の良く使う共通のショートカットを紹介しておきます。

☆画面のスナップショットをとるもの

Windowsの方が面倒ですね。Windowsでは、「PrtScr」という特殊キーを押して、 「ペイント」などを起動して、貼り付け(Control+V)した後、PNGやJPEGなどの画像形式で保存します。

Macintoshでは、以下のショートカットキーが使えます。

☆ズームイン機能に関するもの

プレゼンテーションするときなどに、 小さなフォントで作ってしまい細部を拡大して見せなければならないときがあります。 そのときに、ユニバーサル・アクセスのズームイン機能で拡大することができます。 いちいち、プロジェクタのリモコンで拡大しなくても良いので楽です。

ズームインの設定は、基本的には「システム環境設定」で行ないますが、ショートカットキーでも 行ないます。

ズームインしている最中にマウスを動かすと、その部分に焦点が動きます。

■起動時のショートカット

起動時に一定のキーを押したままにしておくと、起動のさせ方を制御できるものです。 この内容は、それぞれのバージョンやMacintoshの種類で異なる可能性もありますので、 Finderの「ヘルプ」メニューの「Macヘルプ Command(⌘)+Q」で検索してみてください。 「起動時のショートカット」という項目で必ずヘルプに入っています。 一応、Mac OS X 10.4の最低限のものを載せておきます。 Windowsで起動時に一定のキーを押しておくと、MS-DOSのBIOSを起動させるのと同様ですが、 あのような無粋な文字情報ではなくて、グラフィック表示されます。


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