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オノマトペとコンテクストアウェアネス

かつて作ったNarrative Handというメディアアート作品は”つぶす”という動作の速度によって流れる映像がさまざまに変わるというものだ。おなじつぶすにしても「そっと」と「ぎゅっと」、それぞれにやどる感情はまったく別のもののはず。そして、形容詞と形容動詞を使ってインタフェースを考えたい、といったことをデザイン言語2.0という本の中で書いた。

動きを表すには動詞が用いられるが、同じ動きを表現するにも、英語は動詞の種類が多いらしい。日本語は動詞の種類が少ない代わりに擬音語が多いそうだ。福田収一 デザイン工学 p. 78から引用した例を。
叩く:clap, strike, slap, hit, beat, pat, knock
焼く:roast, grill, toast, broil, bake

センシングした状況をコンピュータ内の状態やコマンドに変換するにあたって、オノマトペをひさしぶりに色々と探ってみようと思ったのだが、その時に穂村弘さんの絵本も購入。先のエントリーにある「万葉人の技術」を買ったのは、オノマトペ→穂村さん→万葉集という流れから。

めくってびっくり短歌絵本〈2〉サキサキ オノマトペの短歌 (めくってびっくり短歌絵本 (2)) で最初に紹介されていた短歌は北原白秋。

 君かへす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ

なんとも美しい情景とその表現。


追記。

英語と日本語の擬音語・擬態語の比較について、山口仲美 犬は「びよ」と鳴いていた 光文社新書 p.13より。

乾亮一さんの調査(『市川三喜博士還暦祝賀論文集』研究社)英語では擬音語・擬態語が三五〇種類しかないのに、日本語ではなんと一二〇〇種類に及ぶ。三倍以上ですね。小島義郎さんは、『広辞苑』の集録語彙をもとに同じような(『英語辞書学入門』三省堂)をしていますが、彼によると、日本語の擬音語・擬態語の分量は英語の五倍にもなります。擬音語・擬態語は、まさに日本語の特色なのです。