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ワークショップと個と組織と

アイデアキャンプでは複数の人間でアイデアを出していくんです、という説明をすると、個人の才能は要らないということですか?とか、自分はデザイナーとしての資質もあるからワークショップなんて興味ないな、いったことを言われる場合がある。

個か組織か。

サッカーのお題として常に語られる話題である。そんな話題がちょうど本屋に並んでいるNumberで語られている。

 西部謙司 「個」で勝つか、「組織」で勝つか。, Number, No.723, pp. 63-65, 文藝春秋社 (2009/02).
では、個(たとえばペレやマラドーナ)と組織(ミランやバルセロナ)の歴史がつづられていて、「個を生かす組織と組織を生かす個。現在は協調の時代になっている。」と結ばれている。

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マンUのベルバトフに関する記事もおもしろい。

C. ロナウド、ルーニー、テベスという爆発的なFWに肩をならべるFWでありながらも、キープ力に優れ攻撃リズムをコントロールしながらタメをつくれる選手である。ベルバトフの加入によって、周囲の個の輝きはいっそう増し組織としてもより安定するようになったと思う。

ワークショップでアイデアを複数の人で出すにしても、もちろん個の力は必要だ。個人技で突破しなければいけない局面では果敢に仕掛けなければならない。中盤でパスを回していても、ゴールを決められないからだ。しかし後ろからボールを追い越す仲間やディフェンスを引きつけてくれる仲間がいれば、個と組織が同時に光り輝くことができる。

なので最初の質問への答えは、個でもあり組織でもある、ということになるだろう。

そんな記事を幾つか読んでいる際に、ふと関連づいたのが
 豊川斎赫,丹下健三研究室の設計論:『サイエンスアプローチ』とは何か,建築ノート, No. 6, pp. 104 - 105, 誠文堂新光社(2009/02).
である。

多様な職種のきらめく才能を生かしながら、建築を日本の国土や都市を構成する重要な要素とみなすスタイルを定着させたリサーチと設計の方法論が語られている。

丹下健三先生が創設に深くコミットした社会学、経済学、地理学、土木工学、建築学、都市計画の専門家が集う日本地域開発センターでは、社会構造をリサーチによってダイアグラム化するにあたって、オットー・ノイラートが描いていたような情報が視覚化された日本地図を多くつくっていた。これは、さまざまな職種の人間がスムーズに議論するための結節点としての役割を持たせるためだったそうだ。

しかも、丹下先生は自らの巨匠スケッチをスタッフに押しつけるようなことはしておらず、複数のスタッフのアイデアを競わせながらブラッシュアップしていたという。

丹下先生はC. ロナウドやベルバトフでもなく、ファーガソン監督だったのかもしれない。

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