否定側-negative-



next up previous contents
Next: 流れの掴み方-How to take Up: ディベートの仕組み-The Mechanics of Previous: 一見明白な議論-The Prima-facie case-

否定側-negative-

否定側は、肯定側の議論を攻撃し、崩すことによって肯定側に応ずる。これを、

と呼ぶ。ここで忘れてならないのは、試合においては、肯定側がディベートするための土俵を選ぶということである。その結果、肯定側は多くの立論材料を前もって準備できるから、試合を行うたびに同じ議論を主張し、通常そうすることによって、自分達の立論を守る経験を多く積んでゆくのである。一方、否定側は、多くの異なった立論に対して反駁する立場に置かれることに気付くであろう。4回ディベートの試合をすれば、その4回の試合で異なった一つ一つの立論に反駁しなければならない可能性もあるのだ。例えば、エネルギー問題がテーマの時は、第1試合目は採鉱について、第2試合は石油輸入について、第3試合は原子力、第4試合は太陽エネルギーのテーマのディベートで反駁しなければならないこともあろう。そのそれぞれの論題には、さまざまな肯定側立論に反駁するための多くの一般的な論点があるのが普通であり、否定側はそれらを使えるように準備しておく。しかし、否定側にはまた、それぞれの立論における特定の議論の予測を試みなければならないし、特定の反駁の準備が不可欠である。ディベートの試合では、否定側は、肯定側が示した立論に対して適切な否定側立論を、素早く考え、速攻で作り、実行できるようにならなければならない。

否定側は、一般的に、次の3つの領域で肯定側の立論に反論・反駁する。

まず第一に、肯定側の主張する

は存在しないと主張すること。肯定側が主張する”害”とは、現状のシステムにその原因を持つ望ましくないインパクトのことであるが、この”害”は、「ニーズが受け入れらていない」、「被害を被っている」、または、「活気の喪失が生まれている」ところに存在している。否定側は、肯定側の”害”解消法に喰ってかかるか、あるいは、肯定側の示した”害”は単なる仮定であるということを指摘することによって、その”害”を否定することが出来る。そうすることにより、肯定側が示すのは”害”と考えるべきではないと主張するのだ。

第二に、論題を受け入れることでは、肯定側の示す”害”を解決できない(満たさない)、と主張すること。言い替えれば、現状のシステムでもその問題を解決できると否定側は主張するのである。具体的には、現状においてその問題を解決しようとする実施計画が最近採用された、あるいは、最近の状況の変化は肯定側の示す”害”とは無関係で、将来、その問題は解決されるであろうと、主張することだ。要点をズバリ言うと、否定側が肯定側の

に喰いつくことである。

最後の一つは、肯定側のプランへの攻撃である。これは、そのプランには抜け道がある(落ち度がある)と指摘することによってなされるが、そのプランに影響を与える可能性がある外性要因に無配慮である、あるいは、そのプラン自体があやまりである、と指摘することによっても攻撃できる。また、否定側は、そのプランは肯定側が示したニードを満たしていないことを示すだろうし、そのプランを採用すれば結果的に悪影響、つまり、デメリットがメリットを上回ることになる、と主張するだろう。

否定側がディベートに勝つには、上に挙げたうちで一つでも主張できればよい。(「害」-harm-、「内因性」-inherency-、「プラン充当性」-plan meet need-、「デメリット」-disadvantages-のどれかを攻撃し、崩せば良い。)否定側のアプローチと戦略は、第8章において、より詳細に議論される。

-Questions for discussion-

  1. 否定側が肯定側立論に反駁する、3つの一般的な領域とは何か?
  2. 否定側は、肯定側が示す”害”が存在しないことをどのように主張するのか?
  3. 一般的に言って、肯定側の内因性に喰いつくとはどういう意味か?
  4. 肯定側のプランに喰いつく為の否定側の議論の型はどんなものか?それぞれ定義しなさい。


Mineichiro Yamakoshi
Sat Dec 16 12:20:50 JST 1995