なぜ、ディベートの技術を向上させるのか?-Why develop debate skills?-



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なぜ、ディベートの技術を向上させるのか?-Why develop debate skills?-

ディベートは、学術活動以上のものがあり、それぞれの参加者にとって重要な技術と価値を向上させるものなのだ。あなたが法律家、政治家、ディベートによって生計を立てるスピーチの達人などになる必要はない。広く認められているように、ディベートの技術と価値が全て、ディベート独自のものではない。しかしディベートは、技術を磨き、価値を習得するためには、非常に重要な方法なのだ。人によっては、ディベートは、その技術や価値に触れる唯一の機会であるかもしれない。


-Debate offers preparation for leadership-

良きリーダーは、目標を言明し、プランを作成し、その目標を達成するために実際に行動することができる。このためには、参加を促すよう他人を納得させ、権威ある地位の人には、目標は達成する価値のあるものであると立証する必要があるだろう。今の学校には、この能力を教える授業も活動もほとんど存在しない。現代社会が大いに必要としているのは、問題を分析し、変革に反対する人たちの合意を得ることが出来、自分以外の人たちを、実際にそのプランの実行に必要なステップを歩めるよう説得できる人、つまり、物事をはっきりとさせることのできる人たち(articulate men and women)なのだ。これらの資質を身につけた学生は、高校・大学卒業後、ビジネスの世界や専門的分野、市民の事業においてリーダーシップを発揮する地位にまで昇ることが多い。

リーダーシップを発揮する地位に昇った多くの人々が在学中ディベーターであったし、その経験を今現在の地位に達するプロセスにおいて重要な要素であったことを彼らは認めている。概算して、約160人の上院・下院議員、州知事、連邦裁判所裁判官、閣僚、そのほかの指導者達が明かにしたところによると、その中の100人が高校や大学でディベートを経験したそうである。その100人全員が、ディベートの経験は彼らの仕事に役立っていると見ているし、90人は「大いに役立った(greatly helpful)」、「非常に価値がある(invaluable)」と格付けしている。160人の中で、ディベートを経験しなかった60人のうち26人が、高校・大学でディベートを経験しなかったことを後悔している。

-Questions for discussion-

  1. ディベートにおいて、リーダーシップ能力を向上させるために何が助けとなるのか?
  2. あなたの将来に備えた今の計画を考えてみて、ディベートはどのようにリーダーシップ能力を向上させるのか説明しなさい。


-Debate provides for investigation and intensive analysis of contemporary problem-

一般の人たちは、現在深刻な問題の上辺の知識しか持っていない。ディベートに参加することによって、そのような問題を調査・分析する機会が得られるのは、ディベート解決しようとしているテーマがそのような問題を扱うことが多いからである。これから述べられるように、ディベーターは現在の問題に対して平均以上の知識を得ることが出来、それと同時に、将来遭遇するであろう問題を批判的に分析する技術を得ることが出来るのである。


-Debate debelops the ability to make prompt analytical response-

現在の世の中は、非常に速いペースで動いている。問題や試みに対して適切に反応する時間も機会もないことが多い。すばやく意志疎通しなければならない今日の世の中において、法律家、企業の重役、その他個々の市民は、即座に分析的な反応することが求められる地位にあるといえるだろう。ディベートは、一人一人に、次のような行動を教授する。それは、1時間内で議論をし、それに応え、発言は対戦相手がスピーチをしている間か、スピーチ間に与えられた短い時間に準備しなければならない、というような行動である。

-Questions for discussion-

  1. どのようにディベートは、分析的精神の向上を手助けすることが出来るのか?
  2. なぜ分析能力の向上は価値があるだろうか?


-Debate develops critical listening-

人は、周りから自分達に向けて直接言われたことの多くに注意を払わない傾向がある。この理由として、ビジネスマン達が聴く技術を学ぶ講義へと目を向けたのが、多くのビジネスのためであったことが挙げられよう。ディベートで対戦相手がスピーチしている間にボーッとしていたら、それに対する返答は、効果の無い無力なものとなりがちである。このように、ディベーターは相手の話を集中して聴けるようになるし、相手の主張を正確にフロー・シート(メモをとるのに使われるもの:第2章を見よ)に書けるようになる。このようにしてディベーターは、時には、対戦相手が使った言葉などを使ったりもして、的を得た反応をすることが出来るし、また、相手の主張を自分の利益に結びつくように転換させることもできる。批判的傾聴能力は重要な技術であると広く一般に認められている。

-Activity-

  1. 次のPTAや学校の会議、あるいは市議会に目を向けなさい。そうしたら、話し手が相手の言ったことを聞いていない場面を識別しなさい。それが、その話し合いのプロセスにおいてどんな違いを生んだか?その人がより批判的に聞けていたとしたら、スピーチを聞いた側によって作られた主張は、後に、どのように変わったであろうか?
  2. 同じ会議で、その話し合いのプロセスにおいて集中して聞かなかったが為に、駄目になってしまった主張や言説を明確に述べなさい。


-Debate develops courage-

学生達が精神的勇気を向上させるのを、ディベートは手助けする。それは、学生がリサーチをし、立場を分かりやすく示し、そして、その立場を強力な反対意見から守り抜くことをディベートは求めるからである。ディベートの技術に富んだ相手は、あなたが欠点がないと考える主張に、たやすく欠点を見つけるであろう。そうなったら、あなたはすぐにパニックに陥り、あとずさりし、その論点を避けるであろう。しかし、ディベーターとしては、ただ諦めていてはならない。ディベーターとしての立場が、自分の立場を守ることを要求してくるのだ。ディベーターならば、自分自身を正し、その論点に集中し、自分達の考えをまとめ、効果的に反応することが出来るようになる。時間をかけて練習すると、大抵のディベーターは自分の頭で考え、自分の立場を守ることが出来ると確信するようになる。また、対戦相手の多くが、決して勝てない相手ではなく、ディベートするに足らぬ(undebatable)相手であるとわかる。こうしたプロセスが学生に自信をつけさせ、緊張してもちゃんと頭を働かせることが出来る能力を身につけさせるのである。


-Debate encourages effective speech and delivery-

ディベートのスピーチの作成とその伝達・表現は、どれだけ効果的に主張できるかを決定する要素の一つであるから、ディベーターは、最高のパブリック・スピーキングの原則に則って、手持ちの資料を選び、アレンジし、発表しようという気持ちになる。実際のディベートでは、原稿なしで発言することに箔がつくから、ディベーターには自分の頭で考えるように要求される。典型的にいって、ディベーターは多くの聴衆(1人または数人のジャッジ、クラスメイト、集会に集まった人々、さらには、テレビやラジオの前の人々)の前で発言するであろう。これらの状況の一つ一つが新しい挑戦を学生に与える。ジャッジ、オーディエンスなど話す状況の違いに応じて即座に適応することによって、思考とスピーチにおける柔軟性と器用さが向上するのだ。


-Debate teaches organization-

ディベーターは、あとで理解しやすく忘れないようにするために、ある枠組みにそれぞれの議論を当てはめることが出来るようになる。ディベートでは、こちらが主張しない事柄を、ジャッジと対戦相手が当然の事柄だとみなすようなことはない。もし、系統的にまとめられておらず、主張が理解し難いものであるならば、ジャッジは困惑するであろうし、対戦相手はここぞとばかりにそれを不当に利用してくるだろう。スピーチがまとまりの無い、混乱したものであるときは、誰もその主張を正しい主張だとは思わないであろう。ディベートにおいては、明確なこと、納得のいくものであることを必要とされるが故に、ディベーターは系統的構成能力と表現能力における高い技術を強く要求されるのだ。この技術はまた、レポートの作成、試験勉強、学校の方針の変化についての議論などにおいて、個人的にも社会的にも、学生が向上してゆくことを手助けすることが出来るのだ。

-Questions for discussion-

  1. なぜ、聴衆を説得するときにスピーチの表現能力が重要なのか?
  2. 余りにもまとまりの無いスピーチは、聴衆にどのような影響を与えるか?

-Activities-

  1. 学生組織、学校の委員会、市議会の集まりに目を向けなさい。それから、下手な文章・発話であるスピーチを識別し、そのスピーチのどこが悪いのか、そして、どのような影響を聴衆に与えているか説明しなさい。
  2. 良くまとまったスピーチとそうでないスピーチを識別しなさい。その構成の長所と短所の概略を述べなさい。より効果的で説得力のあるアピールの為には、それぞれ、なにをすべきか?


-Debate teaches critical thinking-

ディベーターが知る必要があるのは、どうして特異なアプローチ、構成のメソッド、プレゼンテーションのスタイルをとるのか、である。ディベーターは、図書館、通信、ほかの情報源からの最も良いエヴィデンスを探さなければならない(後に第6章で述べられる)。ディベーターは、使用するエヴィデンスについて考え、自分達の主張に何が役立つのかを明確に理解しなくてはならない。それぞれの主張の結果について考え、その価値を評価しなければならない。ディベートにとってそのテーマに必要なものは何であろうか?リサーチによって集められた資料の内に秘められたその強さと弱さは何か?ディベートの際に、最も強いと思われるエヴィデンスに基づいた分析方法とは?対戦相手は何を主張するつもりなのか?ジャッジの人たちは、反対側の主張にどのように反応するつもりなのであろうか?これらの質問に答えてゆくうちに向上する批判的思考は、生活においても価値が高いと証明されている技術なのである。


-Debate teaches open-mindedness-

私たちが、ある主義主張を発展させようとしているとき、その話題において、開かれた心のままでいることは難しい。私たちの個人的な偏見が盲点を作り、他者の立場の背後にある理由を見ることが出来なくなることが、非常に多いのだ。その結果、他の人たちが私たちと反対の立場に立って言おうとしていることを予期できなくなるかもしれない。しかし、ディベートでは、対戦相手が主張する可能性がある事柄を考慮に入れなければならない。対戦相手の立場に立った理由とは何か?その立場を支持するエヴィデンスは何か?そのエヴィデンスの質は如何?その推論は意味をなすものか?私たちは自分達の立場を確立し支持するために、これらの質問に対する答を用いれば、大抵のどんな話題にも、それぞれの立場を支持するに足る充分な理由を見つけることが出来る。

-Questions for discussion-

  1. なぜ批判的思考は重要なのか?批判的に考えることが出来る人はそうでない人以上にどんな利点を持っているか?
  2. 開かれた心を持たずに議論してゆくとどんな結果が生まれるか?
  3. ある問題に開かれた心を持つことは、あなたが立論する際にどのような助けとなるか?

-Activity-

  1. ニュースでの重要な問題を使って、賛成論・反対論を大まかに述べなさい。それから、どちらの立場が個人的に気に入ったかを明確にしなさい。そこに、気に入ったという気分以上の理由がありますか?もしそうであるなら、賛成論と反対論を同等に扱いなさい。
  2. Activity 1. で選んだ問題に関する記事や新聞の切り抜きを5つ集めなさい。それぞれの記事が”開かれた心”を持って書かれているか見極めなさい。その記事の中で見つけた偏見を識別しなさい。これらの記事は、その問題に対して賛成・反対のリサーチ資料、あるいは、エヴィデンスは充分か?また、その理由を述べなさい?


-Debate enhances cooperation and teamwork-

まず第一に、ディベートはチームワークを必要とする。それぞれのチームの2人のメンバーはともに行動しなければならない。肯定側は、立論を構成する議論をリサーチし、理解しなければならない。ともに行動しないと、否定側は、自分達自身が矛盾する危険を冒す。否定側がまず始めにしなければならないのは、肯定側が述べたような問題は存在せず、重要でないことを主張することである。次に否定側は、肯定側が述べた問題を改革すれば、”害”があると主張する。このように双方の主張は互いに矛盾しているが、双方が同時に真であることは有り得ないのだ。肯定・否定両方の主張を証明するエヴィデンスがあるかもしれないが、否定側としては、同じディベートで両方の議論を使いたくないであろう。否定側の2人のディベーターは、どんな主張が通るか決めるために、お互いに意志疎通をしなければならない。

協力は肯定側・否定側にかかわらず、通用する。多くの場合、1つのチームが調べるよりもより多くの有用なリサーチ資料が存在する。ディベートでは、皆、否定側に関するリサーチもともに行う。クラスルームでもこれは同じで、リサーチの宿題は分割し、割り振って行うことが出来る。他人とうまく行動することが出来る能力は生活する上で価値ある技術だ。私たちが他人と協力しともに作業するとき、多くの問題に妥協点を見いださなければならない場合が多いものだ。何人かで一緒に作業することによって、一人で見つけるよりも多くの利点を持つ解決が導かれることもあるのだ。



Mineichiro Yamakoshi
Sat Dec 16 12:20:50 JST 1995