MIT訪問
昼食を共にした日にすぐイアンはMITのリチャード・サミュエルズ教授にメールを出してくれた。サミュエルズ教授は『富国強兵の遺産』などで知られる日本研究者である。彼もすぐに返信をくれ、歓迎してくれそうな返事であった。私もすぐに返信を出し、夏休みに入ったらすぐにボストンに行くから会って欲しいと連絡した。ちょうど、ワシントンDCに調査に行く予定があったのだ。
7月、ワシントンDCではFCC(連邦通信委員会)などで話をする一方、ジョージ・ワシントン大学でお世話になったランス・ホフマン教授を訪ねた。彼のベセスダの家に行くと、奥さんが出迎えてくれた。最近立て直したという家はピカピカでゴージャスだ。中国の研究者の女性がホームステイしていて、中国のメディア政策などについても少し話すが、ワインのせいでよく覚えていない。
ホフマン教授とベセスダの街に行き、地中海料理をごちそうしていただく。ベセスダは賑やかだけど品のある良い街だ。ジョージ・ワシントン大学に客員としておいてもらえる可能性があるか聞いてみるが、ホフマン教授はすでに引退しており、特定のプロジェクトのためだけに働いているので、他の先生を紹介してくれるとのこと。しかし、それでは一から関係を作り出さなくてはならない。ワシントン自体はできれば避けたいと思っていたので、考えてから再度お願いすると伝えておく。
ワシントンでは他にも旧知のトム・ブレハさんに会った。奥さんのナターシャ、それに奥さんの姪と一緒に食事に行く。ベルギー料理の賑やかな店でマッセルを食べる。おいしかった。
ワシントンから日帰りでボストンに向かう。ボストンにはそれまで二回行ったことがあったが、いずれも空港からタクシーに乗った。今回は荷物を少なくし、空港からバスとタクシーでMITに向かった。サミュエルズ教授が丁寧に道順を書いておいてくれたのでスムーズに到着した。
サミュエルズ教授はMITの国際関係研究所の所長をしている。彼のオフィスは地下鉄のケンドール駅の真上にあり、通りを挟んで向かい側にはマリオットホテルと大学生協の書店がある。理想的な位置だ。
二階のオフィスで初めて会うサミュエルズ教授はかなりの巨漢であった。最初に会ったときはお互い何かぎこちない。サミュエルズ教授は椅子を勧めてくれたが、日本的な位置関係とは違う席順だったので、少し私はとまどってしまった。勧められるがままに坐り、周りを見渡すと日英の本がずらりと並んでいる。かなり日本語が読めるのだろう。ふ~んと感心しながら私が本を見渡すと、「何?」とサミュエルズ教授はいぶかしがる。やや気まずい雰囲気だ。
私は時間をとってもらった礼を述べると共に、一月に出版した『ネットワーク・パワー』を謹呈した。教授は「この本の中で発見したことは何なのか」とずばりと切り込んでくる。私はややしどろもどろながら説明をするとどうやら分かってくれたようだ。私のバックグランドやMITで研究したいことなどを説明する。特にハイテクとインテリジェンス活動についてやりたいと言ったことは興味を持って聞いてくれたようだった。米国でも実はインテリジェンスの研究を学術的にやっている人は少ないから是非やると良いと励ましてもらった。
一通り話すと研究所の中を一回り案内してもらう。二階と三階がオフィスになっているようだ。客員の身分では個室はもらえないようだが、学期あたり2000ドルで共有スペースを自由に使えるようになるらしい。
外で雰囲気の良いレストランで昼食をとろうということになったが非常に混んでいて列ができている。少し離れたファカルティ・クラブに連れて行ってもらった。ここはカフェテリア形式で、それほど混んでいない。サンドイッチや野菜などを盛り、スープとデザートをとって席に座る。食事をしながら、薬師寺先生や猪口孝先生などの近況について話す。猪口先生と私は懇意の仲というわけではないが、有名人なので一方的に知っている。さらに、参院選挙間近ということもあって、安倍政権の行方や、小泉前首相の動向などについても意見交換をする。小泉首相の家系に興味を持たれたようだったので、後で調べたことをメールで知らせると約束する。
食事の後、MITのキャンパスをざっと案内してもらう。有名なドームの前の芝生に立ったときには感慨深かった。脇の建物の上には科学者たちの名前が刻まれている。ここは科学のメッカなのだと分かる。玄関ホールには実践に重きを置くMITのモットーが掲げられている。実践知を求めるSFCとは発想が近い。これなら行けそうだという実感が出てくる。歩きながら、ビザの取得などについて話をする。担当の人と連絡を取り合い、なるべく早く手続きをすることだとのことだった。3月に来るなら、1月にはアパート探しも始めたほうがよいとのこと。
サミュエルズ教授と分かれた後、一人でMITの中を歩き回る。お目当てはハッカー発祥の地である鉄道クラブだ。少し外れたところにある鉄道クラブはすぐに見つかったが、どうやら誰もいないようだった。外から写真を撮る。隣にはMITのミュージアムがあったのでついでにのぞいていく。ホログラムなどが興味深い。
ボストンは研究以外ではあまり楽しいところではない。松坂や岡島のいるレッドソックスぐらいか。しかし、ここで研究するのは悪くない。帰国後、薬師寺先生にメールを出してみる。バークレーとMITと迷っているという内容だ。バークレーのザイスマン教授、MITのサミュエルズ教授、どちらも薬師寺先生の旧友だ。薬師寺先生は、どちらでも良いのではないかとの返事だった。ザイスマン教授には会ったことがない。会った感触で歓迎してくれそうなサミュエルズ教授のMITに行くことにした。
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