カナリア諸島旅行記

(スペインはまだカナリア諸島しか整備していません。)



ラゴメラ島編

 2004年11月末から12月はじめにかけて、スペイン領のカナリア諸島に行って来ました。カナリア諸島は、スペイン領ですが、アフリカ大陸の北西の大西洋上にある島々で、地理的にはヨーロッパと言うよりもアフリカに属します。位置や概略などは、以下のページを参照ください。

http://homepage1.nifty.com/ptolemy/nations/africa/canary.htm

 今回の訪問は、カナリア諸島の中でも良好なローレル林が残っているラゴメラ島の国立公園を訪れることが主目的でした。さらに、私としては、火山諸島であるカナリア諸島にどのように人々が住んでいるのか、その景観に強い興味がありました。5日間の滞在で、ラゴメラ島とテネリフェ島を訪ねました。

 ほとんどの写真はスライドで撮影しているのですが、デジタルカメラで撮ったものを使って簡単に紹介します。

1.ラゴメラ島

 ラゴメラ島は、非常に地形の変化の大きい島です。標高は、最高地点で1400mを超えるくらいなのですが、沿岸部は切り立った崖に囲まれ、島の中心部は比較的なだらかな台地状になっています。島にいくつかある深い谷と台地の上に細々と集落が位置しています。左の写真は、そのような谷にある集落とその背後にある絶壁のような斜面です。この斜面の上は比較的平坦で、実は人が住んでいます。

このような地形になった理由は、火山活動の影響です。とは言っても、ラゴメラ島は、他のカナリア諸島の島々とは違って、地上に火山の噴出物が出てこなかったそうです。地下からのマグマの活動によって、地面が押し上げられて島ができたのですが、溶岩が吹き出さなかったので、当初はドームのような形をした島だったようです。これが3000万年前のことだそうです。それから浸食されることによって、現在のような地形になりました。ドーム状の島の内部には、いくつか途中まで上がってきたマグマが固まり、堅い火山岩の層を作った部分があり、それが島の中央部で見られる奇岩だそうです。本当はもっと奇岩がたくさんあるのですが、デジタルカメラの画像がありませんでした。でも、ここも硬い岩の固まりが露出している場所です。
 この写真は、私たちが滞在したホテルの裏山を撮ったものです。海岸線はこのような絶壁に囲まれていて、かろうじて平らになっている谷にはほとんど人が住んでいるようです。島の周辺部、特に雨が少ない南部の海岸線は、年間降水量が200mm程度だそうです。山の上にも下にもほとんど大きな樹木は見られず、灌木と草本類しか存在していません。
 そんな島の周囲の景観から想像ができないのですが、島の中心部の標高1000mぐらいのところでは、このような鬱蒼とした林が広がっています。これが今回の目的のローレル林です。このラゴメラのローレル林は、ドイツで発達した植物社会学の研究者が初めて記載した照葉樹林にあたるものだそうです。カナリア諸島の他の島々にも一部ローレル林は残っているのですが、規模が大きいのはこのラゴメラ島のものだけだそうで、その貴重性からここはスペインの国立公園になっているばかりでなく、世界遺産として指定されています。

 このようなところにローレル林が成立している理由は、地形と風に大きな理由があるそうです。秋から冬にかけての強風が島の山地にぶつかり、雲が形成され、このローレル林が位置している標高1000m以上の島中心部に雨を降らせたり、霧を発生させるそうです。多いところでは、年間1000mm程度の降水量があるそうで、非常に乾燥した沿岸部とは対照的です。私たちが訪れていた間も、午前は晴れていても、午後になると霧がかかりはじめ、土砂降りになることもありました。

 しかし、この林は人間の影響を受けていない天然林というわけではなく、以前は薪炭林として利用されたり、家畜を放牧するために伐採されたりしたようです。現在でも、樹高が高いローレルは、20mを超えていますのが、そのような木はそれほど多くなく、樹高の低い林分がほとんどです。

 そして、ローレル林の向こうに望むテネリフェ島の最高峰で、スペインの最高峰でもあるテイデ山(標高3710m)。ちなみに、手前の木は、移行帯に見られるエリカです。

 さて、人間はそのラゴメラ島にどのように生きてきたのかというと、ここでも主に農業を行って生活してきたそうです。ラゴメラ島に限りませんが、カナリア諸島では非常に急傾斜地が多いにもかかわらず、たくさんの段々畑が見られます。この写真は少しわかりにくいのですが、おくに見えているのが段々畑で、現在は耕作されていません。少しでも可能なところでは、必ずと言っていいほど農業が営まれていたようです。

 ここはまだ耕作が行われている畑がある場所です。ヤシの木が多いので、水が張ってあれば、バリ島の棚田と同じような景観かもしれません。現在この段々畑で作られているものの代表は、ワイン用のブドウです。以前は、このような段々畑が島の至る所に見られて、農業生産がなされていたようですが、島の観光地化とともに、畑は放棄され、少しずつ植生が遷移しているようです。同様に、山羊をはじめとする家畜も多く飼育されていたようですが、現在ではかなり数が減っているようです。比較的平坦で、乾燥した尾根の上部では、放牧がなされていたようです。

 左の写真は、上から撮っているので、少し見にくいのですが、これはまだブドウが栽培されている畑です。島の北部では多くのブドウ畑を見かけました。
 地形が急峻なので、当然土砂崩れなどが頻発するようです。ローレル林の相観を撮ろうとあちこち移動したのですが、舗装されていない道路をたどっていった先では、土砂崩れに行く手を遮られました。このあたりは火山灰が堆積した地層のようで、崩れやすい様でした。

 →→→テネリフェ島編に続く

 最後に、おまけです。奇岩が多い見晴台から動画を撮ったものです。以下からダウンロードしてください。

QuickTime Movie 2.3MB