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2.アイデンティティと所有
「ぼくってなーに?」と自問するとき、青春の悩みが始まるらしい。どの時代でもそうだ、というのではなく、これは近代人(厳密には男性の大人に限定されているので、フェミニズムからすれば、怒りの対象なのだが)になるための通過儀礼である。これがアイデンティティである。だから青春の悩みはアイデンティティ・クライシスといわれる。
アイデンティティの確立とは、外部状況に一方向的に左右されることなく、自己の明確な境界を形成して自立的な意思決定ができることである。そのとき、自己が何を所有しているか、がその人の意思決定の力を決める。所有するものが価値をもたないかぎり、その人の自立性は損なわれ、アイデンティティの確立ができない、ということである。したがって貨幣・権力・知識(情報)などのような一般性の高い「メディア」をより多く所有するとき、強い個人(アイデンティティ)が成立する。
この個人の強さの証明は基本的には社会的関係のなかで確認されるものだから、その「メディア」をいかに所有するか、が問題になる。所有する貨幣や知識を交換して経済的関係を維持したり、所有する権力や知識を行使して政治的関係を維持するのである。これが近代社会であり、その基本は所有された財を相互に交換し伝達することである。
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