これまでに中西研で行ってきた研究は、
「コミュニケーション・インタラクションのデザイン」として、人・物・環境など相互の対話や交わりのあたらしいカタチを実現する。
有形/無形・デジタル/アナログをさまざまに綜合し、あたらしいコミュニケーションのカタチを実現することを、研究と実践の目的としています。
□ 『時空間デザイン』
実空間の中で動作するインタラクティブなシステムを構成する基本的な要素として、動き・空間・時間・外観・感触・音、などがあげられます。なかでも「時間」と「空間」を大きなテーマとして、
・システムをデザインすることで、時間と空間の使い方(スタイル)がどのように変わるか
・時間と空間(スペース)をデザインすることで、システムの使い方(スタイル)がどのように変わるか
・使い方(スタイル)をデザインすることで、システムや時間・空間がどのように変わるか
ということを意識しながらシステムのデザインを行っています。
System(システム) * Space(スペース) *Style(スタイル) の3つが統合された状態として。インタラクティブなコミュニケーションシステムを、コンピュータ x(建築+都市)とも表現できるようなものとして、デザイン・実装することを研究の目的としています。
近年、アーキテクチャという言葉は、建築・社会設計・情報環境それぞれを指す言葉として用いられるようになりました。建築:Space、社会設計:Style、情報環境:Systemというように、それぞれ対応づけることができますが、3つのアーキテクチャが交叉するコミュニケーションをデザインしたいと考えています。
□ 『マルチスケールメディア』『マルチスケール・マルチメディア』
コミュニケーションデザインの目的は、人々の活動が時間的・空間的に調整されたものになるよう工夫をすることです。
SNSや携帯電話、都市空間や建築空間、祭りや制度といったものもそうしたシステムなのであると考えれば、目的を達成する手段のかたちとしては、デジタル/アナログといった分け方だけでなく、有形/無形といった分け方もできる多様なものがふくまれます。
有形/無形・デジタル/アナログの多様なものが織り合わさったアクティビティやエクスペリエンスを特徴づける言葉として、『マルチスケールメディア』『マルチスケール・マルチメディア』という言葉を考えるようになりました。
メディアがまたがるスケールには手・身体・部屋・建物・都市・地球・スケールレスがあると考え、
マルチスケールメディア :ひとつのメディアが複数のスケールにまたがって機能しそれらが連携しているもの
マルチスケール・マルチメディア:いくつのメディアが複数のスケールにまたがって機能しそれらが連携しているもの
とした場合に、これまでに行ってきた研究をうまく説明できるようになったのではないかと考えています。
そうして言語化された領域に含まれるような、システム・スペース・スタイルが綜合されたもの具体的に設計・実装・設置していくとともに、そうしたマルチスケールメディア、マルチスケール・マルチメディアをデザイン・設計する方法論、プロセスやツールを研究しています。
□ 知能増幅・創造支援
コミュニケーションデザインを何のために研究・実践するのでしょうか。マルチスケールメディアによって人々の知能を増幅することを通して、新しい社会をつくる一翼を担いたいと考えています。
それと同時にこうしたマルチスケールメディアや時空間デザインの設計・開発をサポートするような発想支援システムや設計・開発支援システムの研究も同時におこなっており、
・発想法
・UMLと図面の統合的な表記
・CADとIDEを統合する開発環境と開発プロセス
・コミュニケーションシステムのためのソフトウェアライブラリ
などの研究も行っています。
そのため、研究の領域は情報システムの分野だけでなく、インタフェースのデザインやコミュニケーションの分析に関連する認知心理学や社会学、メディアアートや建築・都市といった領域へ拡がっています。
中西泰人 (2009.07.)