社会学の基礎
(Learning the Base of Sociology)
主題と目標
社会科学全体のなかでいうならば、政治学は政治を、経済学は経済を、社会学は社会をあつかう。しかし政治学や経済学などに比べ、社会学という学問は、およそ漠然としてつかみにくい。それは何よりも、「社会」という対象そのものが非常に多様だからである。
政治学や経済学にくらべ新しい学問であった社会学は、いわばこの世の人間の営みから、「政治」や「経済」などの言葉で特定できない現象すべてをカバーするために発生してきた学問であったといってよい。しかも、従来の政治学や経済学の分析から漏れた部分をも対象としたため、およそこの世の人間が関わる行為で、社会学の対象となっていないものはない。たとえば、文化、家族、自我、メディア、都市、農村、宗教、音楽、国家、歴史、性、フェミニズム、環境、産業、労働、政治行動その他なんでも、その後ろに「社会学」とつければ「○○社会学」ができあがる。このとりとめのなさ、裏を返していえば自由さこそが、社会学の最大の特徴である。
本研究会では、こうした社会学の各分野の基本図書の講読と講義を通じて、社会学に関する基礎的な理解と概観を把握することを目標とする。社会学は流行りすたりが激しい学問なので、政治思想などと異なり、今さら学んでも意味が薄いような「古典」も多い一方で、バブルとしか思えないような「新潮流」も少なくない。そのなかから、可能なかぎり現在において学んで意味があると思われるものを選択する。もとより社会学そのものが多様なので、たった十数回の研究会でそのすべてをつかむことは不可能といってよいが、参加者が「社会」にたいする視点を養うことができればとりあえずの成功といったところであろう。
予定
アンソニー・ギデンズ『社会学(改訂第3版)』(松尾精文ほか(訳) 而立書房 1998年)
4/27
文化、社会、個人
身体−摂食、病気、高齢化
5/11
社会的相互行為と日常生活(大藤豪一郎)
逸脱と犯罪
5/18
ジェンダーとセクシャリティ
家族、婚姻、個人生活(宮本裕子)
5/25
社会成層と階級構造(岩田直子)
エスニシティと人種
6/1
現代の組織
労働と経済生活
6/8
教育(宮原明子)
宗教
6/15
マスメディアとポピュラー文化
都市と、現代アーバニズムの発展
6/22
統治、政治権力、戦争
革命と社会運動(有光裕)
6/29
社会類型
地球規模の変動と生態系の危機
7/11
社会学の理論(小鳥英之)