IBALOG - Concept Walk 日本語版

新しい社会の捉え方を探して。井庭 崇のblogです。

『ウェブ仮想社会「セカンドライフ」』(浅枝大志)

もう1ヶ月ほど前になってしまったが、『ウェブ仮想社会「セカンドライフ」:ネットビジネスの新大陸』(浅枝大志, アスキー新書, 2007)を読んだ。なかなかよかったので紹介したい。

ウェブ仮想社会この本は、3次元ヴァーチャル世界「セカンドライフ」とは何かを知りたいという人に、僕がいつもおすすめしているものだ。この本には、セカンドライフとはどのようなもので、これまでにどのような企業が参入しているのかなどが、わかりやすくまとめられている。日産やインテル、シェラトンなど初期の参入企業がどのような工夫でその世界をつくりあげたのか、というエピソードはなかなか興味深い。セカンドライフに関する本というと、たいていはカラー画像が多用されていてゲーム攻略本のような雰囲気のものが多いが、この本は縦書きの文章のところどころに白黒の画像が入っているという、いわゆる新書版の本なので、落ち着いて読むことができる。

 内容的な面で、僕がこの本を気にいっている理由は、著者が「2Dウェブから3Dウェブへ」という流れを踏まえて、セカンドライフを捉えているところにある。ウェブは今後3D (3次元)の世界に進化するのではないか、ということを考えていた僕としては、とても面白く読めた(僕がどういうことを考えているかは、また別の機会に書くことにしよう)。

 これまでの電子掲示板やSNS、ブログのような文字・画像ベースの2Dと、セカンドライフのような3Dは、どのような違いがあるのだろうか。3Dでは、身体的な存在や振る舞いを含ませることができるというところが大きな特徴なのだ。「セカンドライフなどの3D空間の構築によって、新しいコミュニケーションがインターネットで可能になるのです。セカンドライフでは、リアルタイム性とアバター利用による個性の表現ができ、文字表現よりもニュアンスに富んだメッセージが可能であると同時に、強制されない会話が可能です。そうした機能を持ちながら、Web2.0的なユーザー発信のコンテンツを基礎に成立しているのが、セカンドライフなのです」(p.55)。

 もちろん、セカンドライフ以前にも、このような3Dヴァーチャル世界というのはいろいろあった。しかし、そのようなサービスでは、アバターの操作の自由度はあっても、環境を構築する(建物やモノをつくる)自由度がここまで高いものはなかったように思う。つまり、これまではサービスの提供側が環境を用意し、ユーザーはそれを利用するだけ、というものだったのだ。これに対し、セカンドライフでは、建物やモノはすべてユーザーによってつくられたものだ。その意味で、セカンドライフは、3Dヴァーチャル世界とWeb2.0が融合した最初の好例なのだと思う。

 著者も、セカンドライフは「2Dインターネットの限界に対して突破口を与えてくれた」(p.53)と指摘している。このような3Dへの変化は、セカンドライフという1サービスにとどまるものではない。「インターネットが、これまでのページ表現から3D表現へと置き換えられていく流れは、ますます加速していきます。この流れと並行して、いまのWeb2.0的なサービスも3D表現化されていきます。」(p.46)と予想する。さらにこの本では、新しいデジタルデバイドの問題についての新しい視点も述べられている。「『デジタルデバイド』とは、パソコンやインターネットが使える人と使えない人の間でアクセスできる情報に段違いの格差があることを示した用語です。10年後には前述のような感性の隔たりによって、インターネット利用者の間にもデジタルデバイドが発生しえます。いうまでもなく、2Dウェブが限界の人と、3Dウェブを活用できる人との情報格差です」(p.155)。

 このように、Web世界の潮流を踏まえて書かれているという点で、ほかのセカンドライフ賞賛本や、遊び方のガイドブックとは一線を画すると思う。薄くてすぐ読める本なので、セカンドライフに興味をもっている人やWebの未来について考えたい人は、読んでみるといいのでは。
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