井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

パターン・ランゲージ4.0(社会・コミュニティデザインの言語)の構想

これまで井庭研で作成してきたものは、人間行為(human action)のパターン・ランゲージだった。学び、プレゼン、コラボレーション、いきいきと美しく生きる、社会変革などなど。これらのパターン・ランゲージを、僕は「パターン・ランゲージ3.0」と呼んできた。

パターン・ランゲージ3.0の「3.0」としたのは、それ以前の「1.0」と「2.0」と僕が呼ぶものとの対比を明確するためであった。1.0は、アレグザンダーたちの建築のパターン・ランゲージ、2.0は、ソフトウェアや組織のパターン・ランゲージである。

これまで僕は、パターン・ランゲージを、1.0 + 2.0 + 3.0というかたちで捉えてきたが、これに、新たに 4.0 を加えたいと思う。「パターン・ランゲージ4.0」(Pattern Language 4.0)である。

PL4.0small.jpg
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パターン・ランゲージ4.0は、「社会・コミュニティ」のデザインについてのパターン・ランゲージである。つまり、不特定多数の人が関わる「社会」や、組織よりも境界があいまいな「コミュニティ」をどのようにつくるのかに関するパターン・ランゲージである。

もちろん、これまでのパターン・ランゲージ、例えばアレグザンダーの建築のパターンも、いきいきとした社会やコミュニティを実現するためのパターン・ランゲージであったが、デザインの対象は建築であった。パターン・ランゲージ4.0では、デザインの対象が社会やコミュニティそのものになる。

社会やコミュニティは、自生的に形成されるため、「デザイン」するといっても、すべてをつくるという意味でのデザインではない。そうでなく、社会の自生的な側面をい考慮にいれた意味での「デザイン」ということになる。

その意味で、1.0→2.0→3.0の流れのなかで「デザイン」の特徴が変わってきたように、4.0でも新しい特徴が加わってくる。他者と未来(の成長)に開かれたかたちのデザインとなる。そのため、デザインが、結果の直接的なつくり込みではなく、間接的な影響にとどまる。また、結果は、デザイン時ではなく、後に生じることになる。

パターン・ランゲージの目的・使い方も、これまでとは異なってくる。各人がそれぞれにもっている未来像をつなぎ、未来をつくっていくための言語となる。個々のパターンには、社会の仕組みについての認識・発想が「状況」「問題」「解決」の形式で書かれる。そして、それが社会・コミュニティの仕組みについてのひとつの発想の表明として用いられることになる。そのため、複数のパターンのなかで相矛盾する認識・発想が書かれることがあり得ることになる。

また、これまでのパターン・ランゲージは、ひとつのランゲージでは理想とされるひとつの方向性をもち、閉じていたが、パターン・ランゲージ4.0では、相互に重なり合う体系としてのランゲージが形成される。そのような開かれたランゲージを用いて、どのような社会・コミュニティをつくるのかの対話をし、議論をし、つくり込みをしていく。そのような目的で、パターン・ランゲージ4.0は使われることになるだろう。

パターン・ランゲージのつくられ方も、変わってくるだろう。一部の人が書くというよりも、多様な主体が関わり、書かれ、評価され、議論され、修正されていく。3.0までは、つくり手はあるグループに閉じられていたが、4.0では開かれたプロセスで、あちこちでつくられていくイメージである。オープンソース・ソフトウェア開発や Wikipediaの編集コラボレーションのようなものを思い浮かべるとよいかもしれない。


パターン・ランゲージ4.0は、井庭研の新しいプロジェクトでは、"good old future"(なつかしい未来)プロジェクトや、政策言語プロジェクトなどが、これにあたるだろう。このあたりの探究・実践を通じて、考えを深めていきたい。

本当は、僕は物事を3つにまとめるのが好きなので、3.0で止めておくのが美しいと思うのだが、今回はどうしても4.0の考え方が必要だと感じた。もうここまで来たら、おそらく後には5.0も考えることになる予感がしている。5.0では、社会を超えて、人間を含む自然や宇宙との関わり方になるのではないかと、なんとなく感じている。とはいえ、まずは、4.0についてより深く考え、実践していきたい。
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