井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

「英語で読む」の巻

英語漬け生活のまず最初のテーマとして、「英語で読む」ということについて考えたい。

今回は、前回紹介した村上憲郎さんの『村上式シンプル英語勉強法』と、竹中平蔵先生の『竹中式マトリクス勉強法』を参照することにしたい。ほぼ同時に出版されたこの二つの本では、英語の学び方について、実は同じようなことを言っているのが興味深い。

『村上式シンプル英語勉強法』で、村上さんは、英語での読解について、次のように語っている。

「『英語は読めるけど、話せない』という人がいます。彼らは本当に英語が読めているのでしょうか? 残念ながら、答えはNOです。日本人のほとんどは英語を読めていません。」(村上 2008, p.27)

実は、これとまったく同じことを、竹中先生も、『竹中式マトリクス勉強法』で指摘している。

「日本人が誤解しているのが、『日本人は英語の読み書きはできるけど、喋るのだけが苦手』という通説です。私から言わせれば、これはまったくのウソ。厳しいようですが、日本人は、一般的に書く力も読む力もないのです。いや、むしろ読む力がないからこそ、聴くことも喋ることもできないともいえる。」(竹中 2008, p.127)

「英語で読む」ことができないというのは、どういうことなのだろうか。

「日本人のほとんどが、英文和訳や英文解釈のように『英語を日本語に訳す=英語を読む』だと思っていたのではないでしょうか。でもそれは違います。英文法に忠実に文章を分解して訳していくのではなく、文頭から英語のままで読む。そして英語のまま理解する。つまり『英語を読む』とは、英語を、英語のまま、『内容を英語で読む』ということなんです。まずそれに気づくことが、英語上達への第一歩になるんです。」(村上 2008, p.31)

「目標はズバリ、『日本語と同じように英語で読めるようになる』です。」(村上 2008, p.32)

それでは、どうすれば、日本語と同じように英語で読めるようになるのだろうか。村上さんは、次のように語る。

「英語も一日にしてならずです。その域にに近づくためには、ひたすら英語を読むしかありません。では、どの程度の分量を読めばいいのでしょう。私なりに導き出した答えは、単語にして300万語です。これだけ読めば、誰もが“英語で読める”ようになります。ちなみに300万語というのは、小説にして約30冊分。ノンフィクションなら約15冊分に相当します。」(村上 2008, p.33)

とことん読みまくる、というトレーニングの重要性については、竹中先生も同じように主張している。

「読む力と書く力が圧倒的に不足しているのは、「読む量」がまだまだ圧倒的に足りないからだともいえます。」(竹中 2008, p.127)

「英語をモノにしようと思ったら、読んで、書いて、単語力をつけるのが基本。英語を上達させたかったら、英字新聞でも、ペーパーバックスでも、自分が興味を持てる読み物ならなんでもいいですから、とにかく英語の文章をできるだけたくさん読む癖をつけてください。」(竹中 2008, p.128)

そして、読むということは、単に読解力をつけるだけではない。書いたり喋ったりすることができる力を身につけるということにつながる。

『竹中式マトリクス勉強法』では、次のようなエピソードが紹介されている。とても印象的で象徴的な話だ。

「大学時代に、ある英語学校に通っていたときのことです。当時の英語の先生は、授業を始める前、まずコーラの空き缶を持ってきて、私たちにこう言いました。『この缶は、逆さに振っても何も出てきません。なぜなら、中身がからっぽだから。皆さんが英語を喋れないのもまた同じ。頭の中に、英語が何も詰まってないからだ』」(竹中 2008, p.129)

「なおも、先生はこう言いました。『英語が喋りたかったら、頭の中に英語を詰めるしかない。そのためには、とにかく暗唱することです』と。」(竹中 2008, p.129)


確かに、僕が日本語で(ある程度の)文章を書けるようになったのは、「書くために読む」ということを相当やったからだと言える。その分野の本や論文をひたすら読むことで、単語だけでなく、言い回しなども身についていく。そして、それが無意識下に入ると、力となる、という感覚だ。

なので、英語で書いたり話したりするためには、とことん読みまくる、ということが重要だということは納得がいく。本でも論文でも新聞でも何でもいいから、生活のなかにとにかく「英語で読む」ということを組み込んでいく。

僕の場合は、英語で小説を読む、というのはうまくいかなかった。結局、途中で終わってしまう。というのは、日本語でもふだんほとんど小説を読まないので、それを英語で読もうとしてもだめなのだ。

なので、今はなるべく、自分の興味・関心がある研究テーマの入門書を読むようにしている。オープン・コラボレーションや複雑系、社会システム理論の話などだ。これであれば、日本語でも興味をもって読み続けられる内容なので、英語になっても読み続けることができる。

さらに、単に前から読んでいくというだけでなく、日本語訳で読んだときに重要だと思った箇所を、英語版の本で探してみて、その言い回しを知る、ということも、重要だ。内容的に重要なところなので、そこで使われる単語や言い回しは、今後の研究発表や議論のなかで、登場する可能性が高い。そのため、それを学ぶモチベーションも高めることができる。


『竹中式マトリクス勉強法』は、英語に限った内容の本ではないが、第4章が英語の勉強法について書いてあるので、要チェックだ。

Book_Takenaka.jpg『竹中式マトリクス勉強法』(竹中平蔵, 幻冬舎, 2008)
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第4章 竹中式英語勉強法7の極意
1.完璧な英語を話すのは、そもそも無理
2.暗唱で英語を頭の中に詰め込む
3.分からない単語は必ず辞書を引け
4.「英語のうまい日本人」の英語を真似ろ
5.進んで試練を受けよ
6.一番前の席で聞いて、一番最初に話せ
7.質問しまくる子どもに学べ
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