井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

『10+1 web site』に論文を書きました

建築系のオンライン雑誌『10+1 web site』に論文を書きました。

「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン──パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」(井庭 崇)


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今回の論文は、僕らのつくった「学習パターン」(Learning Patterns)の話から、教育と建築における問題の共通性について、そして自生的秩序の形成についての話から始まります。そのうえで、自生的秩序の形成を支援するメディアとして、パターン・ランゲージを取り上げ、それがどのように秩序形成に寄与するのかを考察していきます。

社会と思考の自生的秩序については、ニクラス・ルーマンの社会システム理論にもとづいて考察します。そして、創造における自生的秩序については、現在僕が構想中の「創造システム理論」(Creative Systems Theory)にもとづいて考えます。自分が今構想している最中の理論によって考察するということで、とても大胆かつチャレンジングな試みです(笑)。

創造システム理論というのは、創造のプロセスをオートポイエーシスの概念で捉えるというものです。つまり、創造は、心理的ななにかではなく、ひとつのオートポイエティックなシステムだ、と捉えるわけです。ルーマンが、「社会」を主体から離して定義したように、僕は「創造」を主体から離して定義します。心理学や認知科学の観点からの研究が多い「創造性」(クリエイティビティ)研究のなかではかなりラディカルな理論だと言えるでしょう。分量の制限や文脈の制約で、まだ理論の一部しか示せていませんが、創造システム理論について書くのは初めてなので、この部分はひとつの目玉です。

もう一つの目玉としては、オートポイエーシスの概念について、わかりやすい図を交えて説明しているという点です。図も説明の仕方も、自分なりに今回新たにつくり出したものです。

このように、今回の論文は、全体的にオリジナリティの高い内容になっていると思います。みなさん、ぜひ読んでみてください(感想などお待ちしています)。


今回の特集テーマは「きたるべき秩序とはなにか──システム、パターン、アルゴリズム」ということで、ほかには、濱野智史さんと柄沢祐輔さんが書いています。濱野さんの論文は、彼がこれまで論じてきた内容とうまく絡んでいてなかなか面白い。柄沢さんの論文は、彼が最近アルゴリズム建築としてつくった住宅の話が紹介されています。可能性としての手法の提案ではなく、実際に建築物をつくっているところがすごい。

たまたまなのか、編集者の方の意図なのかはわかりませんが、3人とも慶應義塾大学SFCの出身です。それぞれ異なる方向性に進みながら、このような場でまた交わることができるというのは、うれしいことです。


『10+1 web site』(http://tenplusone.inax.co.jp/)
2009年9月号
特集:きたるべき秩序とはなにか──システム、パターン、アルゴリズム

  • 「自己組織化は設計可能か──スティグマジーの可能性」
    (濱野智史  株式会社日本技芸リサーチャー/情報環境研究者)

  • 「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン──パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」
    (井庭崇 慶應義塾大学総合政策学部/MIT)

  • 「アルゴリズム的思考と新しい空間の表象」
    (柄沢祐輔 建築家)
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