井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

「複雑系の数理」(2010年度秋学期担当科目)

次は、秋学期の僕の担当授業「複雑系の数理」の紹介です。

この授業では、「カオス力学系」の基本と、Wolframのいう「新しい科学」についてじっくり考えたいと思います。Mathematicaを使って、実際に現象を体験しながら。

授業は基本的に、履修者による発表、PCを用いた演習、僕の解説、という三部構成。履修者はただ先生の話を聞く立場なのではなく、担当範囲を先に勉強してそれを他の履修者に説明するという役割を担います。授業内での半学半教スタイル。

この授業では、ゲストとして池上高志先生をお迎えし、対談する予定です(詳細は未定)。お会いするのはずいぶん久しぶりで、いまからドキドキです。

そして、複雑系の考え方を取り入れてコンピュテーショナル・デザインに取り組んでいる松川昌平さんにも遠隔講演していただく予定。ハーバード大学GSDにいる松川さんとは、昨年僕がMITにいたときに、複雑系関連の話で相当盛り上がりました。楽しみです。

あとは、この授業を担当するのは今年が初めてなので、やりながらチューニングしていきたいと思います。



慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)総合政策学部・環境情報学部
「複雑系の数理」(木曜日2時限, 担当:井庭 崇)

■主題と目標/授業の手法
人類のながい歴史のなかで、「生命とは何か」、「知能とは何か」、そして「社会とは何か」という問いは、幾度となく繰り返されてきました。しかし、これら生命・知能・社会の原理は、現代の科学をもってしても、いまだに解明できていません。それは、生命・知能・社会という対象は複雑であることに加え、動的に自らを変化させていく存在であり、従来の概念や方法では太刀打ちできないためです。この問題に、新しい数理概念やシミュレーション手法などを駆使して研究するのが、複雑系科学です。
 本講義では、複雑系科学における思考・探究の基礎である「力学系」(dynamical systems)の考え方、「カオス」 (chaos)、および「セルオートマトン」(cellular automata)における現象について学びます。数理的な原理を理解するとともに、実際に各自のノート型パソコンを用いて体験的に理解します。ぜひ複雑系科学の面白さと可能性を味わってほしいと思います。

■授業計画

第1回 Introduction
授業の内容と進め方について説明します。

第2回 Constructive Approach and Simulation
理解したい対象のモデルを「つくって動かすことで理解する」という構成的アプローチと、コンピュータ・シミュレーションの特徴について解説します。

第3回 Chaotic Dynamical Systems (1)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第4回 Chaotic Dynamical Systems (2)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第5回 Chaotic Dynamical Systems (3)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第6回 Chaotic Dynamical Systems (4)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第7回 A Hidden Order in Chaos
カオスのなかの隠れた秩序についての最新の研究を紹介します。

第8回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。

第9回 Capturing & Generating Dynamics
「動き」(ダイナミクス)を捉える方法/生成する方法について考えます。(ゲスト対談:池上高志氏)

第10回 Capturing & Generating Dynamics (ゲスト対談:池上高志氏)
「動き」(ダイナミクス)を捉える方法/生成する方法について考えます。(ゲスト対談:池上高志氏)

第11回 The Generative Power of Chaos
カオスのもつパターン生成能力についての最新の研究を紹介します。

第12回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。

第13回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。(遠隔ゲスト講演:松川昌平氏)

■授業中のグループ発表
履修者は複数人でグループを組み、カオスやセルオートマトンなど複雑系の概念/理論をひとつ担当してもらいます。担当になった概念/理論について、書籍やWeb等で調べて理解し、さらに、実行可能なMathematicaモデルをつくります。そして、担当の回に、概念/理論についての解説と、実行可能なMathematicaモデルのデモンストレーションを行ってもらいます。

■授業で用いるツールについて
・授業の演習と宿題で、ノート型パソコンを使用します。各自用意してください。
・授業で用いる Wolfram Mathematica 7 は、SFC生であればサイトライセンスにより無料でインストール/使用できます(詳細はITCホームページ参照)。
・履修に際して、Mathematicaの操作方法についての事前知識は必要ありません。

■教科書
・『はやわかりMathematica 第3版』(榊原進, 共立出版, 2010)
・『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)

■参考書
・『Chaos: Making a New Science』(James Gleick, Penguin, 2008)
・『Nonlinear Dynamics And Chaos: With Applications To Physics, Biology, Chemistry, And Engineering』(Steven H. Strogatz, Wes qtview Press, 2001)
・『A New Kind of Science』(Stephen Wolfram, Wolfram Media, 2002)※オンライン版
・『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』(池上高志, 青土社, 2007)
・『生命とは何か:複雑系生命科学へ』(金子邦彦, 東京大学出版会, 第2版. 2009)
・『JA—The Japan Architect:建築と都市のアルゴリズム』(Vol.77, 2010年4月号, 新建築社, 2010)

■初回授業
2010年9月30日(木)2限。SFC。
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