井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

「つくることによる学び」とそのための場所

「生きる」とは、ただ同じことを繰り返すことではなく、自分の今とこれから、ひいては自分たちの今やこれからを「つくる」ことである。

だからこそ、「生きる」ためには、「つくる」力が不可欠なのだ。

つくる力の育成においては、これまでの教育では、基礎となる知識やスキルを学んだのちに、その「応用」として実践するという段階的な方法がとられてきた。

しかし、変化が速く大きな時代にあっては、また、個人の価値観が多様化し、生き方の変更が自由な時代においては、基礎の習得ののちに応用という段階的方法が必ずしも適しているとは言えないだろう。

そこで僕は、段階的方法とは異なる考え方に基づく方法として、最初から「つくる」実践に取り組む「なか」で、知識やスキルを身につけていく、という方法に注目してきた。そしてそれを「つくることによる学び」(learning by creating)と呼び、それこそが「創造的な学び」(creative learning)だと考えた。

このような方法は、僕のいるSFCや、市川力さんのTCSなど、いくつかの学校教育でもすでに行われているものと重なる。

そして、「つくることによる学び」は、学習の理論でいうと、経験学習(learning by doing)の、「つくる」(creating)に特化したものだと言うことができる。また、正統的周辺参加のなかの、最初から創造に直接的に関わるバージョンだと捉えることもできる。

このような「つくる」力は、日々の実践のなかでも強化されるが、そのような実践の機会が適切なタイミング / 難易度で生じるとは限らない。しかも、学びよりも成果の方が優先されることが容易に想像できる。そこで、適切な機会を生み出し、学ぶことが許容される安全な、「つくる」力の育成の場が重要となる。

これからの学校は、そのような「つくることによる学び」の場の提供というのが、中心的な役割になるだろう。これが、MOOCsなどオンラインコースがインターネットで提供される時代における学校の姿だと思う(もちろん「つくることによる学び」も一部はオンライン上で行われることになるだろう)。
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