井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

最近の井庭研の指導方針:プロジェクト × 実践 × 学会発表

井庭研では、基本的に複数人のプロジェクトで研究を進めている。個人の問題意識にもとづいてそれに近いプロジェクトに所属したり、長くいるメンバーは自分の問題意識が後に井庭研のなかでプロジェクト化されたりする。なので、いわゆる「個人研究」はやっていない。

僕は、個人の問題意識=個人研究、が適しているとは必ずしも考えないからだ。もちろん、そういう場合もある。でも、本当に力強いインパクトのある成果を出そうとするならば、他の人と一緒にプロジェクトとして取り組むことで「自分を超える」ことが重要だと考える。だから、井庭研では、各人の問題意識は大切にしながら、それを個人研究ではなく、プロジェクトというかたちでどう実現できるのかを考えていく(だから、例えば12月上旬にご飯にいきながら、各人とじっくり話すことが大切となる)。

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そして、4年生で書く卒論も、僕はがっつり手をいれたり、細かく指導したりはしない。そこで求められる力はそれまでに身につけるという方針。もっている力を発揮して、自分なりに自由に書いてもらう。卒業プロジェクトも、基本的にプロジェクトとして取り組んでいて、それを最後、自分なりに論文にまとめる。

卒論も、学期末論文も、それらは結局、書いて(闇に消えて)終わりになりやすく、各自の単位(成績)に変換されるだけになってしまう。そこに教員が多くの時間を割くのは、研究会のやるべきこと全体を考えたときによい戦略とは言えない、というのが僕の考え。

そのかわり、学生(学部生)と一緒に学会論文を書く。学生がファースト・オーサーになることが多いが、僕がファースト・オーサーになりセカンド以下に入ってもらうこともある。それは、テーマと実力・経験による。

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学会論文を書くということは、外に出すものだということで、しっかりとしたクオリティが求められるし、取り組みへの真剣度も増す。そして、完成した論文は(学校に提出して終わり)ではなく、実際に世の中に出ていく。そして、そのクオリティを出すためには、学生がもともと持っていたスキルや経験では圧倒的に足りないので、ここで僕は徹底的に指導する。そして、そこに「学び」が生じる。これが、教育と研究を重ねるということだと思う。

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SFCにも、学期末論文や卒論にしっかり赤入れをしてアドバイスをしている先生もいる。例えば、清水唯一朗さんなんかは本当によく学生のやりたいことを聞き、問いかけ、細かく相談に乗って(指導をして)いる。学生から話を聞くたびにいつも関心する。他にも、とても丁寧に指導している先生たちはいる。でも、僕は学校内での提出物でそれをするのではなく、外向きの論文でそれを行う。どこで指導するのかという違いだ。


研究会を選ぶ際には、テーマだけでなく、そういう指導方針のようなものも参考にした方がよいだろう。説明会でも説明があるだろうし、先輩たちからも聞くことができる。物事は、完成されたものだけでなく、それがつくられるプロセスも大切だから。

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