井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

新しい授業スタイル「ダイアローグ型授業」のススメ

僕がここ5年ほど、「創造社会論」という授業で試しているのは「ダイアローグ型」という新しいスタイルの授業である。

それは、ある専門がどのように他の分野と関わることができ、どのような未来が構想できるのかを、ある専門(僕の場合は創造性やシステム理論、パターン・ランゲージ)をもつ教員がホストとなり、多様な分野のゲストを招き、対談(ダイアローグ)を通して、その可能性を感じ、学ぶという新しいスタイルの授業である。「創造社会論」は、2コマ(3時間)×7週間の授業であるが、最初の週から最後の週までゲストを読んで、対談をしていく。

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ダイアローグ型の授業は、いわゆる講義や講演という「モノローグ」ではなく、学生たちが自分たちで何かに取り組む「演習」や「グループワーク」でもなく、対談・対話を聴くというスタイルの授業である。その場で生成される語り合いを見て、その現場に立ち会い、参加する。担当教員の専門や視点が多様な領域とどのように関わるのかを知ることができるだけでなく、教員の多分野への切り込み力や質問の投げかけ方、相手が語ったことへの反応や共感の仕方なども学ぶことができる。一方的に聴くだけでなく、学生も質問や意見などを言って参加することができる。僕も、対談相手に、自分の専門のことや最新の発見などを、うれしそうに話すことになる。こうやって、相手の分野に合わせて僕が説明をどう変えるのかも、学生たちは観察することになる。

僕自身は、対談本を読むことや、対談を聴くことは、とても創造性が刺激されるので、大好きだ。講演を聴くとなると、その人の考えた文脈の通りに理解していくことになるが、対談というのは、「創造的なスキマ」がある。対談している人のあいだで、コンテクストや意味のズレがよく生じる。話としてはつながっているように聞こえるのだが、実はそこにズレが生じているというときである。それがこちらの「創造・想像を挟み込む余地」となる。また、その場でのやりとりで考えて話すので、話している人も、論理の飛躍があったりする。しかも、盛り上がってくると、ふつう本では絶対描かないような大胆な発想や発言、本音なんかも出たりする。そういうズレとか飛躍がとてもクリエイティブな意味で刺激になるのだ。

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この授業では、僕は、学生のレベルに変に合わせることなく、ゲストの方と本当に話したいレベルで話して盛り上がる。内容によっては、学生によっては意味がよくわからないところも出てくるかもしれない。その自分がわからないことを、対談者同士が異様に盛り上がっている、というのを目の当たりにする(理解できなくて悔しい)ということを経験するということも大切な学びのうちだと思っている。もちろん、言葉や概念を説明なしに使っては、わかるものもわからないので、そういうものは適宜解説を入れたりする。そういう中で、理論や概念についての理解も深まる。いわゆる座学のモノローグとは違う、ダイナミックな話のなかで、そういうことを学ぶのである。

学校での授業でも、もっと、こういう「ダイアローグ型」の授業があってもいいんじゃないかと思う。

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この「ダイアローグ型授業」を行う「創造社会論」は、まもなく4月から2018年度クラスがスタートする。来てくださるゲストのみなさま、どうぞよろしくお願いいたします!

「創造社会論2018」(シラバス)
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