コラボレーションの原理(コラボレーション技法ワークショップ第2回)
今日は、僕の担当する授業「コラボレーション技法ワークショップ」の第2回目であった。今日のテーマは、コラボレーションの原理についてである。
最初の問いは、「コラボレーション」とは何だろうか?ということだ。僕なりの説明をすると、コラボレーションとは、複数の人々が、ひとりでは決して到達できないような付加価値を生み出す協同作業(協働作業)のことだ。有効なコラボレーションが行われている組織やグループでは、単なるコミュニケーションや分担ではなく、発見や創造の「勢い」がメンバーの間で共鳴し、増幅する。その結果、飛躍的なアイデアやイノベーションを生み出すことができ、メンバーの満足感も高まることになる。
コラボレーションは、「分業」とは異なる。分業というのは、タスクを分けてそれぞれががんばり、調整・集約するものである。その結果、1+1+1が3になる。そうではなく、コラボレーションでは、コミュニケーションの連鎖が起き、相乗効果があり、1+1+1が、10とか100になってしまうようなことをいう。グループワークというのは、分業的にもなり得るし、コラボ的にもなり得る。
それでは、どうしたらグループワークにおいてコラボレーションを行うことができるのだろうか。言い換えると、どうしたら複数人で新しい付加価値を創造することができるのだろうか。この点を考えるために、「創造する」ということについて、一歩踏み込んで考えてみることにしたい。
ふつう私たちは、何かを「創造する」(つくる)というとき、「思考」や「行為」による創造について考えるのが一般的だ。この考え方は、個人による創造を考える場合には十分であるが、複数人で行うコラボレーションについて考える場合には、すぐさま困難に行き当たる。もし創造性が、個人の思考や行為にのみ宿るのであれば、コラボレーションの結果というものは、個々人の思考・行為の結果を足し合わせたものに過ぎなくなる。そのような捉え方では、コラボレーションの本質である相互作用のダイナミズムが抜け落ちてしまう。もしコラボレーションが、目標を分割して各人に振り分ける「分業」とは異なるものであるならば、「思考・行為を寄せ集めた集合」ではない捉え方が必要になる。
そこで、「創造」というものを「創造的思考」、「創造的行為」、「創造的コミュニケーション」の3つに分けて考えてみることにしたい ※。そのうえで、「コラボレーションによる創造」では、創造的思考、創造的行為だけでなく、創造的コミュニケーションが不可欠である、ということを主張したい。
まず、創造的思考とは、心的システムにおける意識の連鎖によって、創造が行われることを意味している。例えば、いろいろなイメージを思い描いたり、アイデアを考えたりすることである。創造的行為とは、行為として創造が行われるということである。例えば、絵を描いたり彫刻を掘ったり、文章を書き記したりするのが、これにあたる。これら創造的思考と創造的行為は、基本的には、ひとりで行う個人レベルの話である。これに対し、創造的コミュニケーションとは、コミュニケーションを行うことで創造が行われるということである。例えば、複数の人で、アイデアや企画、デザインを議論・検討しながら練り上げていくということが、これにあたる。
以上のように「創造」を分類すると、「コラボレーション」と「分業」の違いは、創造的思考や創造的行為の存在の有無ではなく、創造的コミュニケーションの連鎖があるかないか、という違いだということがわかる。コラボレーションでは、創造的コミュニケーションが連鎖しなければならない。そのための工夫が、コラボレーション技法の本質なのだ。
※ 創造的思考/創造的行為/創造的コミュニケーションという分類については、以下の論文が初出。「コミュニケーションの連鎖による創造とパターン・ランゲージ」(井庭 崇, 社会・経済システム, Vol.28, 社会・経済システム学会, 2007年)。
最初の問いは、「コラボレーション」とは何だろうか?ということだ。僕なりの説明をすると、コラボレーションとは、複数の人々が、ひとりでは決して到達できないような付加価値を生み出す協同作業(協働作業)のことだ。有効なコラボレーションが行われている組織やグループでは、単なるコミュニケーションや分担ではなく、発見や創造の「勢い」がメンバーの間で共鳴し、増幅する。その結果、飛躍的なアイデアやイノベーションを生み出すことができ、メンバーの満足感も高まることになる。
コラボレーションは、「分業」とは異なる。分業というのは、タスクを分けてそれぞれががんばり、調整・集約するものである。その結果、1+1+1が3になる。そうではなく、コラボレーションでは、コミュニケーションの連鎖が起き、相乗効果があり、1+1+1が、10とか100になってしまうようなことをいう。グループワークというのは、分業的にもなり得るし、コラボ的にもなり得る。
それでは、どうしたらグループワークにおいてコラボレーションを行うことができるのだろうか。言い換えると、どうしたら複数人で新しい付加価値を創造することができるのだろうか。この点を考えるために、「創造する」ということについて、一歩踏み込んで考えてみることにしたい。
ふつう私たちは、何かを「創造する」(つくる)というとき、「思考」や「行為」による創造について考えるのが一般的だ。この考え方は、個人による創造を考える場合には十分であるが、複数人で行うコラボレーションについて考える場合には、すぐさま困難に行き当たる。もし創造性が、個人の思考や行為にのみ宿るのであれば、コラボレーションの結果というものは、個々人の思考・行為の結果を足し合わせたものに過ぎなくなる。そのような捉え方では、コラボレーションの本質である相互作用のダイナミズムが抜け落ちてしまう。もしコラボレーションが、目標を分割して各人に振り分ける「分業」とは異なるものであるならば、「思考・行為を寄せ集めた集合」ではない捉え方が必要になる。
そこで、「創造」というものを「創造的思考」、「創造的行為」、「創造的コミュニケーション」の3つに分けて考えてみることにしたい ※。そのうえで、「コラボレーションによる創造」では、創造的思考、創造的行為だけでなく、創造的コミュニケーションが不可欠である、ということを主張したい。
まず、創造的思考とは、心的システムにおける意識の連鎖によって、創造が行われることを意味している。例えば、いろいろなイメージを思い描いたり、アイデアを考えたりすることである。創造的行為とは、行為として創造が行われるということである。例えば、絵を描いたり彫刻を掘ったり、文章を書き記したりするのが、これにあたる。これら創造的思考と創造的行為は、基本的には、ひとりで行う個人レベルの話である。これに対し、創造的コミュニケーションとは、コミュニケーションを行うことで創造が行われるということである。例えば、複数の人で、アイデアや企画、デザインを議論・検討しながら練り上げていくということが、これにあたる。
以上のように「創造」を分類すると、「コラボレーション」と「分業」の違いは、創造的思考や創造的行為の存在の有無ではなく、創造的コミュニケーションの連鎖があるかないか、という違いだということがわかる。コラボレーションでは、創造的コミュニケーションが連鎖しなければならない。そのための工夫が、コラボレーション技法の本質なのだ。
※ 創造的思考/創造的行為/創造的コミュニケーションという分類については、以下の論文が初出。「コミュニケーションの連鎖による創造とパターン・ランゲージ」(井庭 崇, 社会・経済システム, Vol.28, 社会・経済システム学会, 2007年)。
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