井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

慶應義塾大学SFC「創造システム理論」2023シラバス

「創造システム理論」2023
慶應義塾大学SFC総合政策学部・環境情報学部(基盤科目-共通科目)
担当教員:井庭崇
開講:2023年度秋学期(前半)
曜日時限:木曜3・4限※
※ 学期後半には、同じ曜日時限に「ワークショップデザイン」(井庭)が開講されます。併せてどうぞ。
実施形態:対面

【科目概要:主題と目標/授業の手法など】

この授業では、「創造」とはどのようなメカニズムで成り立っているのかを定式化した「創造システム理論」について学んでいきます。「創造システム理論」は、「創造」は「発見」を構成素とするオートポイエーシスによって成り立つシステムであるという理論です。この理論は、システム理論や哲学に依拠してつくられていることから、その背後にある理論・哲学を学び、深く理解することが不可欠です。この授業では毎週、重要な文献(難解だと言われている学術書)をかなりの量読んでまとめを書く予習宿題と、授業後に改めて読み直してまとめを書く復習宿題に取り組みながら、難解な理論・哲学を読み解く力を鍛えていきます。そのような各自読解に取り組んだ上で、授業中にみんなで重要な箇所を確認していったり、担当教員がわかりやすく解説をしたりしていきます。

このような仕組みにするのは、難しい文献の読解に取り組む経験を積み、その力を養うためです。やわらかいものばかり食べていると顎(あご)が弱くなるとの同じように、噛み砕かれたやさしい文章ばかり読んでいると、知的な咀嚼力が弱くなります。硬くても難解でも、果敢に挑戦し、読み下す力をつける機会をこの授業では提供したいと思います。

毎週の文献読解はとても難しくて苦戦すると思いますが、それが力がつく一番の近道です。がんばってついてきてください。創造について理解が深まり、かつ、原典となる理論・哲学を学ぶことができるという「一石二鳥」に加えて、「読解力」もつくので、いうなれば「一石三鳥」です。そして、「三鳥」が得られるわけですから、通常の三倍の努力をしても、ちょうどペイします。ぜひ、一石に三倍の力を込めて取り組むようにしてください。


【授業計画】

第1・2回(10/5):創造と実践のオートポイエーシス
オートポイエーティックなシステムとはどのようなシステムかを理解し、「創造」は、発見を要素とするオートポイエティック・システムであるという「創造システム理論」について学びます。さらに、「実践」も行為を構成素とするオートポイエーシスによって成り立つということを理解します。

第3・4回(10/12):生命と神経のオートポイエーシス
生物学者ウンベルト・マトゥラーナとフランシスコ・ヴァレラによるオートポイエーシスに関する文献を読み、オートポイエーシスの概念とその概念構築の背景を理解します。また、システム理論の世代に関する河本英夫の文献を読み、オートポイエティック・システムの位置付けと特徴を理解します。

第5・6回(10/19):社会と心理のオートポイエーシス
社会学者ニクラス・ルーマンの社会システム理論に関する文献を読み、社会システムと心理システム、そして、一般システム理論での水準のオートポイエーシスの定式化について理解を深めます。

(10/26(木)は休講)

第7・8回(11/2):現象学入門
現象学についての入門的な文献を読み、現象学について概観します。

第9・10回(11/9):本質観取
エトムント・フッサールの現象学の中期の文献を読み、物事の本質をつかむ「本質観取」の方法について理解を深めます。

第11・12回(11/11):「本質観取」実践のパターン・ランゲージ
井庭研究室で作成した「本質観取」実践のパターン・ランゲージを用いて、本質観取を実際にどのように行えばよいのか、そのコツをつかみます。

第13・14回(11/16):受動的綜合と能動的綜合
エトムント・フッサールの現象学の後期の文献を読み、受動的綜合と能動的綜合について理解を深めます。 また、この授業で学んできた概念を用いて、改めて創造システム理論についてふりかえります。


第15回:最終レポート
最終レポートに取り組みます。(授業時間外)


【履修選抜課題】
受入学生数(予定):90人程度

選抜方法:課題提出による選抜

「創造システム理論」について書いてある以下の3つの文献のなかから2つ以上を読み、「創造システム」(Creative System)とはどのようなシステムだと理解したのかを、A4用紙1ページでまとめてください。自分なりにヴィジュアルに図示して掲載することも歓迎します(下記の文献からそのまま取ってくるのは、やめてください)。

なお、文献(1)と(3)はオンラインで無料で読むことができます。(2)を選ぶ場合は、書籍を自分で入手・調達してください。履修選抜課題レポートには、どの文献を読んだのかを明記してください。また、レポート冒頭に名前、学籍番号、メールアドレスも明記してください。

(1) 井庭 崇, 「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン──パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」, 10+1 website, 2009年9月
https://www.10plus1.jp/monthly/2009/09/post-2.php

(2) 『クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』(井庭 崇 編著, 鈴木 寛, 岩瀬 直樹, 今井 むつみ, 市川 力, 慶應義塾大学出版会, 2019年)の p.137-161

(3) Takashi Iba, “An Autopoietic Systems Theory for Creativity,” Procedia - Social and Behavioral Sciences, Vol.2, Issue 4, pp.305 6625, 2010
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1877042810011298/pdfft?md5=7c67a7f5856e7e23bc39c9be6dc5bad5&pid=1-s2.0-S1877042810011298-main.pdf


【提出課題・試験・成績評価の方法など】

成績は、毎週の予習宿題、出席、授業での発言、復習宿題、最終レポートから総合的に評価します。


【履修上の注意】

  • 授業と並行して、毎週、難解で分量もある文献を読んでレポートを提出する宿題が出ます。そのつもりで受講してください。

  • この授業は、楽をしたい人には絶対に向かない(そしてコンプリートできない)授業です。途中でドロップアウトしがちな人は十分注意して、覚悟して取り組み、しっかりとやり抜いてください。知的な探究心がある人、自分を鍛えて成長させたい人の参加を待っています。

  • 2023年度は、10月26日(木)の授業は休講となり、11月11日(土)に補講を行う予定です。


    【教材・参考文献】

    授業に並行して読む次の新書の本のみ、各自購入してください。

  • 竹田 青嗣, 『新・哲学入門』, 講談社, 2022

    以下は、この授業で読む予定の文献ですが、コピーを配布するので購入する必要はありません(じっくり付き合いたい本は、各自の判断でどうぞ。とても深い何度読んでも学びと発見がある本ばかりです)。

  • Takashi Iba, "An Autopoietic Systems Theory for Creativity”, Procedia - Social and Behavioral Sciences, Vol.2, Issue 4, 2010, pp.6610-6625
  • 井庭 崇 編著, 鈴木 寛, 岩瀬 直樹, 今井 むつみ, 市川 力, 『クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』, 慶應義塾大学出版会, 2019年
    -
  • H. R. マトゥラーナ, F. J. ヴァレラ, 『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』, 国文社, 1991
  • 河本 英夫, 『オートポイエーシス:第三世代システム』, 青土社, 1995
  • ニクラス・ルーマン, 『社会システム〈上〉〈下〉:或る普遍的理論の要綱』, 勁草書房, 2020
  • ニクラス・ルーマン, 『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』, 新泉社, 2007
  • ニクラス・ルーマン, ディルク・ベッカー 編, 『システム理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈1〉』, 新泉社, 2007
  • 小林隆児, 西研 編著, 『人間科学におけるエヴィデンスとは何か:現象学と実践をつなぐ』, 新曜社, 2015
  • 現象学とは何か: 哲学と学問を刷新する 単行本 – 2020/12/25
  • 竹田青嗣, 西研 編著, 『現象学とは何か: 哲学と学問を刷新する』, 河出書房新社, 2020
  • 竹田青嗣, 『哲学とは何か』, NHK出版, 2020
  • 竹田 青嗣, 『欲望論 第1巻:「意味」の原理論』, 講談社, 2017
  • 竹田 青嗣, 『欲望論 第2巻:「価値」の原理論』, 講談社, 2017
  • 井庭 崇「本質観取におけるアブダクションと質的帰納:フッサール現象学とパース論理学の接続」, 本質学研究, 第11号, 2022
  • 井庭崇, 「実践の本質学:パターン・ランゲージの作成における本質観取」, 本質学研究, 第12号, 2023
  • E.フッサール著, 『現象学の理念』, 作品社, 1997
  • フッサール, 『ブリタニカ草稿:現象学の核心』, ちくま学芸文庫, 2004
  • エトムント・フッサール, L.ランドグレーベ 編, 『経験と判断』, 新装版, 河出書房新社, 1999
  • エトムント・フッサール, 『イデーン I-I:純粋現象学と現象学的哲学のための諸構想 第1巻 純粋現象学への全体的序論』, みすず書房, 1979
  • エトムント・フッサール, 『イデーン I-II:純粋現象学と現象学的哲学のための諸構想 第1巻 純粋現象学への全体的序論』, みすず書房, 1984
  • エトムント・フッサール, 『イデーン II-I:純粋現象学と現象学的哲学のための諸構想 第2巻 構成についての現象学的諸研究』, みすず書房, 2001
  • エトムント・フッサール, 『イデーン II-II:純粋現象学と現象学的哲学のための諸構想 第2巻 構成についての現象学的諸研究』, みすず書房, 2001
  • エトムント・フッサール, 『能動的綜合――講義・超越論的論理学 1920-21年』, 山口一郎, 中山純一訳, 知泉書館, 2020
  • エドムント・フッサール, 『受動的綜合の分析』, 山口一郎, 田村京子訳, 国文社, 1997.
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