ニューバビロンとアイデアキャンプ
文房具をつかって自分たちで環境を整えながら創造的な活動をオフィスだけでなく街や野外でも行おう、というアイデアキャンプ。
1957年に結成された芸術/建築/都市グループであるシチュアシオニスト・インターナショナル(SI)のメンバーであったコンスタント・ニーベンホイスによる“ニューバビロン”を参照することもできるだろう。
住民のカスタマイズを受け入れる集住体とそれに付随する技術からなる「統一的都市計画」を表現したニューバビロン。画像はNew BabylonとかGoogleでConstant+Nieuwenhuysでimage検索などで見れる。
住人である「ニューバビロニアン」のモデルにはヨハン・ホイジンガによる「ホモ・ルーデンス」が、住人と環境との関係には住人らの「遊び」によって自発的かつ永続的に環境が再創造されていくというプロセスにはアンリ・ルフェーブルによる「空間の生産」が、大きな影響を与えている。
詳しい説明は建築家の今村創平さんによる解説や 建築批評家の大島哲蔵氏による解説や都市社会学者の南後由和さんのレクチャーのアーカイブが分かり易いだろう。
ニーベンホイスに影響を与え+受けたアルド・ファン・アイクやその流れを組むヘルツベルハーを見れば、ボトムアップで自己組織的なアクティビティに対する姿勢の共通点が見えてくるだろう。
ファン・アイクやその弟分であるヘルツベルハーらによる「オランダ構造主義」は以下のような特徴がある(マトリクスで読む20世紀の空間デザイン 彰国社 より抜粋)。
・「部分から全体へ」という微視的な視点が重要視される
・場所(部分)に応じた機能の相互的な関係を、造形・構造体・利用形態・スケールなどさまざまなレベルから複合的に関係づける
・ユーザが設計者の思惑を超えてさまざまに使いこなしていく手がかり=解釈の多様性を与えようとした
・コンピテンス(内発的学習意欲)を誘発する仕組み=ユーザが環境と相互作用する能力を発動させる仕掛けづくり
これらの特徴にはこちらのエントリーでも触れた。
アイデアキャンプは、新しい文房具と道具の使い方*ホモ・ルーデンス(→アイデア)*空間の生産(→自分でセットアップする空間+計画を超えた都市の使い方)*漂流/ホモ・モーベンス)、の統一的なひとまとまり、とでも言えるだろうか。メガストラクチャーとしての未来都市ではなく、ツールとスタイルが作り出す空間。ハイテックへのフェティシズムもなく、ローテクで色んな人がすぐに真似できるような身近さ。
そして資本主義に対抗しようとしている訳ではない。そうしたオランダにおけるSIの流れを受け継いでいるとも言えるレム・コールハースを参照してみる。コールハースは、SIのように資本主義に「突っ込み」を入れようとするのではなく、いったん受けてから「ノリ突っ込み」をしているのだ、と解説すると分かり易いのではないだろうか。だとしたら、さらに高度な技として、「ダルブボケ・ダブル突っ込み」もあり得るだろう。0/1ではなく[0...1]の世界。アイデアキャンプがそこまで高度かは分からないが。関西人にしか共有できなかったらスミマセン(笑
コールハースは新聞記者時代にニーベンホイスにインタビューしていたそう。
日本語でニューバビロンの情報が得られる書籍としては、
アーキラボ 建築・都市・アートの新たな実験 平凡社
大島 哲蔵,スクウォッター―建築×本×アート 学芸出版社
がある。上の写真はその2冊。ヘルツベルハーの本もオフィスや学校などに関心のある人におススメ。