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2013年03月 アーカイブ

2013年03月04日

『日本政治史の新地平』刊行。

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 坂本一登・五百旗頭薫編『日本政治史の新地平』(吉田書店、2013年)

 『政治を生きる』、『政治主導の教訓』につづく、御厨貴先生の退職記念論文集第3弾として『日本政治史の新地平』が刊行されました。前2冊が政治学、公共政策学であるのに対して、本書はタイトルのとおり、日本政治史を専門とするメンバーが執筆しました。

 私自身は、「立憲政友会の分裂と政党支持構造の変化―一党優位制の崩壊と二大政党制の端緒―」を書かせていただきました。ここ数年、日本における「政党を支持すること」と政党再編の構造の解明すべく、中央における政治変動が地方の政党支持にどのように現れるのかということに関心を持って研究を進めてきました。
 これは全国の選挙区を地域紙や郷土資料から見て回る、地道な、しかしなんとも面白いテーマで、ずいぶんと時間がかかるものでした。今回、ようやくこのテーマではじめての論文を書くことができました。

 目次は以下のとおりです。

 政治史の復権をめざして――はじめに   坂本 一登                      
 【第Ⅰ部 立憲政の潮流】
  第1章  明治初年の立憲政をめぐって――木戸孝允を中心に(坂本 一登)
  第2章  福地源一郎研究序説――東京日日新聞の社説より(五百旗頭 薫)
  第3章  征韓・問罪・公論――江華島事件後の対朝鮮政策をめぐるジャーナリズム論争(塩出 浩之)
  第4章  明治期の内大臣(西川  誠)                                 
  第5章  清末の中央官制改革――戊戌から丙午まで(浅沼かおり)         
 【第Ⅱ部 政党政治の展開】
  第6章  大正政変と桂新党――「立憲統一党」構想の視点から(千葉  功)        
  第7章  立憲政友会の分裂と政党支持構造の変化――一党優位制の崩壊と二大政党制の端緒(清水唯一朗)
  第8章  一九二〇年代の政治改革、その逆コースと市川房枝――政党内閣制黄昏期の内閣と議会と社会(村井 良太)
 【第Ⅲ部 戦後体制の模索】
  第9章  戦後保守勢力の相互認識と政界再編構想の展開 一九四五―四九年――政党機関誌・機関紙の分析を中心に(武田 知己)
  第10章  戦後政治と保守合同の相克――吉田ワンマンから自民党政権へ(村井 哲也)
  第11章  自治省創設への政治過程(黒澤  良)                           
  第12章  日米安保条約改定交渉と沖縄――条約地域をめぐる政党と官僚(河野 康子)
 【第Ⅳ部 地方の諸相】
  第13章  戦間期の水道問題(松本 洋幸)                                
  第14章  国民健康保険直営診療施設の普及――行政施策の展開を中心に(中静 未知)
  第15章  「交通戦争」の政治社会史(土田 宏成)                         
  第16章  現在の中央・地方関係への一考察――沖縄における「自立論」を中心に(佐道 明広)  新地平に映るもの――おわりに   五百旗頭 薫   
 

2013年03月09日

「吉野作造と大正の公論空間」(『近代日本研究』29号)

 R0022924.JPG 『近代日本研究』29号(2013年2月)」

 慶應義塾大学福沢研究センターが刊行する『近代日本研究』で「大正期再考」と題する特集を組まれることになり、拙稿を寄せさせていただきました。大正100年の記念企画です。

 「吉野作造と大正の公論空間―地域メディアでの口述筆記から―」

 2007年から毎夏、吉野作造記念館(宮城県大崎市)にうかがい、同館で開かれる人材育成研修会で東北大、東大、京大、慶應の先生方、学生のみなさんと勉強させてもらってきましたが、なかなかその成果を文字にすることができずにいました。

 そうしたなか、2010年春に横浜開港資料館で開催されていた「『横浜貿易新聞』創刊120周年 地域メディアの誕生 ―横浜・神奈川のオピニオンリーダーをめざして」をゼミ生と見学したおりに、同紙で展開されていた吉野の口述筆記が目に止まりました。同館の松本洋幸さんの大きなサポートをいただき、諸先生に教えを請いながら、なんとか本稿をまとめることができました。『吉野作造選集』巻末の著作一覧に未収録のものも20タイトル、54件見つけることができたことは、何らかの貢献になるかもしれません。

 私自身には、関東大震災後、吉野が同紙を退くのと交代するかのように与謝野晶子の連載が日曜版の一面にのぼっていくさまが印象に残っています。ご高覧賜わりますれば幸いです。

 そして、なによりすごいのは本誌『近代日本研究』29号の特集「大正期再考」の執筆陣です。下記に目次をあげておきます。やや入手しにくい雑誌かもしれませんが、ぜひ。

■第29巻 (2013年2月刊)
【特集 大正期再考】 
 「日露戦争から大正政変へ―1901~1913―」(小林 道彦) p.3~32
 「大正時代を考える―ナショナリズムの位置―」(櫻井 良樹) P.33~60
 「吉野作造と大正の公論空間―地域メディアでの口述筆記から―」(清水 唯一朗) P.61~104
 「大正期の海外渡航」(季武 嘉也) P.105~124
 「『経済雑誌ダイヤモンド』から見た大正期の経済社会問題」(中村 宗悦) P.125~164
 「普選前夜の企業城下町―大正期における三井鉱山と大牟田―」(松本 洋幸) P.165~204
 資料紹介
 「大正デモクラシーと青年華族―三島通陽と劇団「友達座」を中心に―」(内藤 一成) P.205~240

 http://www.fmc.keio.ac.jp/publication/modernjapan/#340

2013年03月15日

『沖縄時論』創刊号の「発見」

 okinawajiron.jpg 『沖縄時論』創刊号(1899年)

 沖縄の民主化を語る上で欠かせない人物に謝花昇がいます。彼は、1899年に憲政党に入党し、『沖縄時論』という雑誌を刊行して言論活動を展開しました。『沖縄時論』がいかに重要な雑誌かがおわかり頂けるでしょう。

 ところが、この雑誌はほとんど今日に伝わっていません。広く知られているのは沖縄県立図書館天野鉄夫文庫にある27号(1900年)だけのようで、他の巻号は『琉球新報』などの広告に記された目次で概要を知るのみだったようです。

 昨年の夏、偶然にも同誌の創刊号に出会うことができました。ドイツにいる友人の紹介で、奈良原繁(沖縄県令(現在の県知事))と謝花を軸に研究を進めるニナ・ホルシュナイダーさんが尋ねて来たおりのこと。奈良原も謝花もなかなか資料がないということで、あちこち検索をしてみました。
 すると、画面に「沖縄時論 神谷正次郎 謝花昇 1899」と出てきました。雑誌ではなく、図書扱いで所蔵されているようでしたが、1899年といえば『沖縄時論』創刊の年です。まさかと思い、所蔵する政令市の市立図書館に問い合わせをしました。
 後日、図書館から連絡があり、確認したところ第1号とのこと。さっそく現物を確認すると間違いありません。沖縄のことを知らない私では心許ないので、琉球大学の塩出浩之さんにチェックをお願いしました。

 同誌は、塩出さんの尽力で琉球大学図書館沖縄閉架資料室にて複製本が所蔵されることになり、先日、琉球放送でも報道されました。報道してくれたのはゼミ1期生の大城くんでした。これもうれしいことでした。

 今回の「発見」は、国立国会図書館の「国会サーチ」が各地の図書館OPACとの連動機能を備えたことでできたものでした。開発に携わってくださったみなさんに、心からお礼を申し上げたいと思います。

 国会サーチ「沖縄時論」
 http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I026925490-00
 
 覚書までに。

(2013.5.21 琉球大学図書館に所蔵されることとなったのはマイクロフィルムではなく、複製本とのことでした。誤記により、関係各位にはご迷惑をおかけいたしました)
 

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