「社会システム理論」2011年度春学期シラバス
「社会システム理論」
(先端導入科目-総合政策-社会イノベーション:30080)
【開講】月曜日3時限@慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)
【担当】井庭 崇
※この授業の映像は、SFC-GC (Global Campus) で公開されます(各授業実施日の数日後にアップ予定)。
※東日本大震災の影響で、今年度春学期のSFCの授業は5月からの開始となります。そのため、授業が開講される曜日が一部変則的になっています。
■ 主題と目標/授業の手法など
この授業の目的は、社会を「システム」として捉える視点を身につけることです。ここで取り上げるのは、最新の「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。その理論では、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことで成り立つシステムであると捉えます。このような捉え方で、社会学者ニクラス・ルーマンは、次のような問題に答えようとしました。「社会的な秩序はいかにして可能なのだろうか?」と。個々人は別々の意識をもち、自由に振る舞っているにもかかわらず、社会が成り立つ(現に動いている)、この不思議に取り組むのが、社会システム理論です。
社会システム理論の捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができるようになります。また、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しています。総合政策学的な/超領域的なアプローチの新しい基礎論として、社会システム理論を一緒に探究しましょう。
■ 教材・参考文献
教科書として以下の書籍を指定します。各自授業進行に合わせて読んでください。
●『Social Systems』 (N. Luhmann, Stanford University Press, 1996)
主要参考文献としては、以下のものを挙げておきます。
● 『システム理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈1〉』(ニクラス ルーマン, 新泉社, 2007)
● 『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)
これ以外のルーマンの著作については、メディアセンターの授業指定図書棚に置いておきます。適宜、活用してください。
■ 提出課題・試験・成績評価の方法など
成績評価は、授業への参加、宿題、期末レポートから総合的に評価します。
■ 履修上の注意
● 講義中のPCの使用を原則禁止とします。
● 2011年度春学期は学事日程変更により、5月22日(日)および7月18日(月・祝)にも授業があります。また、補講として5月21日(土)および7月9日(土)には、2コマ連続授業があります。これらに参加できることを確認のうえ、履修してください。
■ 履修制限
履修人数を制限する(最大約150人まで):初回授業時に志望理由を書いてもらいます。
■ 授業計画
第1回 イントロダクション (5/9 月)
ニクラス・ルーマンの提唱した「社会システム理論」の魅力はどこにあるのでしょうか? また、物事をシステムとして抽象化して考えるということには、どのような意義があるのでしょうか? この授業の目的と内容、および進め方について説明します。
第2回 学びの対話ワークショップ (5/16 月)
各自の学び方とその経験について語り合うワークショップを行ないます(学びのパターン・ランゲージである『学習パターン』を、コミュニケーション・メディアとして用いて、「コミュニケーションの連鎖」を引き起こすワークショップです)。
第3・4回 ゲストスピーカー鼎談『“自分”から始まる学びの場のデザイン』(5/21 土)
ゲストスピーカーとして、東京コミュニティスクール校長の市川力さんと、カタリバ代表理事の今村久美さんをお呼びし、鼎談を行ないます。
※補講日 5月21日(土)3・4限に実施
第5回 ダブル・コンティンジェンシーと社会形成 (5/22 日)
人は自由な意志にもとづいて考え、行動しています。それにもかかわらず、社会はある秩序をもって成り立っています。このようなことはいかにして可能なのでしょうか? 授業では、出来事や選択が「別様でもあり得る」(コンティンジェントである)ということ、そして、複数の人が集ると、お互いに相手を予測できないために自分の行為を決定できないという「ダブル・コンティンジェンシー」の問題が発生することを理解します。そして、「ノイズからの秩序」という考え方を用いて、社会形成の仕組みについて考えます。
第6回 行為とコミュニケーション (5/23 月)
社会システム理論では、「コミュニケーション」は、従来の社会学でいう「行為」の延長線上にあるものではないと捉えます(つまり、単なる社会的行為や言語的行為ではないと捉えます)。それでは、いったいコミュニケーションとはどのような出来事なのでしょうか? 授業では、従来のような「情報の移転」という捉え方ではない新しい「コミュニケーション」の捉え方について理解します。そのうえで、「コミュニケーション」が「行為」とはどのように異なるのかについて考えていきます。
第7回 コミュニケーションの生成・連鎖としての社会システム (5/30 月)
社会システム理論では、社会の構成要素は人ではなく「コミュニケーション」であるといいます。ここに、社会の捉え方に関する理論的革新があります。それでは、コミュニケーションを中心として社会を捉えると、どのように捉えることができるのでしょうか? 授業では、社会をコミュニケーションの生成・連鎖として捉える視点、および、人間の思考を意識の生成・連鎖として捉える視点を身につけます。また、自分で自分を生み出し続けるシステムを理解するうえで重要な「自己言及」(自己準拠)や「オートポイエーシス」(自己生成)の概念を学びます。
※ 6/6 休講
第8回 コミュニケーションの不確実性とメディア (6/13 月)
コミュニケーションにはいろいろな不確実性が伴うため、本来は成立が困難なものです。それにもかかわらず、日常生活ではふつうにコミュニケーションが成り立っています。いったいどのような仕組みでコミュニケーションが実現できているのでしょうか? 授業では、コミュニケーションにまつわる三つの不確実性(他者理解の不確実性、到達の不確実性、コミュニケーション成果の不確実性)と、それらの不確実性を確実性へと変換するメディア(言語、拡充メディア、コミュニケーション・メディア)について理解します。
第9回 近代社会の機能分化とシステム類型 (6/20 月)
社会システム理論では、近代社会は、経済、法、学問、宗教など、機能的な分化が起こったと捉えます。つまり近代社会では、経済システム、法システム、学問システム、宗教システムなどがそれぞれ自律的に動いているということです。それぞれの機能システムは、どのようなコードで動いているのか、また、それがどのように発展してきたのかを見ていきます。また、社会システムのいくつかの類型(タイプ)、つまり「相互行為」、「組織」、「(全体)社会」、「社会運動」の特徴について概観します。
※ 6/27、7/4 休講
第10・11回 ゲストスピーカー対談『学びと創造の場づくり』 (7/9 土)
ゲストスピーカーとして、企業・組織における学習やコミュニケーション、リーダーシップについて研究している東京大学大学総合教育研究センターの中原淳さんをお呼びし、対談を行ないます。
※補講日 7月9日(土)3・4限に実施
第12回 オートポイエーシスの考え方 (7/11 月)
ルーマンが引き継ぎ、精緻化した「オートポイエーシス」の考え方について再考します。
第13回 期末発表会 Part 1 (7/18 月・祝)
各自の期末レポートの内容を発表してもらいます。
第14回 期末発表会 Part 2 (7/25 月)
各自の期末レポートの内容を発表してもらいます。
(先端導入科目-総合政策-社会イノベーション:30080)
【開講】月曜日3時限@慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)
【担当】井庭 崇
※この授業の映像は、SFC-GC (Global Campus) で公開されます(各授業実施日の数日後にアップ予定)。
※東日本大震災の影響で、今年度春学期のSFCの授業は5月からの開始となります。そのため、授業が開講される曜日が一部変則的になっています。
■ 主題と目標/授業の手法など
この授業の目的は、社会を「システム」として捉える視点を身につけることです。ここで取り上げるのは、最新の「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。その理論では、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことで成り立つシステムであると捉えます。このような捉え方で、社会学者ニクラス・ルーマンは、次のような問題に答えようとしました。「社会的な秩序はいかにして可能なのだろうか?」と。個々人は別々の意識をもち、自由に振る舞っているにもかかわらず、社会が成り立つ(現に動いている)、この不思議に取り組むのが、社会システム理論です。
社会システム理論の捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができるようになります。また、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しています。総合政策学的な/超領域的なアプローチの新しい基礎論として、社会システム理論を一緒に探究しましょう。
■ 教材・参考文献
教科書として以下の書籍を指定します。各自授業進行に合わせて読んでください。
●『Social Systems』 (N. Luhmann, Stanford University Press, 1996)
主要参考文献としては、以下のものを挙げておきます。
● 『システム理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈1〉』(ニクラス ルーマン, 新泉社, 2007)
● 『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)
これ以外のルーマンの著作については、メディアセンターの授業指定図書棚に置いておきます。適宜、活用してください。
■ 提出課題・試験・成績評価の方法など
成績評価は、授業への参加、宿題、期末レポートから総合的に評価します。
■ 履修上の注意
● 講義中のPCの使用を原則禁止とします。
● 2011年度春学期は学事日程変更により、5月22日(日)および7月18日(月・祝)にも授業があります。また、補講として5月21日(土)および7月9日(土)には、2コマ連続授業があります。これらに参加できることを確認のうえ、履修してください。
■ 履修制限
履修人数を制限する(最大約150人まで):初回授業時に志望理由を書いてもらいます。
■ 授業計画
第1回 イントロダクション (5/9 月)
ニクラス・ルーマンの提唱した「社会システム理論」の魅力はどこにあるのでしょうか? また、物事をシステムとして抽象化して考えるということには、どのような意義があるのでしょうか? この授業の目的と内容、および進め方について説明します。
第2回 学びの対話ワークショップ (5/16 月)
各自の学び方とその経験について語り合うワークショップを行ないます(学びのパターン・ランゲージである『学習パターン』を、コミュニケーション・メディアとして用いて、「コミュニケーションの連鎖」を引き起こすワークショップです)。
第3・4回 ゲストスピーカー鼎談『“自分”から始まる学びの場のデザイン』(5/21 土)
ゲストスピーカーとして、東京コミュニティスクール校長の市川力さんと、カタリバ代表理事の今村久美さんをお呼びし、鼎談を行ないます。
※補講日 5月21日(土)3・4限に実施
第5回 ダブル・コンティンジェンシーと社会形成 (5/22 日)
人は自由な意志にもとづいて考え、行動しています。それにもかかわらず、社会はある秩序をもって成り立っています。このようなことはいかにして可能なのでしょうか? 授業では、出来事や選択が「別様でもあり得る」(コンティンジェントである)ということ、そして、複数の人が集ると、お互いに相手を予測できないために自分の行為を決定できないという「ダブル・コンティンジェンシー」の問題が発生することを理解します。そして、「ノイズからの秩序」という考え方を用いて、社会形成の仕組みについて考えます。
第6回 行為とコミュニケーション (5/23 月)
社会システム理論では、「コミュニケーション」は、従来の社会学でいう「行為」の延長線上にあるものではないと捉えます(つまり、単なる社会的行為や言語的行為ではないと捉えます)。それでは、いったいコミュニケーションとはどのような出来事なのでしょうか? 授業では、従来のような「情報の移転」という捉え方ではない新しい「コミュニケーション」の捉え方について理解します。そのうえで、「コミュニケーション」が「行為」とはどのように異なるのかについて考えていきます。
第7回 コミュニケーションの生成・連鎖としての社会システム (5/30 月)
社会システム理論では、社会の構成要素は人ではなく「コミュニケーション」であるといいます。ここに、社会の捉え方に関する理論的革新があります。それでは、コミュニケーションを中心として社会を捉えると、どのように捉えることができるのでしょうか? 授業では、社会をコミュニケーションの生成・連鎖として捉える視点、および、人間の思考を意識の生成・連鎖として捉える視点を身につけます。また、自分で自分を生み出し続けるシステムを理解するうえで重要な「自己言及」(自己準拠)や「オートポイエーシス」(自己生成)の概念を学びます。
※ 6/6 休講
第8回 コミュニケーションの不確実性とメディア (6/13 月)
コミュニケーションにはいろいろな不確実性が伴うため、本来は成立が困難なものです。それにもかかわらず、日常生活ではふつうにコミュニケーションが成り立っています。いったいどのような仕組みでコミュニケーションが実現できているのでしょうか? 授業では、コミュニケーションにまつわる三つの不確実性(他者理解の不確実性、到達の不確実性、コミュニケーション成果の不確実性)と、それらの不確実性を確実性へと変換するメディア(言語、拡充メディア、コミュニケーション・メディア)について理解します。
第9回 近代社会の機能分化とシステム類型 (6/20 月)
社会システム理論では、近代社会は、経済、法、学問、宗教など、機能的な分化が起こったと捉えます。つまり近代社会では、経済システム、法システム、学問システム、宗教システムなどがそれぞれ自律的に動いているということです。それぞれの機能システムは、どのようなコードで動いているのか、また、それがどのように発展してきたのかを見ていきます。また、社会システムのいくつかの類型(タイプ)、つまり「相互行為」、「組織」、「(全体)社会」、「社会運動」の特徴について概観します。
※ 6/27、7/4 休講
第10・11回 ゲストスピーカー対談『学びと創造の場づくり』 (7/9 土)
ゲストスピーカーとして、企業・組織における学習やコミュニケーション、リーダーシップについて研究している東京大学大学総合教育研究センターの中原淳さんをお呼びし、対談を行ないます。
※補講日 7月9日(土)3・4限に実施
第12回 オートポイエーシスの考え方 (7/11 月)
ルーマンが引き継ぎ、精緻化した「オートポイエーシス」の考え方について再考します。
第13回 期末発表会 Part 1 (7/18 月・祝)
各自の期末レポートの内容を発表してもらいます。
第14回 期末発表会 Part 2 (7/25 月)
各自の期末レポートの内容を発表してもらいます。
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