2012年度春学期「社会システム理論」シラバス
2012年度春学期の「社会システム理論」(井庭 崇)のシラバスを書きました。開講曜日時限は、月曜 3限です。社会のリアリティを捉え、さらに未来をつくっていくための理論を学んでいきましょう!
科目:社会システム理論
担当:井庭 崇
開講:月曜 3限
【主題と目標/授業の手法など】
本講義では、社会を「システム」として捉える視点を身につけ、変化を生み出す力を身につけることを目指します。
本講義で取り上げるのは、「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。その理論では、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことで成り立つシステムであると捉えます。このような捉え方で、社会学者ニクラス・ルーマンは、次のような問題に答えようとしました。「社会的な秩序はいかにして可能なのだろうか?」と。個々人は別々の意識をもち、自由に振る舞っているにもかかわらず、社会が成り立つ(現に動いている)、この不思議に取り組むのが、社会システム理論です。
社会システム理論の捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができるようになります。また、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しました。この授業では、さらに、組織学習やパターン・ランゲージ、オープン・コラボレーションなど、現代の新しい潮流の理解に、この理論を用いていきたいと思います。
社会システム理論は非常に難解な理論ですが、授業ではできる限り噛み砕いてわかりやすく説明します。また、映像や演習の時間なども設け、より楽しく実践的に学ぶ場にする予定です。前提知識等は必要ありません。学年も問いません。未来を切り拓いていきたいと思っている人は、ぜひ一緒に学びましょう。
【教材・参考文献】
教科書として以下の2冊の書籍を指定します。授業進行に合わせて読んでいきます。
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)
●『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley, 2005)
また、各回に使用する文献や関連する参考文献は、各回の説明のところで示してあります。必要なものについては適宜コピーを配布します。
【履修上の注意】
●毎週、英語で文献を読み、そのサマリーを提出するという宿題を出します。
●講義中のPCの使用を原則禁止とします。
【授業計画】
■■■ 第1回(4/9) イントロダクション
目的と内容、および進め方について説明します。ニクラス・ルーマンの提唱した「社会システム理論」の魅力はどこにあるのか? また、社会的創造の潮流や、創造的なコミュニケーションのメディアについて概観します。
■■■ 第2回(4/16) 創発的な出来事としてのコミュニケーション
社会システム理論では、社会の構成要素は人ではなく「コミュニケーション」であるといいます。ここに、社会の捉え方に関する理論的革新があります。しかも、その「コミュニケーション概念もこれまでとは異なる捉え方をします。それがどのような捉え方なのかを理解します。
【文献読解】
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章
■■■ 第3回(4/23) コミュニケーションのメディアとコード
特定の種類のコミュニケーションが連鎖していくには、いろいろな不確実性が伴うため、本来は成立が困難なものです。それにもかかわらず、近代社会においては、安定的に生成・連鎖が生じている種類のコミュニケーションがあります。そこで、そのようなコミュニケーションの生成・連鎖がいかにして可能なのかという秘密に迫ります。
【文献読解】
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章
■■■ 第4回(5/1) 近代社会とはいかなる時代か
社会システム理論では、近代社会は、経済、法、学問、宗教など、機能的な分化が起こったと捉えます。つまり近代社会では、経済システム、法システム、学問システム、宗教システムなどがそれぞれ自律的に動いているということです。それぞれの機能システムは、どのようなコードで動いているのか、そして、近代社会とはいかなる時代なのかについて考えます。
【文献読解】
●『Ecological Communication』(N. Luhmann, University Of Chicago Press, 1989) [『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章、第1章
■■■ 第5回(5/7) オートポイエーシスと構造的カップリング
ルーマンは社会を、自分で自分自身を生み出す「オートポイエーシス」の特徴をもつシステムだと捉えました。一体、オートポイエーシスとはどのようなものなのでしょうか。また、オートポイエティック・システムは他のシステムや環境とどのような関係をもつのでしょうか。この授業では、社会システム理論における「システム」の考え方を詳しくみていきます。
【文献読解】
●『Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living』(H. R. Maturana, F. J. Varela, Springer, 1980) [『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J.ヴァレラ, 国文社, 1991)] 一部
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
■■■ 第6回(5/14) 社会に変化をもたらすVoiceとExit
アルバート・ハーシュマンは、世の中を変えるには、Voice(発言)と Exit(退出)という二つの選択肢があるといいました。Voice(発言)は直接意見を言うことで変えていくということ、Exitはそこからいなくなることで間接的にシグナルを送るということです。この授業では、Voice/Exit論を、コミュニケーションの生成・連鎖の観点から捉え直します。
【文献読解】
●『Exit, Voice, and Loyalty: Responses to Decline in Firms, Organizations, and States』(Albert O. Hirschman, Harvard University Press, 1970) [『離脱・発言・忠誠:企業・組織・国家における衰退への反応』(A.O.ハーシュマン, ミネルヴァ書房, 2005)] 一部
■■■ 第7回(5/21) シナリオ・プランニング:未来の物語をつくって学ぶ
組織学習の方法のひとつに、「シナリオ・プランニング」というものがあります。プランニングという名前ですが、よい計画を立てることが目的なのではなく、複数人で未来像について語り合うプロセスのなかで、各人が学ぶ、あるいは組織が学ぶということが目指されます。シナリオ・プラニングとはどのようなものであり、実際にどうやるのかを理解し、実際に演習で体験してみます。
【文献読解】
● 『The Art of the Long View: Planning for the Future in an Uncertain World』(Peter Schwartz, Crown Business, 1996) [『シナリオ・プランニングの技法』(ピーター・シュワルツ, 東洋経済新報社, 2000)] 一部
■■■ 第8回(5/28) パターン・ランゲージ 1:ユーザー参加のメディア
建築家のクリストファー・アレグザンダーは、住民参加型のまちづくりを行なうために、「パターン・ランゲージ」という方法を考案しました。パターン・ランゲージは、設計者がもつ創造の経験則 を「パターン」という単位にまとめ、それを体系化したものです。現在では、パターン・ランゲージは、ソフトウェアデザインや組織デザイン、コミュニケーション・デザインなど、幅広い分野で使われるようになっています。この授業では、そのパターン・ランゲージの社会的機能について考えてみたいと思います。
【文献読解】
●『The Production of Houses』(C. Alexander, Oxford University Press, 1985) [『パタンランゲージによる住宅の建設』(C.アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1991)] 一部
■■■ 第9回(6/4) パターン・ランゲージ 2:組織変革の方法論
組織やコミュニティに新しいアイデアを導入するのはなかなか難しいものです。そのアイデアが革新的なアイデアであるほど、理解されるのは困難になります。また、それまでのやり方と異なることから、恐怖心や疑念も生まれてくるでしょう。しかしながら、そのようなイノベーションを引き起こしている人たちは、現に存在します。その人たちはどのように変革を進めているのでしょうか。この授業では、組織変革のパターン・ランゲージとして有名な『Fearless Change』のパターンを用いて、自らの経験を語り合う対話ワークショップを行ないます。
【文献読解】
●『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley, 2005)
■■■ 第10回(6/11) 創造的コラボレーション:コミュニケーションの連鎖で生み出す
コラボレーションとは、複数の人々が、ひとりでは決して到達できないような付加価値を生み出す協働作業のことです。創造的なコラボレーションが行われている組織やチームでは、そのコミュニケーションの流れに「勢い」が生まれ、連鎖的に共鳴・増幅していきます。このような流れに身を委ね、コミュニケーションのパスをつないでいくと、思いもかけない飛躍的なアイデアやイノベーションが生まれることがあります。そのような創造的コラボレーションで、一体何が起きているのかを考えたいと思います。
【文献読解】
●『Group Genius: The Creative Power of Collaboration』(Keith Sawyer, Basic Books, 2008) 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第2章
●「コラボでつくる!―― コミュニケーションの連鎖による創発」(井庭 崇, 『創発する社会』, 国領二郎 編著, 日経BP企画, 2006年)pp.68-85
■■■ 第11回(6/18) オープン・コラボレーション 1:Collaborative Innovation Networks (COINs)
不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」は、どのように発展していくのでしょうか。Creatorのまわりにいる Collaborative Innovation Networks の人々が重要な役割を担っていることを理解します。
【文献読解】
●『Coolfarming: Turn Your Great Idea into the Next Big Thing』(Peter Gloor, AMACOM, 2010) 一部
■■■ 第12回(6/25) オープン・コラボレーション 2:オープンソース・ソフトウェア開発
不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」の事例として、Linux OSのオープンソース・ソフトウェア開発について取り上げます。
【文献読解】
●『Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary』(Linus Torvalds, David Diamond, HarperBusiness, 2002) [『それがぼくには楽しかったから』(リーナス・トーバルズ, デビッド・ダイヤモンド, 小学館プロダクション, 2001)] 一部
■■■ 第13回(7/2) オープン・コラボレーション 3:WikiとWikipedia
不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」の事例として、Wikipediaについて取り上げます。また、Wikipediaのベースとなっている「Wiki」というシステムの発想を理解します。
【文献読解】
●『Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything』(Don Tapscott, Anthony D. Williams, Portfolio Trade, Expanded ed., 2010) [『ウィキノミクス:マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』, ドン・タプスコット, アンソニー・D・ウィリアムズ, 日経BP社, 2007)] 一部
●『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡 浩一郎, 技術評論社, 2009)序章, 第15・17章、終章
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第3章
■■■ 第14回(7/9) 社会に変化をもたらす
社会に深い変化をもたらすにはどうすればよいのでしょうか。精神的な側面と実践的な側面とを合わせもつ「U理論」(Theory U)を取り上げます。また、これまでの授業を振り返り、総括を行ないます。
【文献読解】
●『Presence: Human Purpose and the Field of the Future』(Peter M. Senge, et. al., Crown Business, Reprint ed., 2008) [『出現する未来』, ピーター・センゲ ほか, 講談社, 2006)] 一部
●『Theory U: Leading from the Future as It Emerges: The Social Technology of Presencing』(C. Otto Scharmer, Berrett-Koehler Pub, 2009) [『U理論:過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』, C・オットー・シャーマー, 英治出版, 2010)] 一部
【提出課題・試験・成績評価の方法など】
成績評価は、授業への参加、宿題、期末レポートから総合的に評価します。
【履修制限】
履修人数を制限する:100人程度。初回授業時に志望理由を書いてもらいます。
科目:社会システム理論
担当:井庭 崇
開講:月曜 3限
【主題と目標/授業の手法など】
本講義では、社会を「システム」として捉える視点を身につけ、変化を生み出す力を身につけることを目指します。
本講義で取り上げるのは、「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。その理論では、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことで成り立つシステムであると捉えます。このような捉え方で、社会学者ニクラス・ルーマンは、次のような問題に答えようとしました。「社会的な秩序はいかにして可能なのだろうか?」と。個々人は別々の意識をもち、自由に振る舞っているにもかかわらず、社会が成り立つ(現に動いている)、この不思議に取り組むのが、社会システム理論です。
社会システム理論の捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができるようになります。また、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しました。この授業では、さらに、組織学習やパターン・ランゲージ、オープン・コラボレーションなど、現代の新しい潮流の理解に、この理論を用いていきたいと思います。
社会システム理論は非常に難解な理論ですが、授業ではできる限り噛み砕いてわかりやすく説明します。また、映像や演習の時間なども設け、より楽しく実践的に学ぶ場にする予定です。前提知識等は必要ありません。学年も問いません。未来を切り拓いていきたいと思っている人は、ぜひ一緒に学びましょう。
【教材・参考文献】
教科書として以下の2冊の書籍を指定します。授業進行に合わせて読んでいきます。
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)
●『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley, 2005)
また、各回に使用する文献や関連する参考文献は、各回の説明のところで示してあります。必要なものについては適宜コピーを配布します。
【履修上の注意】
●毎週、英語で文献を読み、そのサマリーを提出するという宿題を出します。
●講義中のPCの使用を原則禁止とします。
【授業計画】
■■■ 第1回(4/9) イントロダクション
目的と内容、および進め方について説明します。ニクラス・ルーマンの提唱した「社会システム理論」の魅力はどこにあるのか? また、社会的創造の潮流や、創造的なコミュニケーションのメディアについて概観します。
■■■ 第2回(4/16) 創発的な出来事としてのコミュニケーション
社会システム理論では、社会の構成要素は人ではなく「コミュニケーション」であるといいます。ここに、社会の捉え方に関する理論的革新があります。しかも、その「コミュニケーション概念もこれまでとは異なる捉え方をします。それがどのような捉え方なのかを理解します。
【文献読解】
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章
■■■ 第3回(4/23) コミュニケーションのメディアとコード
特定の種類のコミュニケーションが連鎖していくには、いろいろな不確実性が伴うため、本来は成立が困難なものです。それにもかかわらず、近代社会においては、安定的に生成・連鎖が生じている種類のコミュニケーションがあります。そこで、そのようなコミュニケーションの生成・連鎖がいかにして可能なのかという秘密に迫ります。
【文献読解】
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章
■■■ 第4回(5/1) 近代社会とはいかなる時代か
社会システム理論では、近代社会は、経済、法、学問、宗教など、機能的な分化が起こったと捉えます。つまり近代社会では、経済システム、法システム、学問システム、宗教システムなどがそれぞれ自律的に動いているということです。それぞれの機能システムは、どのようなコードで動いているのか、そして、近代社会とはいかなる時代なのかについて考えます。
【文献読解】
●『Ecological Communication』(N. Luhmann, University Of Chicago Press, 1989) [『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章、第1章
■■■ 第5回(5/7) オートポイエーシスと構造的カップリング
ルーマンは社会を、自分で自分自身を生み出す「オートポイエーシス」の特徴をもつシステムだと捉えました。一体、オートポイエーシスとはどのようなものなのでしょうか。また、オートポイエティック・システムは他のシステムや環境とどのような関係をもつのでしょうか。この授業では、社会システム理論における「システム」の考え方を詳しくみていきます。
【文献読解】
●『Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living』(H. R. Maturana, F. J. Varela, Springer, 1980) [『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J.ヴァレラ, 国文社, 1991)] 一部
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
■■■ 第6回(5/14) 社会に変化をもたらすVoiceとExit
アルバート・ハーシュマンは、世の中を変えるには、Voice(発言)と Exit(退出)という二つの選択肢があるといいました。Voice(発言)は直接意見を言うことで変えていくということ、Exitはそこからいなくなることで間接的にシグナルを送るということです。この授業では、Voice/Exit論を、コミュニケーションの生成・連鎖の観点から捉え直します。
【文献読解】
●『Exit, Voice, and Loyalty: Responses to Decline in Firms, Organizations, and States』(Albert O. Hirschman, Harvard University Press, 1970) [『離脱・発言・忠誠:企業・組織・国家における衰退への反応』(A.O.ハーシュマン, ミネルヴァ書房, 2005)] 一部
■■■ 第7回(5/21) シナリオ・プランニング:未来の物語をつくって学ぶ
組織学習の方法のひとつに、「シナリオ・プランニング」というものがあります。プランニングという名前ですが、よい計画を立てることが目的なのではなく、複数人で未来像について語り合うプロセスのなかで、各人が学ぶ、あるいは組織が学ぶということが目指されます。シナリオ・プラニングとはどのようなものであり、実際にどうやるのかを理解し、実際に演習で体験してみます。
【文献読解】
● 『The Art of the Long View: Planning for the Future in an Uncertain World』(Peter Schwartz, Crown Business, 1996) [『シナリオ・プランニングの技法』(ピーター・シュワルツ, 東洋経済新報社, 2000)] 一部
■■■ 第8回(5/28) パターン・ランゲージ 1:ユーザー参加のメディア
建築家のクリストファー・アレグザンダーは、住民参加型のまちづくりを行なうために、「パターン・ランゲージ」という方法を考案しました。パターン・ランゲージは、設計者がもつ創造の経験則 を「パターン」という単位にまとめ、それを体系化したものです。現在では、パターン・ランゲージは、ソフトウェアデザインや組織デザイン、コミュニケーション・デザインなど、幅広い分野で使われるようになっています。この授業では、そのパターン・ランゲージの社会的機能について考えてみたいと思います。
【文献読解】
●『The Production of Houses』(C. Alexander, Oxford University Press, 1985) [『パタンランゲージによる住宅の建設』(C.アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1991)] 一部
■■■ 第9回(6/4) パターン・ランゲージ 2:組織変革の方法論
組織やコミュニティに新しいアイデアを導入するのはなかなか難しいものです。そのアイデアが革新的なアイデアであるほど、理解されるのは困難になります。また、それまでのやり方と異なることから、恐怖心や疑念も生まれてくるでしょう。しかしながら、そのようなイノベーションを引き起こしている人たちは、現に存在します。その人たちはどのように変革を進めているのでしょうか。この授業では、組織変革のパターン・ランゲージとして有名な『Fearless Change』のパターンを用いて、自らの経験を語り合う対話ワークショップを行ないます。
【文献読解】
●『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley, 2005)
■■■ 第10回(6/11) 創造的コラボレーション:コミュニケーションの連鎖で生み出す
コラボレーションとは、複数の人々が、ひとりでは決して到達できないような付加価値を生み出す協働作業のことです。創造的なコラボレーションが行われている組織やチームでは、そのコミュニケーションの流れに「勢い」が生まれ、連鎖的に共鳴・増幅していきます。このような流れに身を委ね、コミュニケーションのパスをつないでいくと、思いもかけない飛躍的なアイデアやイノベーションが生まれることがあります。そのような創造的コラボレーションで、一体何が起きているのかを考えたいと思います。
【文献読解】
●『Group Genius: The Creative Power of Collaboration』(Keith Sawyer, Basic Books, 2008) 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第2章
●「コラボでつくる!―― コミュニケーションの連鎖による創発」(井庭 崇, 『創発する社会』, 国領二郎 編著, 日経BP企画, 2006年)pp.68-85
■■■ 第11回(6/18) オープン・コラボレーション 1:Collaborative Innovation Networks (COINs)
不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」は、どのように発展していくのでしょうか。Creatorのまわりにいる Collaborative Innovation Networks の人々が重要な役割を担っていることを理解します。
【文献読解】
●『Coolfarming: Turn Your Great Idea into the Next Big Thing』(Peter Gloor, AMACOM, 2010) 一部
■■■ 第12回(6/25) オープン・コラボレーション 2:オープンソース・ソフトウェア開発
不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」の事例として、Linux OSのオープンソース・ソフトウェア開発について取り上げます。
【文献読解】
●『Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary』(Linus Torvalds, David Diamond, HarperBusiness, 2002) [『それがぼくには楽しかったから』(リーナス・トーバルズ, デビッド・ダイヤモンド, 小学館プロダクション, 2001)] 一部
■■■ 第13回(7/2) オープン・コラボレーション 3:WikiとWikipedia
不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」の事例として、Wikipediaについて取り上げます。また、Wikipediaのベースとなっている「Wiki」というシステムの発想を理解します。
【文献読解】
●『Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything』(Don Tapscott, Anthony D. Williams, Portfolio Trade, Expanded ed., 2010) [『ウィキノミクス:マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』, ドン・タプスコット, アンソニー・D・ウィリアムズ, 日経BP社, 2007)] 一部
●『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡 浩一郎, 技術評論社, 2009)序章, 第15・17章、終章
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第3章
■■■ 第14回(7/9) 社会に変化をもたらす
社会に深い変化をもたらすにはどうすればよいのでしょうか。精神的な側面と実践的な側面とを合わせもつ「U理論」(Theory U)を取り上げます。また、これまでの授業を振り返り、総括を行ないます。
【文献読解】
●『Presence: Human Purpose and the Field of the Future』(Peter M. Senge, et. al., Crown Business, Reprint ed., 2008) [『出現する未来』, ピーター・センゲ ほか, 講談社, 2006)] 一部
●『Theory U: Leading from the Future as It Emerges: The Social Technology of Presencing』(C. Otto Scharmer, Berrett-Koehler Pub, 2009) [『U理論:過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』, C・オットー・シャーマー, 英治出版, 2010)] 一部
【提出課題・試験・成績評価の方法など】
成績評価は、授業への参加、宿題、期末レポートから総合的に評価します。
【履修制限】
履修人数を制限する:100人程度。初回授業時に志望理由を書いてもらいます。
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