井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

『The Nature of Order』を読む(Book 1:最初〜第1章)

今週から「シミュレーションデザイン」の授業で、『The Phenomenon of Life: The Nature of Order, Book 1: An Essay of the Art of Building and the Nature of the Universe』 (Christopher Alexander, The Center for Environmental Structure, 2002) の読解が始まった。

今日は、Book 1 の Prologue、Preface、Chapter 1。

せっかくなので、このブログにも僕が注目した箇所のメモを掲載しておきたい。
下記は内容の要約ではなく、あくまでも注目した箇所のメモ。

まず最初に取り上げたいのは、Prologueにあるアレグザンダーの自分の立ち位置についての記述。

"I did not start out as a philosopher, and I have no special desire to write about philosophy or about the nature of things. This is not my trade. I am interested in one question above all --- how to make beautiful buildings. But I am interested only in it real beauty." (Prologue, p.2)

アレグザンダーはここで、哲学としてではなく、どうやってつくるのか、ということにつなげて探究しているという姿勢を明言している。

次に、なぜこの本のタイトルが『The Nature of Order』であるかという理由について。

"Our idea of matter is essentially governed by our idea of order. What matter is, is governed by our idea of how space can be arranged; and that in turn is governed by our idea of how orderly arrangement in space creates matter. So it is the nature of order which lies at the root of the problem of architecture. Hence the title of this book." (Preface, p.8)

モノに注目するのではなく、秩序に注目するということから、『The Nature of Order』というタイトルにしたということだ。

そして、「秩序」に対するアプローチについては、こう書かれている。

"We experience order every time we take a walk. … But this geometry which means so much, which makes us feel the presence of order so clearly --- we do not have a language for it." (Preface, p.9)

秩序(order)というものは、身の回りにたくさんあるけれども、それについての「言語」(language)を私たちは持ち合わせていないということだ。だからこそ、「パターン・ランゲージ」をつくったわけであり、『The Nature of Order』のなかの「センター」や「15の基本特性」などの概念を生み出すことになったのである。

この文章を読むと、僕は、マトゥラーナとヴァレラが「オートポイエーシス」(autopoiesis)という言葉をつくる必要性に駆られたのと同じだと感じる。

「生命システムに出会えばそれが生命システムであると認めることはできるが、それがなんであるかを語ることをはきないという事実を受け入れざるをえなかった。・・・さまざまの試みをつづけた結果、困難は認識論的なものであると同時に、言語的なものであることがわかった。………生命システムを、環境によって規定される開放系とみなすことはやめねばならなかった。そして記述されたシステムないし実体の特徴として自律性を保持しながら、自律的システムを記述てきるような言語が必要となった。」(Maturana & Varela (1980) p.xiv)


さて、アレグザンダーの『The Nature of Order』に戻ろう。
さらに、次の箇所も重要である。

"My aim in this book is to create a scientific view of the world in which this concept --- the idea that everything has its degree of life --- is well-defined." (Preface, p.32)

すべてのものに「degree of life」がある、という。このことは、『The Nature of Order』の根本的で重要な考え方である。

ここでいう、「life」というのは、生物的な意味での「life」ではなく、より広い意味での概念である。

"The quality I call life in these buildings exists as a quality. It is clearly not the same as the biological life we recognize in organisms. It is a larger idea, and a more general one." (Chapter 1: The Phenomenon of Life, p.45)


ここで重要なのは、アレグザンダーが「life」と呼ぶのは「quality」である、ということ。
つまり、「いきいきとした質」を「life」という言葉で言及しているのである。
だから、無生物の「波」や「炎」にも、「life」があるということは可能となる。

"It is this very general life --- formal, geometric, structural, social, biological, and holistic --- which is my main target." (Chapter 1, p.46)


このように、「Life」という言葉は、生物的な意味に限定するのではなく、より一般的な意味で用いられているのである。

また、「Life」と「Wholeness」の関係については、次のような記述もある。

"To produce this life, we must first see how life springs from wholeness, and indeed how life is wholeness. Wholeness exists all around us, and life springs from it." (Chapter 1, p.55)


そのような「life」があるものを生み出すためには、いかにして「life」が「wholeness」(全体性)から生じるのか、また、どのように「life」が「wholeness」なのかを理解することが必要だという。

このように、『時を超えた建設の道』でもそうだったように、「life」と「quality」と「wholeness」は不可分なものなのである。


Prologueの最後に、Book 1のまとめが書かれている。

"One of these is the claim that all space and matter, organic or inorganic, has some degree of life in it, and that matter / space is more alive or less alive according to its structure and arrangement."(Prologue, p.4)
The Nature of Order | - | -
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