新規メンバー募集!井庭研 Natural & Creative Living Lab(2017秋)
井庭研Aシラバス(2017年度秋学期)
Natural & Creative Living Lab - より自然で創造的に生きる社会へ
2017年7月12日(水)6限:説明会@o408研究室
2017年7月23日(日):エントリー〆切
2017年7月26日(水)・27日(木):面接
【研究テーマ】
井庭研では、情報社会の次に来るこれからの社会を「創造社会」(Creative Society)と考え、創造的で豊かな生き方を実践・支援するための研究を行なっています。
井庭研で 「創造的」(creative) というとき、それは「発見の連鎖」をつないでいくということを意味しています。日常的な創造性でも、専門的な創造性でも、小さな発見が次々と生じているような状態を「創造的」だと捉えます。そのような「発見の連鎖」が起きている状況では、つくり手も想定していなかったような展開が生まれ、その経験を通してつくり手は変化・成長します。つくることは探究することであり、学ぶこと、そして変化することなのです。
このような創造的な活動がいろいろな分野で起きやすくなるための支援の研究が、井庭研で取り組んでいることです。具体的にどのようなテーマの研究を行うのかは毎年変わりますが、2017年度に取り組んでいるのは、「これからの読書の楽しみ方」、「家族・親子関係の多様なかたち」、「料理の学びのスタイル」、「これからのおもてなし」、「ゆるい創発型のまちづくり」、「介護分野のイノベーターたちの考え方」等です。
井庭研では、 一人ひとりがもっているナチュラルな創造性(Natural Creativity)の力を信じ、それがより発揮されることを目指しています。かつて、作家のミヒャエル・エンデは、「創造的であるというのは、要するに、人間的であるということにほかならない。」と語りました。井庭研ではさらに、創造的であることは人間的であり、そしてそれは自然(ナチュラル)なことである、と考えています。人為的・作為的な創造行為ではなく、より自然のあり方・かたちに近い創造性のあり方と生き方を探究しています。
【アプローチ】
そのような未来に向けての転換・変化のためには、思想と理論、方法論と道具を駆使していく必要があります。井庭研究室では、「プラグマティズム」などの思想とともに、「システム理論」や「創造性」、「学び」の理論等を踏まえながら、「パターン・ランゲージ」をはじめとする方法論を開発し、さまざまな「メディア」を用いて道具をつくることで、創造的で豊かな生き方ができる社会へのシフトを目指します。
現在、井庭研が用いている方法論 には、1.「パターン・ランゲージ」、2.「ファン・ランゲージ」、3.「スタイル・ランゲージ」、4.「コミュニティ・ランゲージ」、5.「フューチャー・ランゲージ」、6.「コンセプト・ランゲージ」などがあります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
1. パターン・ランゲージ(Pattern Language) は、物事の秘訣や経験則、コツを言語化して共有する方法です。もともとは、建築やソフトウェアのデザイン(設計)の知を言語化する方法として考案・発展してきたものですが、井庭研では人間行為の経験則を言語化する方法として応用してきました。学び、プレゼンテーション、コラボレーション、企画、料理、暮らしのデザインなど、井庭研ではこれまでに30種類以上の領域で1000パターン以上をつくってきました。パターン・ランゲージの使い方については、「対話」のメディアとして用いるということを提案し、実践してきました。いろいろな実践領域のパターン・ランゲージをつくるということは、新しい分野を始める支援をするということで、ソフトな社会インフラをつくっている、と言うことができます。
2. ファン・ランゲージ(Fun Language) は、物事の楽しみ方の言語化です。新しく物事に取り組むということは、なかなか腰が重いものです。それをうまくできるようになるまでは、その本来の面白みは味わうことができません。でも、ちょっとした楽しみ方を知ることで、楽しく実践することができるようになります。どのような楽しみ方をしている人がいるのか、ということを端的な言葉にまとめ、共有することを可能にするのが、ファン・ランゲージです。例えば、「料理の楽しみ方」を Cooking Fun Languageをつくって、料理の楽しみ方を言語化しました。ファン・ランゲージは、パターン・ランゲージのように「うまくやること」の支援ではなく、「楽しむための発想」を支援します。理にかなって調和を生むデザインというよりは、気持ち、感情、心が動くことで、いきいきとした状態を生み出すのです。
3. スタイル・ランゲージ(Style Language) では、その対象における「スタイル」(あり方)について言語化します。それは、ある方向に収斂させようとするためではなく、多様性を保持・増長させるためにつくります。様々なスタイルを表す言葉をつくることで、自らのスタイルを語りやすくなるとともに、自分では思いつかないようなスタイルを知ることができるようになります。また、多様なスタイルが言葉になっていることで、同じようなスタイルを求めている人同士のマッチングも可能になります。スタイル・ランゲージは今年度の研究のなかでつくっていく新しい形式のランゲージです。
4. コミュニティ・ランゲージ(Community Language) では、「そのコミュニティらしさ」を言語化します。自分たちが何を大切にしているのか、自分たちらしさは何によって構成されているのかを言葉にします。 コミュニティ・ランゲージでは、具体的すぎない「適度な抽象化」をした言葉で「自分たちらしさ」を把握することで、これまでの具体的な事例に囚われずに、自分たちらしく「新しさ」を取り入れる支援をします。「自分たちらしさ」を持ちながらも、具体的なレベルでは新しいことを実現できるのです。それにより、多くの企業や学校、自治体が、自分たちらしく新しいことを始めることを支援します。
5. フューチャー・ランゲージ(Future Language) は、未来のヴィジョンを言語化する方法です。コミュニティや組織の未来像、あるいは、これからつくる場やイベントなどのアイデアを出し、それらを語るための言葉をつくります。パターン・ランゲージは何かを生み出すために「どうするとよいのか」を考える支援する方法ですが、それによって何を生み出すかは、各自の具体化に任されています。フューチャー・ランゲージでは、どんな未来をつくるかを、複数人・多人数で協働的に話し合い、明示化して共有することができます。フューチャー・ランゲージによって、協働的な未来づくりが支援されます。
6. コンセプト・ランゲージ(Concept Language) は、理念や考えを言語化する方法です。組織やコミュニティ、社会に対して共有したい理念・考えがあり、そのままでは伝わりにくい場合に、相互にゆるやかにつながった小さな単位の言葉にすることで、共有しやすくします。コンセプト・ランゲージは、パターン・ランゲージと同じ形式で記述され、使い方も似ています。しかしパターン・ランゲージは、これまでに実践され、良いとわかっている成功事例に潜む共通パターンを言語化するのに対して、コンセプト・ランゲージはこれまでに実践されているとは限りません。新しい環境やテクノロジー、新しい組織体制など、これまでと前提条件が異なる状況で、大切なことを共有したいというときに、コンセプト・ランゲージが有効です。
このように井庭研には、 自発性と個性を重視しながらポジティブな変化を促す ための方法が揃っています。デザイン・行為のパターン・ランゲージ、楽しみ方のファン・ランゲージ、多様性のスタイル・ランゲージ、自分たちらしさのコミュニティ・ランゲージ、未来ヴィジョンづくりのフューチャー・ランゲージ、理念・考えの浸透のコンセプト・ランゲージ、 - これらに加えて、 ワークショップ を設計・実施したり、日常の環境に埋め込むための 新しいメディアのデザイン なども行うことで、よりナチュラルでクリエイティブな生き方を支援し、そのための社会の変化を促すことに取り組んでいきます。
【運営方針】
2017年春学期から、井庭研メンバー全員ですべての研究を行うという体制になりました。 縦割りの「プロジェクト」がいくつも並行して動くというスタイルをとらず、井庭研全体がひとつの大きなチームになり、いろいろな研究に取り組むということです(20数人での大規模なグループワークのイメージです)。
つまり、井庭研に入ると、上述の具体的テーマのなかのどれかを選ぶというのではなく、すべての研究に取り組むことになります。研究のなかには、あるテーマのパターン・ランゲージをつくるというものもあれば、ファン・ランゲージをつくるものもあります。また、あるパターン・ランゲージを現場に導入するという実践もあれば、理論や思想を深める研究や、新しいメディア表現に挑戦するということもあります。そういった多様な研究に全員が関わり、刺激し合い、一緒にいろいろな経験を積んでいきます。
井庭研の大きな特徴として、学部生でも自分たちの研究成果を論文にまとめ、国際学会で数多く発表しているということがあります。例えば、2016年は、計26本の論文を書き、それを台湾、イタリア、ドイツ、アメリカで開催された国際学会で発表してきました。そのほとんどの論文は、学部 2年生~4年生によって書かれています( →2016年 発表論文リスト )。2017年度はドイツ、アメリカ、オーストリア、カナダで国際学会発表を行うことになっています。
また、研究成果を書籍として出版することもあります( →2016年 書籍出版リスト )。井庭研では、そのくらい本格的に研究・実践に取り組んでいます。まさに、井庭研がSFC生活の中心となるような活動量です。そういう本格的な研究・実践に一緒に取り組みたいという人を募集します。
2017年度は、花王株式会社、クックパッド株式会社、UDS株式会社、株式会社 有隣堂 等と共同研究を行なっており、実際に世の中への変化を生み出す研究に取り組んでいます。
【あらかじめ読んでおいてほしい必読文献】
井庭研の研究をさらに理解するために、 『プロジェクト・デザイン・パターン:企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32』 (井庭 崇 , 梶原 文生, 翔泳社, 2016)や 『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』 (井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)は読んでおいてください。 『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』 (井庭 崇 編著, 宮台 真司, 熊坂 賢次, 公文 俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)の第2章(熊坂さんとの対談)も、井庭研で大切にしていることを知ることができるので、ぜひ読んでみてください。
【履修条件】
井庭研をファースト・プライオリティにおいて活動できること。
井庭研での研究に積極的かつ徹底的に取り組む覚悟があること。
研究だけでなく、「コミュニティとしての井庭研」を一緒につくっていく意志があること。
【その他・留意事項】
井庭研では、たくさん本を読みます。難しいものもたくさん読みます。それは、知識を身につけるというだけでなく、考え方の型を知り、考える力をつけるためでもあります。さらに、他のメンバーとの共通認識を持ち、共通言語で話すことができるようになるためでもあります。創造の基盤となるのです。
井庭研では、たくさん話して、たくさん手を動かします。文献を読んで考えるということはたくさんやりますが、それだけでは足りません。他のメンバーと議論し、ともに考え、一緒につくっていく、ということによって、一人ひとりの限界を超えることができます。こうして、ようやく《世界を変える力》をもつものをつくることができるのです。
【授業スケジュール】
井庭研では、どっぷりと浸かって日々一緒に活動に取り組むことが大切だと考えています。大学生活の・時間割上の一部の時間を井庭研の活動に当てるというよりは、 井庭研が大学生活のベースになる ということです。井庭研に入るということは、SFCでの「ホーム」ができるということもあるのです。創造的な活動とその社会的な変革は、毎週数時間集まって作業するというだけでは成り立ちません。いつも、どこにいても考え、アンテナを張り、必要なときに必要なだけ手を動かすことが不可欠です。そのため、自分の生活の一部を埋めるような感覚ではなく、生活の全体に重なり、日々の土台となるようなイメージをもってもらえればと思います。
そのなかでも、全員で集まって活動する時間も、しっかりとります。各自が準備をしたり勉強したりする時間とは別に、みんなで集まって話し合ったり、作業を進める時間が必要だからです。井庭研では、 水曜の3限から夜までと、木曜の4限から夜までの時間は、メンバー全員で集まって活動する 《まとまった時間》 としています。これらの時間は、授業や他の予定を入れないようにしてください。
【評価方法】
研究・実践活動への貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。
【エントリー課題】
7月23日(日)までに、指定の内容を書いたメールを提出してください。7月26日(水)もしくは27日(木)に面接を行う予定です。
エントリーメールの提出先: ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp ([at]を@に変えてください)
メールのサブジェクト(件名): 井庭研A(2017秋) 履修希望
以下の内容を書いたファイル(PDF、Word、もしくはPages)を、メールに添付してください。
井庭研A(2017秋) 履修希望
1. 氏名(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
2. 自己紹介(イメージしやすいように、適宜、写真や絵などを入れてください)
3. 日頃の問題意識と興味・関心
4. 井庭研の志望理由と意気込み
5. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
6. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
7. これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
8. これまでに所属した研究会と、来学期、並行して所属することを考えている研究会(あれば)
【教材・参考文献】
2016年度からの継続メンバーは、最近、以下の本を読んでいます。これらの本も含め、いろいろと読んでいくことになります。
『プロジェクト・デザイン・パターン:企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32』 (井庭 崇 , 梶原 文生, 翔泳社, 2016)
『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』 (井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)
『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』(井庭 崇 編著, 宮台 真司, 熊坂 賢次, 公文 俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)
『時を超えた建設の道』 (クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)
『創造性とは何か』 (川喜田二郎, 詳伝社新書, 詳伝社, 2010)
『オープンダイアローグとは何か』 (斎藤環 著+訳, 医学書院, 2015)
『プラグマティズム入門』 (伊藤 邦武, ちくま新書, 筑摩書房, 2016)
『ヴィゴツキー入門』 (柴田 義松, 子どもの未来社, 2006)
『感動をつくれますか?』 (久石 譲, 角川oneテーマ21, 角川書店, 2006)
『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです:村上春樹インタビュー集 1997-2011』 (村上春樹, 文春文庫,文藝春秋, 2011)
『グラウンデッド・セオリー・アプローチ(改訂版):理論を生みだすまで』 (戈木クレイグヒル滋子, 新曜社, 2016)
『創造的論文の書き方』 (伊丹 敬之, 有斐閣, 2001)
『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』 (井庭崇, 井庭研究室, 慶應義塾大学出版会, 2013)
『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』 (井庭 崇, 岡田 誠 編著, 慶應義塾大学 井庭崇研究室, 認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ, 丸善出版, 2015)
他の重要論文には、例えば、以下のようなものがあります。
『オレゴン大学の実験』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1977)
『パタン・ランゲージによる住宅の生産』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 2013)
『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1984)
『まちづくりの新しい理論』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1989)
『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)
『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡浩一郎, 技術評論社, 2009)
クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989)
『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)
『The Nature of Order, Book 2: The Process of Creating Life』(Christopher Alexander, The Center for Environmental Structure, 2003)
『The Battle for the Life and Beauty of the Earth: A Struggle Between Two World-Systems』(Christopher Alexander, Oxford University Press, 2012)
『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, 丸善出版, 2014)
『オープンダイアローグ』(ヤーコ・セイックラ, トム・エーリク・アーンキル, 日本評論社, 2016)
『協働するナラティヴ:グーリシャンとアンダーソンによる論文「言語システムとしてのヒューマンシステム』(ハーレーン・アンダーソン, ハロルド・グーリシャン, 野村 直樹, 遠見書房, 2013)
『ナラティヴ・セラピー:社会構成主義の実践』(S・マクナミー, K・J・ガーゲン 編, 遠見書房, 2014)
『リフレクティング:会話についての会話という方法』(矢原隆行, ナカニシヤ出版, 2016)
『アブダクション:仮説と発見の論理』(米盛裕二, 勁草書房, 2007)
『発想法:創造性開発のために』(川喜田 二郎, 中公新書, 中央公論社, 1967)
『シナリオ・プランニングの技法』(ピーター・シュワルツ, 東洋経済新報社, 2000)
『源泉:知を創造するリーダーシップ』(ジョセフ・ジャウォースキー, 英治出版, 2013)
『U理論:過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』(C・オットー・シャーマー, 英治出版, 2010)
『職業としての小説家』(村上 春樹, 新潮社, 2016)
『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹, 文春文庫, 2010)
『ものがたりの余白:エンデが最後に話したこと』(ミヒャエル・エンデ, 岩波書店, 2009)
『出発点:1979~1996』(宮崎 駿, スタジオジブリ, 1996)
『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』(宮崎 駿, 文藝春秋, 2013)
『天才たちの日課:クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』(メイソン・カリー, フィルムアート社, 2014)
『偉大なアイディアの生まれた場所:シンキング・プレイス』(ジャック・フレミング, キャロライン・フレミング, 清流出版, 2011)
『生きるとは、自分の物語をつくること』(小川洋子, 河合隼雄, 新潮文庫, 新潮社, 2011)
『イメージの心理学』(河合隼雄, 青土社, 1991)
『決断力』(羽生善治, 角川oneテーマ21, 角川書店, 2005)
『未来を創るこころ』(石川 忠雄, 慶應義塾大学出版会, 1998)
『科学の未来』(フリーマン・ダイソン, みすず書房, 2005)の第2章「科学」
『社会科学をひらく』(イマニュエル・ウォーラーステイン+グルベンキアン委員会, 藤原書店, 1996)
『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)
『離脱・発言・忠誠:企業・組織・国家における衰退への反応』(A.O.ハーシュマン, ミネルヴァ書房, 2005)
『人間性と行為』(J.デューイ, 人間の科学社, 1995)
『プラグマティズム古典集成』(チャールズ・サンダース・パース, ウィリアム・ジェイムズ, ジョン・デューイ, 作品社, 2014)
『デカルトからベイトソンへ:世界の再魔術化』(モリス・バーマン, 国文社, 1989)
『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭 崇, 福原 義久, NTT出版, 1998)
『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J. ヴァレラ, 国文社, 1991) 『社会システム理論〈上〉〈下〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1993/1995)
『社会の社会〈1〉〈2〉』(ニクラス・ルーマン, 法政大学出版局, 2009)
『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)
『システム理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈1〉』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)
『ニクラス・ルーマン入門:社会システム理論とは何か』(クリスティアン・ボルフ, 新泉社, 2014)
『法と立法と自由I:ルールと秩序(ハイエク全集 1-8 新版)』(F.A.ハイエク, 春秋社, 2007)
『コミュニティ・オブ・プラクティス:ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』(エティエンヌ・ウェンガー, リチャード・マクダーモット, ウィリアム・M・スナイダー, 翔泳社, 2002)
『全員経営:自律分散イノベーション企業 成功の本質』(野中 郁次郎, 勝見 明, 日本経済新聞出版社, 2015)
『凡才の集団は孤高の天才に勝る:「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア』(キース・ソーヤー, ダイヤモンド社, 2009)
『マインドストーム:子供、コンピューター、そして強力なアイデア』 (シーモア・パパート, 未来社, 1982)
『楽しみの社会学』(M.チクセントミハイ, 新思索社, 改題新装版, 2000)
『フロー体験:喜びの現象学』(M.チクセントミハイ, 世界思想社, 1996)
『フロー体験入門:楽しみと創造の心理学』(M.チクセントミハイ, 世界思想社, 2010)
『声の文化と文字の文化』(ウォルター・J.オング,藤原書店,1991)
『ハイ・コンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』(ダニエル・ピンク, 三笠書房, 2006)
『「心の時代」にモノを売る方法:変わりゆく消費者の欲求とビジネスの未来』(小阪 裕司, 角川書店, 2012)
『虫眼とアニ眼』(養老 孟司, 宮崎 駿, 新潮文庫, 新潮社, 2008)
『芸術と政治をめぐる対話(エンデ全集16)』(ミヒャエル・エンデ, 岩波書店, 2002)
『独立国家のつくりかた』(坂口 恭平, 講談社現代新書, 講談社, 2012)
『FAMILY GYPSY:家族で世界一周しながら綴った旅ノート』(高橋歩, A-Works, 2013)
『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ, マーク・ジョンソン, 大修館書店, 1986)
『「身体」を忘れた日本人』(養老孟司, C.W.ニコル, 山と渓谷社, 2015)
『惑星の風景:中沢新一対談集』(中沢新一, 青土社, 2014)
『ナチュラル・ナビゲーション:道具を使わずに旅をする方法』(トリスタン・グーリー, 紀伊國屋書店, 2013)
ほか
Natural & Creative Living Lab - より自然で創造的に生きる社会へ
2017年7月12日(水)6限:説明会@o408研究室
2017年7月23日(日):エントリー〆切
2017年7月26日(水)・27日(木):面接
【研究テーマ】
井庭研では、情報社会の次に来るこれからの社会を「創造社会」(Creative Society)と考え、創造的で豊かな生き方を実践・支援するための研究を行なっています。
井庭研で 「創造的」(creative) というとき、それは「発見の連鎖」をつないでいくということを意味しています。日常的な創造性でも、専門的な創造性でも、小さな発見が次々と生じているような状態を「創造的」だと捉えます。そのような「発見の連鎖」が起きている状況では、つくり手も想定していなかったような展開が生まれ、その経験を通してつくり手は変化・成長します。つくることは探究することであり、学ぶこと、そして変化することなのです。
このような創造的な活動がいろいろな分野で起きやすくなるための支援の研究が、井庭研で取り組んでいることです。具体的にどのようなテーマの研究を行うのかは毎年変わりますが、2017年度に取り組んでいるのは、「これからの読書の楽しみ方」、「家族・親子関係の多様なかたち」、「料理の学びのスタイル」、「これからのおもてなし」、「ゆるい創発型のまちづくり」、「介護分野のイノベーターたちの考え方」等です。
井庭研では、 一人ひとりがもっているナチュラルな創造性(Natural Creativity)の力を信じ、それがより発揮されることを目指しています。かつて、作家のミヒャエル・エンデは、「創造的であるというのは、要するに、人間的であるということにほかならない。」と語りました。井庭研ではさらに、創造的であることは人間的であり、そしてそれは自然(ナチュラル)なことである、と考えています。人為的・作為的な創造行為ではなく、より自然のあり方・かたちに近い創造性のあり方と生き方を探究しています。
【アプローチ】
そのような未来に向けての転換・変化のためには、思想と理論、方法論と道具を駆使していく必要があります。井庭研究室では、「プラグマティズム」などの思想とともに、「システム理論」や「創造性」、「学び」の理論等を踏まえながら、「パターン・ランゲージ」をはじめとする方法論を開発し、さまざまな「メディア」を用いて道具をつくることで、創造的で豊かな生き方ができる社会へのシフトを目指します。
現在、井庭研が用いている方法論 には、1.「パターン・ランゲージ」、2.「ファン・ランゲージ」、3.「スタイル・ランゲージ」、4.「コミュニティ・ランゲージ」、5.「フューチャー・ランゲージ」、6.「コンセプト・ランゲージ」などがあります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
1. パターン・ランゲージ(Pattern Language) は、物事の秘訣や経験則、コツを言語化して共有する方法です。もともとは、建築やソフトウェアのデザイン(設計)の知を言語化する方法として考案・発展してきたものですが、井庭研では人間行為の経験則を言語化する方法として応用してきました。学び、プレゼンテーション、コラボレーション、企画、料理、暮らしのデザインなど、井庭研ではこれまでに30種類以上の領域で1000パターン以上をつくってきました。パターン・ランゲージの使い方については、「対話」のメディアとして用いるということを提案し、実践してきました。いろいろな実践領域のパターン・ランゲージをつくるということは、新しい分野を始める支援をするということで、ソフトな社会インフラをつくっている、と言うことができます。
2. ファン・ランゲージ(Fun Language) は、物事の楽しみ方の言語化です。新しく物事に取り組むということは、なかなか腰が重いものです。それをうまくできるようになるまでは、その本来の面白みは味わうことができません。でも、ちょっとした楽しみ方を知ることで、楽しく実践することができるようになります。どのような楽しみ方をしている人がいるのか、ということを端的な言葉にまとめ、共有することを可能にするのが、ファン・ランゲージです。例えば、「料理の楽しみ方」を Cooking Fun Languageをつくって、料理の楽しみ方を言語化しました。ファン・ランゲージは、パターン・ランゲージのように「うまくやること」の支援ではなく、「楽しむための発想」を支援します。理にかなって調和を生むデザインというよりは、気持ち、感情、心が動くことで、いきいきとした状態を生み出すのです。
3. スタイル・ランゲージ(Style Language) では、その対象における「スタイル」(あり方)について言語化します。それは、ある方向に収斂させようとするためではなく、多様性を保持・増長させるためにつくります。様々なスタイルを表す言葉をつくることで、自らのスタイルを語りやすくなるとともに、自分では思いつかないようなスタイルを知ることができるようになります。また、多様なスタイルが言葉になっていることで、同じようなスタイルを求めている人同士のマッチングも可能になります。スタイル・ランゲージは今年度の研究のなかでつくっていく新しい形式のランゲージです。
4. コミュニティ・ランゲージ(Community Language) では、「そのコミュニティらしさ」を言語化します。自分たちが何を大切にしているのか、自分たちらしさは何によって構成されているのかを言葉にします。 コミュニティ・ランゲージでは、具体的すぎない「適度な抽象化」をした言葉で「自分たちらしさ」を把握することで、これまでの具体的な事例に囚われずに、自分たちらしく「新しさ」を取り入れる支援をします。「自分たちらしさ」を持ちながらも、具体的なレベルでは新しいことを実現できるのです。それにより、多くの企業や学校、自治体が、自分たちらしく新しいことを始めることを支援します。
5. フューチャー・ランゲージ(Future Language) は、未来のヴィジョンを言語化する方法です。コミュニティや組織の未来像、あるいは、これからつくる場やイベントなどのアイデアを出し、それらを語るための言葉をつくります。パターン・ランゲージは何かを生み出すために「どうするとよいのか」を考える支援する方法ですが、それによって何を生み出すかは、各自の具体化に任されています。フューチャー・ランゲージでは、どんな未来をつくるかを、複数人・多人数で協働的に話し合い、明示化して共有することができます。フューチャー・ランゲージによって、協働的な未来づくりが支援されます。
6. コンセプト・ランゲージ(Concept Language) は、理念や考えを言語化する方法です。組織やコミュニティ、社会に対して共有したい理念・考えがあり、そのままでは伝わりにくい場合に、相互にゆるやかにつながった小さな単位の言葉にすることで、共有しやすくします。コンセプト・ランゲージは、パターン・ランゲージと同じ形式で記述され、使い方も似ています。しかしパターン・ランゲージは、これまでに実践され、良いとわかっている成功事例に潜む共通パターンを言語化するのに対して、コンセプト・ランゲージはこれまでに実践されているとは限りません。新しい環境やテクノロジー、新しい組織体制など、これまでと前提条件が異なる状況で、大切なことを共有したいというときに、コンセプト・ランゲージが有効です。
このように井庭研には、 自発性と個性を重視しながらポジティブな変化を促す ための方法が揃っています。デザイン・行為のパターン・ランゲージ、楽しみ方のファン・ランゲージ、多様性のスタイル・ランゲージ、自分たちらしさのコミュニティ・ランゲージ、未来ヴィジョンづくりのフューチャー・ランゲージ、理念・考えの浸透のコンセプト・ランゲージ、 - これらに加えて、 ワークショップ を設計・実施したり、日常の環境に埋め込むための 新しいメディアのデザイン なども行うことで、よりナチュラルでクリエイティブな生き方を支援し、そのための社会の変化を促すことに取り組んでいきます。
【運営方針】
2017年春学期から、井庭研メンバー全員ですべての研究を行うという体制になりました。 縦割りの「プロジェクト」がいくつも並行して動くというスタイルをとらず、井庭研全体がひとつの大きなチームになり、いろいろな研究に取り組むということです(20数人での大規模なグループワークのイメージです)。
つまり、井庭研に入ると、上述の具体的テーマのなかのどれかを選ぶというのではなく、すべての研究に取り組むことになります。研究のなかには、あるテーマのパターン・ランゲージをつくるというものもあれば、ファン・ランゲージをつくるものもあります。また、あるパターン・ランゲージを現場に導入するという実践もあれば、理論や思想を深める研究や、新しいメディア表現に挑戦するということもあります。そういった多様な研究に全員が関わり、刺激し合い、一緒にいろいろな経験を積んでいきます。
井庭研の大きな特徴として、学部生でも自分たちの研究成果を論文にまとめ、国際学会で数多く発表しているということがあります。例えば、2016年は、計26本の論文を書き、それを台湾、イタリア、ドイツ、アメリカで開催された国際学会で発表してきました。そのほとんどの論文は、学部 2年生~4年生によって書かれています( →2016年 発表論文リスト )。2017年度はドイツ、アメリカ、オーストリア、カナダで国際学会発表を行うことになっています。
また、研究成果を書籍として出版することもあります( →2016年 書籍出版リスト )。井庭研では、そのくらい本格的に研究・実践に取り組んでいます。まさに、井庭研がSFC生活の中心となるような活動量です。そういう本格的な研究・実践に一緒に取り組みたいという人を募集します。
2017年度は、花王株式会社、クックパッド株式会社、UDS株式会社、株式会社 有隣堂 等と共同研究を行なっており、実際に世の中への変化を生み出す研究に取り組んでいます。
【あらかじめ読んでおいてほしい必読文献】
井庭研の研究をさらに理解するために、 『プロジェクト・デザイン・パターン:企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32』 (井庭 崇 , 梶原 文生, 翔泳社, 2016)や 『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』 (井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)は読んでおいてください。 『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』 (井庭 崇 編著, 宮台 真司, 熊坂 賢次, 公文 俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)の第2章(熊坂さんとの対談)も、井庭研で大切にしていることを知ることができるので、ぜひ読んでみてください。
【履修条件】
【その他・留意事項】
【授業スケジュール】
【評価方法】
研究・実践活動への貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。
【エントリー課題】
7月23日(日)までに、指定の内容を書いたメールを提出してください。7月26日(水)もしくは27日(木)に面接を行う予定です。
エントリーメールの提出先: ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp ([at]を@に変えてください)
メールのサブジェクト(件名): 井庭研A(2017秋) 履修希望
以下の内容を書いたファイル(PDF、Word、もしくはPages)を、メールに添付してください。
井庭研A(2017秋) 履修希望
1. 氏名(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
2. 自己紹介(イメージしやすいように、適宜、写真や絵などを入れてください)
3. 日頃の問題意識と興味・関心
4. 井庭研の志望理由と意気込み
5. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
6. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
7. これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
8. これまでに所属した研究会と、来学期、並行して所属することを考えている研究会(あれば)
【教材・参考文献】
2016年度からの継続メンバーは、最近、以下の本を読んでいます。これらの本も含め、いろいろと読んでいくことになります。
他の重要論文には、例えば、以下のようなものがあります。
クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989)
ほか
井庭研だより | - | -