【論文公開】「無我の創造」(Egoless Creation)とパターン・ランゲージ
2018年3月1・2日に早稲田大学で開催される国際学会AsianPLoP2018 (7th Asian Conference on Pattern Languages of Programs)でいくつか論文(日本語)を発表する(ライターズ・ワークショップにかける)のですが、その論文、これまでにないかなり面白いものが書けたと思っています。そこで、ここでも紹介したいと思います。(このブログでは、僕がファーストオーサーの論文3本だけ紹介しますが、この他にも、創造的読書のパターン・ランゲージやパターン・アプリなど、井庭研の成果の論文も発表されます。)
最初の論文は、「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」です。ここ数年僕が興味をもってきたテーマを扱った本格的な論文です。「無我の創造」(egoless creation)とは、自分の身体や感覚を総動員して全身全霊で取り組むが、「こうしてやろう」という作為を生む自我を抜く創造のことです。この論文は、パターン・ランゲージが無我の創造を可能とするためのメディアとしてどのように機能するのかをシステム理論的に明らかにするという論文なのですが、その説明の過程で、作家が「登場人物が勝手に動き出す」と言っているはどういうことかという話や、仏教のマインドフルネスの話なども交えるという"すごい"論文です(しかも32ページの大作!)。ぜひお楽しみください!
「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」
(井庭 崇)
Abstract:
本論文では、パターン・ランゲージの思想のなかでも最も重要であるが、見過ごされがちであり胡散臭いものだと片付けられてしまいがちな、自我を入れない創造のプロセスについて論じる。アレグザンダーは、デザイナー個人の能力ではなく、個々人のレベルを超えた生成的なメカニズムを見据え、それにもとづく創造を重視した。本論文では、アレグザンダーが主張していることは、物語作家たちが「物語をつくるときには、自分がつくっているというよりも、登場人物が自律的に動き、物語自身が展開していく」と語っていることに共通点があるとして、それを「無我の創造」(egoless creation)という概念で捉える。ここでいう「無我の創造」とは、自分の身体や感覚を総動員して全身全霊で取り組むが、「こうしてやろう」という作為を生む自我を抜く創造のことである。そして、その無我の創造では何が起きているのかを、オートポイエーシスのシステム理論である社会システム理論と創造システム理論から考察する。その結果、無我の創造とは、創造システムでの発見の生成・連鎖の結果を、心的システムが「体験」しているということだと捉えることができる。このとき、仏教の瞑想におけるマインドフルネスの状態と類似した状態になっていると考えられる。そのような無我の創造を可能とするのが、パターン・ランゲージである。再び、システム理論の概念で考えるならば、パターン・ランゲージのパターンは、創造システムにおける発見の選択を支援するための発見メディアであるとともに、言語として心的システムと社会システムを構造的カップリングさせる機能をもつ。本論文では、このように、近代的思考の感覚からすると理解しがたい「無我の創造」について、システム理論で捉え直すという新しい道を拓いた。
井庭 崇, 「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」, 7th Asian Conference on Pattern Languages of Programs(AsianPLoP2018) , 2018
論文PDF: http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/papers/AsianPLoP2018_EgolessCreationWWS.pdf
この論文に興味を持っていただいた方は、ぜひ、3月1・2日に早稲田大学で開催される国際学会AsianPLoP 2018 (7th Asian Conference on Pattern Languages of Programs)にお越しください。そこでライターズ・ワークショップという場が設けられ、この論文について語り合う時間があります。ぜひ、事前登録の上、ご参加ください。
最初の論文は、「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」です。ここ数年僕が興味をもってきたテーマを扱った本格的な論文です。「無我の創造」(egoless creation)とは、自分の身体や感覚を総動員して全身全霊で取り組むが、「こうしてやろう」という作為を生む自我を抜く創造のことです。この論文は、パターン・ランゲージが無我の創造を可能とするためのメディアとしてどのように機能するのかをシステム理論的に明らかにするという論文なのですが、その説明の過程で、作家が「登場人物が勝手に動き出す」と言っているはどういうことかという話や、仏教のマインドフルネスの話なども交えるという"すごい"論文です(しかも32ページの大作!)。ぜひお楽しみください!
「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」
(井庭 崇)
Abstract:
本論文では、パターン・ランゲージの思想のなかでも最も重要であるが、見過ごされがちであり胡散臭いものだと片付けられてしまいがちな、自我を入れない創造のプロセスについて論じる。アレグザンダーは、デザイナー個人の能力ではなく、個々人のレベルを超えた生成的なメカニズムを見据え、それにもとづく創造を重視した。本論文では、アレグザンダーが主張していることは、物語作家たちが「物語をつくるときには、自分がつくっているというよりも、登場人物が自律的に動き、物語自身が展開していく」と語っていることに共通点があるとして、それを「無我の創造」(egoless creation)という概念で捉える。ここでいう「無我の創造」とは、自分の身体や感覚を総動員して全身全霊で取り組むが、「こうしてやろう」という作為を生む自我を抜く創造のことである。そして、その無我の創造では何が起きているのかを、オートポイエーシスのシステム理論である社会システム理論と創造システム理論から考察する。その結果、無我の創造とは、創造システムでの発見の生成・連鎖の結果を、心的システムが「体験」しているということだと捉えることができる。このとき、仏教の瞑想におけるマインドフルネスの状態と類似した状態になっていると考えられる。そのような無我の創造を可能とするのが、パターン・ランゲージである。再び、システム理論の概念で考えるならば、パターン・ランゲージのパターンは、創造システムにおける発見の選択を支援するための発見メディアであるとともに、言語として心的システムと社会システムを構造的カップリングさせる機能をもつ。本論文では、このように、近代的思考の感覚からすると理解しがたい「無我の創造」について、システム理論で捉え直すという新しい道を拓いた。
井庭 崇, 「パターン・ランゲージによる無我の創造のメカニズム:オートポイエーシスのシステム理論による理解」, 7th Asian Conference on Pattern Languages of Programs(AsianPLoP2018) , 2018
論文PDF: http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/papers/AsianPLoP2018_EgolessCreationWWS.pdf
この論文に興味を持っていただいた方は、ぜひ、3月1・2日に早稲田大学で開催される国際学会AsianPLoP 2018 (7th Asian Conference on Pattern Languages of Programs)にお越しください。そこでライターズ・ワークショップという場が設けられ、この論文について語り合う時間があります。ぜひ、事前登録の上、ご参加ください。
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