「100年間以上継続利用する」ということは、社会の進化と共に歩むということである。100年後には現在では考えも及ばないような情報システムが構築されていることだろう。そういった情報システムの進化を阻害しないことが重要である。もし生涯カルテが理由で進化を阻害することになれば、患者にとって最良の医療を受けられない可能性があり生涯カルテのメリットを発揮できるとはいえない。
進化を受け入れるために考えられること、第一に基本的なことだがデジタル化することだ。デジタル化とはすべての情報を「1」と「0」の2値に置き換えることであり、この基本は将来どんな媒体になろうとも取り扱えるに違いない。次にシステムとの依存関係が疎であること、依存関係が密であるほどフレキシビリティは低下し、システムの発展の阻害要因となる。システムとの依存関係をなくすために各種アンバンドルを進める必要がある。
・情報技術と情報システムのアンバンドル
・情報技術とベンダー・プロバイダのアンバンドル
・情報技術と知的財産権のアンバンドル
01ヘルスケアとIT: 2007年8月アーカイブ
「生まれたときから利用する」ということは、生まれたての赤ちゃんである本人の意思に関わらず利用が開始されるということである。これまでの感覚からすると、本人の意思に関わらず、母子手帳等の健康記録的な情報は親の元で管理され、医療情報については、医療機関で管理されるのが自然だろう。それらいずれの情報も赤ちゃん本人あるいは子供の間は自身で管理するわけにはいかないので、例えば親権者が情報もしくは情報の所在を管理することになる。そこで問題となるのは、親権者は必ずしも固定されないということであり、また親権者が変わることを想定しなければならないということである。
親権者が管理する場合は、親権者が変わるごとに親権者間で情報の引継ぎをする必要があり、その引継ぎが円滑に行かない場合には、情報が途絶えてしまう可能性がある。医療機関が管理している場合においても、当人がどこの病院かを知ることができなければ情報に到達することは困難である。
行政機関で持つ場合には、制度的には継続して持つことが可能であるが、社会保険の記録紛失にあるように実質面で過度に信頼するのは危険である。
従って親権者と行政機関の双方で管理するのが良いと考える。
別の問題として、自身のルーツに関わる情報が含まれる可能性があり、特に親権とのかかわりや、親権者が変わる場合など子供特有の情報の扱いを考えなければならない。