2007年8月アーカイブ

土屋先生は現在内閣官房における新健康フロンティア戦略賢人会議のメンバーである。
戦略会議の中でも、がん対策の推進を重点においた対策を進められている。

このたび、その活動の一環として山形県鶴岡地区およびその周辺地区を対象としてがん患者に対する緩和ケアを推進するパイロットケースに取り組むこととした。全国各地の候補の中から地域の医療情報化が進んでいる山形県鶴岡地区が良いと考えている。がん患者に対する緩和ケアをどのように進めるべきか、地域としてどのように連携していくかなど、今後日本全体のモデルケースとなるべく、まずは情報収集の取り組みを進める。
がん患者に対してどのように望むべきか、実は医師自体が良く認識していないケースもある。例えばがん患者に対する緩和ケアで医療麻薬を利用しても良いかどうかわからない。過去に学習した既存の知識では、ある症例のがん患者に対して医療麻薬の使用は不可とされているが、最新の医療研究の成果報告によると実は使用可であったりする。それを理解していない医師が実は案外多い。したがってまずは医師への勉強会などを進めることから始める必要がある。今回のパイロットケースでは推進の成果を計るために医療麻薬の使用量の推移を見ることを想定している。緩和ケアの医療技術が浸透すれば使用量は増加するはずである。これら情報を解析するためには医療情報を収集し統計をとらなければならない。そのためには地域の病院や医師会の協力を得て、情報を提供してもらう必要がある。地域の医療情報化が進む山形県鶴岡地区は情報を得やすいと考える。情報提供の協力を得る代わりに、がん治療の講習会を開催するなど、がん治療に関する医療情報を提供する用意がある。その他、がんと宣告された患者や家族のために作成した冊子を提供することも考えている。鶴岡地区の協力による良い成果を期待している。

WiMAXの有効利用を考える上で地域性、モビリティ、ブロードバンド、ブロードキャスト
および双方向性を考慮、期待されるコンテンツを検討する。

地域性: 地域に依存する情報の有効活用
モビリティ: 移動性のある情報の有効活用
ブロードバンド: 大きな情報量への有効活用
ブロードキャスト: 一斉通信への有効活用
双方向性: 個別通信への有効活用

◆ITS(高度道路交通システム)
リアルタイムの道路状況や交通情報など、地域を走行する自動車と
交通管制システムの連携などに利用。
トラフィックカウンタのないエリアのトラフィック情報や
動画によるリアルな状況配信、GPSとの連携サービスなど。
◎地域性
◎モビリティ
◎ブロードバンド
◎ブロードキャスト
◎双方向性

◆地域サービスクーポン(モバイルクーポン)
地域の商業サービスリソースの最適利用としてサービスを
リアルタイムにクーポン化して配信。サービスの過不足を最適化する。
例えばレストランの混雑状況によりクーポンを配信し消費者を誘導、
地域のサービス提供者と消費者双方の受益構造。
病院の混雑状況緩和などにも応用可能。
◎地域性
◎モビリティ
◎ブロードバンド
◎ブロードキャスト
◎双方向性

◆FM放送局
◎地域性
△モビリティ
×ブロードバンド
◎ブロードキャスト
×双方向性

「100年間以上継続利用する」ということは、社会の進化と共に歩むということである。100年後には現在では考えも及ばないような情報システムが構築されていることだろう。そういった情報システムの進化を阻害しないことが重要である。もし生涯カルテが理由で進化を阻害することになれば、患者にとって最良の医療を受けられない可能性があり生涯カルテのメリットを発揮できるとはいえない。
進化を受け入れるために考えられること、第一に基本的なことだがデジタル化することだ。デジタル化とはすべての情報を「1」と「0」の2値に置き換えることであり、この基本は将来どんな媒体になろうとも取り扱えるに違いない。次にシステムとの依存関係が疎であること、依存関係が密であるほどフレキシビリティは低下し、システムの発展の阻害要因となる。システムとの依存関係をなくすために各種アンバンドルを進める必要がある。
・情報技術と情報システムのアンバンドル
・情報技術とベンダー・プロバイダのアンバンドル
・情報技術と知的財産権のアンバンドル

「生まれたときから利用する」ということは、生まれたての赤ちゃんである本人の意思に関わらず利用が開始されるということである。これまでの感覚からすると、本人の意思に関わらず、母子手帳等の健康記録的な情報は親の元で管理され、医療情報については、医療機関で管理されるのが自然だろう。それらいずれの情報も赤ちゃん本人あるいは子供の間は自身で管理するわけにはいかないので、例えば親権者が情報もしくは情報の所在を管理することになる。そこで問題となるのは、親権者は必ずしも固定されないということであり、また親権者が変わることを想定しなければならないということである。
親権者が管理する場合は、親権者が変わるごとに親権者間で情報の引継ぎをする必要があり、その引継ぎが円滑に行かない場合には、情報が途絶えてしまう可能性がある。医療機関が管理している場合においても、当人がどこの病院かを知ることができなければ情報に到達することは困難である。
行政機関で持つ場合には、制度的には継続して持つことが可能であるが、社会保険の記録紛失にあるように実質面で過度に信頼するのは危険である。
従って親権者と行政機関の双方で管理するのが良いと考える。

別の問題として、自身のルーツに関わる情報が含まれる可能性があり、特に親権とのかかわりや、親権者が変わる場合など子供特有の情報の扱いを考えなければならない。

メディヴァの講演から「医療業界における情報化の遅れ」という率直な感想を持つ。医療従事者が医療と情報が融合することにより社会にどれだけ貢献できるか、その価値を良く理解する必要性を感じる。現在の医療業界では、医師、看護士、医療機器および患者が個々に情報を保有し、保有する情報の質や量および情報交換についても十分といえない。メディヴァの試みは情報化により医療従事者の可能性を拡大するものであり、現在の医療に不足する情報問題の解決には大切である。メディヴァの試みの一つである病・診・患連携システムは、「医療機関間」、「地域連携」および「患者間」の3種の情報連携を提案している。その他にも病院経営に関するコンサルティングサービスや医療従事者を中心としたSNS運営などいずれも医療に情報を融合するものであり、医療業界における情報価値向上を追及する活動である。
 医療業界において情報の流れは大学病院、医師、看護士そして患者といった上流から下流へと流れる一方向の流れが前提でありトップダウン方式あるいはコンピュータでいえばホスト、サーバおよびクライアントの関係に近い。今後はボトムアップの情報の流れを含めWeb2.0の概念にあるようにクライアントも情報発信者となるようなSNS的情報交流により情報の活性化を生み、医療従事者および患者あるいは健者までも含め相互に情報化の恩恵を受けるべきと考える。そのためには、これまで遅れている情報の蓄積および蓄積した情報の解析による新たな知識創出のサイクルを確立すべきであり、電子カルテやレセプトなどデジタル情報として再利用可能な形式で情報蓄積を進めることは、情報化による恩恵の効果拡大を期待できる。医療関連情報においては、個人情報の秘匿性といった医師と患者の関係といった垂直方向の情報連携を必要とする一方で、医師同士あるいは患者同士の情報連携といった水平方向の情報連携を必要とする。言い換えると垂直方向のクローズドな情報連携と水平方向のオープンな情報連携の2種類の情報連携が必要である。各々の特徴として、垂直方向は医師と患者のように異なる立場の関係者間の情報連携により「情報を行使する場」であり、水平方向は医師同士あるいは患者同士といった同じ立場間の情報連携により「情報のクレジットを得る場」であり。医療情報は生命に関わる可能性があり慎重に扱う必要がある。しかし電気、水道、交通などインフラ事業においても情報化なしでは事業実現困難なほど情報化は浸透しており、医療分野においても情報化に臆病である必要はないと考える。メディヴァではさらに一歩進みカルテ開示を条件にするなど積極的に情報を活用しており、医療と情報の融合による価値創造を実践する貴重な存在であると認識する。今後の活躍を期待したい。

「鶴岡では、病院間で対立するようなことはやめましょう。患者を奪い合うと言うような発想ではなくて、地域として良い医療を提供するためにお互いに協力しましょう。」鶴岡地区医師会の中目会長が庄内医療生活協同組合鶴岡協立病院の先生へ、このような呼びかけをしている場に幸運にも居合わせることができました。

山形県の鶴岡地区は全国でもまれな地域医療情報システムを運用している地域です。
鶴岡地区では鶴岡地区医師会が運用するNet4UというIT活用による医療を中心としたネットワークを構築し地域内の病院、医院、訪問看護ステーションとの間で情報交換し地域医療連携を実践しています。
1地域1患者1カルテを実現し医療の効率的な提供、また病院・医院と訪問看護ステーションの情報連携により主治医と看護、介護が一体となったより質の高い在宅医療を目指し構築されたNet4Uについて地域の先生方が自信に満ちた笑顔で話してくれます。当初、経済産業省による「先進的IT活用による医療を中心としたネットワーク化推進事業」に参画し開発を進め、現在では鶴岡地区の約70%の病院、医院が加入していると言います。

中目会長は、「鶴岡地区がNet4Uを成功できたのは要因の一つとして、システムを運用するに当たり十分な資金を持っていたからではないか。」ともいいます。日本全国の多くの地域で政府の予算を利用して開発したものの、その後の運用に問題があるケースが多くありますが、これらは運用コストが大きくのしかかっていることも少なくありません。Net4Uも現在ではそれなりの運営をしていますが、立ち上げた当初は年間にわずかな利用者しかない状況だったそうです。それでも継続するだけの資金が医師会にあったから現在の運用まで進められたようです。
今日、医師会の役目が疑問視されることもありますが、鶴岡の場合は、病院同士ではできなかった医療連携を医師会が資金的にも人的にも推進役となり情報化による医療リソース連携を実現している大変貴重な例です。今後も地域で役に立つ情報化を進めることと期待します。

千葉県鴨川市に所在する医療法人亀田メディカルセンター(以下亀田病院)の視察リポート。
亀田病院では、院内で共通利用できる電子カルテシステムを開発、運営している。当初はIBMとの共同開発により始めプロトタイプの設計だけでも2~3年を費やし94年秋に入院病棟を最初に立ち上げた。その後病院の関連会社を設立し現在では14名のITスタッフが在籍し独自開発している。システムは200床以上の規模の病院で一般的に適応できるようパッケージ化されており、300~400床程度の病院を対象に販売、関西方面の病院では好評だそうである。亀田病院の電子カルテシステムの特徴は、他の大学関係では科毎のカルテであるのに対し「1患者1カルテ」としていることだ。亀田病院では1患者1カルテをシステム導入以前より実現していたことから電子カルテシステムの導入もスムーズに実現できた。また現在では患者に対しカルテ開示するPLANETというサービスの提供をしているが、患者を中心とした1患者1カルテによる情報開示は患者側にも有益である。
電子カルテシステム導入の経緯について、そもそも入院のカルテと外来のカルテは事業所毎になければいけなかったが亀田病院は別事業所となっていることから、カルテを統合するためには電子化は必須であった。しかし導入にあたり医者の反対が多く理事長の海外出張中に導入延期となるなど混乱もあったが、理事長の主導により導入予定日に間に合わせた経緯もある。
システム導入後の運営における亀田の特徴として、一度作成したシステムをフレキシブルに変更できる体質だ。開業当初は週に3、4回プログラムが変わるほどフレキシブルに対応した。病院内では合理的に考えられる体質が上から下まであり、電子カルテ改善委員会を設置し意見を反映、システム導入への準備および導入後の改善へと成果をあげている。亀田病院の先生方からもそのフレキシブルさが伝わってくる。「電子カルテは生きている。生き物だ。理論は当然変わる。変化に応じて医療情報を変えるものだと感じている。無論造り変えて、使いにくくなる部分もあるのは当然である。しかし自分も病院の一員で、この病院が良くなって欲しいと思う人がメジャーである。院内でこのような考えを持つ背景には、経営者が情報に明るいこと、そして声の大きさに偏らない合理的な体質があるからだ。」そう発言する自身に満ちた先生が印象的であった。

(補足) 亀田病院の関連会社で電子カルテASP事業をする株式会社アピウスは資本金4.8億円で各種ベンチャーキャピタルが出資しており、株式上場を視野にいれた亀田病院経営者のモチベーション向上に貢献していると推測する。

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