2005年7月アーカイブ
何事もなく台風は過ぎ去り、寝坊せず起きることもできた。
台風が接近してきている。これから夕方までキャンパスでイベントがあるが、聴衆はあまり集まらないに違いない。夜は嵐の中のキャンパスに泊まり込んで他の教員たちと合宿である(このキャンパスの伝統の一つが合宿好きだ)。そして明日は修士論文の最終発表がある。きっと発表する学生たちも徹夜だろう。
最近話題になっているRichard Floridaが「A dire global imbalance in creativity」という文章をFT.comに寄稿している。
才能の赤字(talent deficit)は双子の赤字に続く米国の第三の赤字だそうだ。
「日米防衛協力の変容と非伝統的安全保障」というシンポジウムに出た。お世話になった安倍フェローシップに恩返し。最近はインターネット系の会議ばかりだったから新鮮だった。隣に座ったステイプルスさんは米軍のコマンダーだし、ヒルさんは六カ国協議の当事者だ。おまけに番匠さんの話まで聞くことができた。
しかし、私は相変わらずの馬鹿話で、ギークが安全保障にも影響を与えていますよと話してきた。Google Earthのデモを見せたらぎょっとしている人が多かった。ナショセキュ(安全保障)の人たちはネットの世界のイノベーションがあまり見えてないのかもしれない。
今回初めて知ったのだが、モーリーン&マイク・マンスフィールド財団のフェローシップというのがあって、米国の政府官僚が2年間日本の役所や政治家の事務所で研修できるとのこと。このフェローシップでは来日前に1年間日本語のレッスンがあるそうで、ステイプルさんもヒルさんも日本語が達者だ。いい制度だと感心した。
国際交流基金日米センターの皆さんの段取りも良くて、いいシンポジウムだった。でも疲れるので、今度は聴衆として行きたい。
今週で授業がおわり、妻が旅行に出ているので独身生活を満喫できるはずだったが、やたらと用事が入っていて、朝から晩まで出かけている。おかげで外食続きだ。
今日は、朝の用事を済ませ、午後はJASRAC(日本音楽著作権協会)を学生と訪問。JASRACはなにかと悪者扱いされることが多いが、アーティストたちの権利を守るための非営利組織だ。ビデオを見せていただいたり、データベース構築の手順を教えていただいたり、議論の時間をとっていただいたりしていろいろ学んだ。
夜は著作権関係の研究会。明日は朝9時から大学で用事だ。
昨日、市ヶ谷にあるDNP(大日本印刷)の工場見学をさせてもらった。市ヶ谷という東京のど真ん中に大きな工場がある(それも防衛庁の隣だ)。原稿の入稿からハンコと呼ばれる版下の作成までは電子化がだいぶ進んでいる(あれだけマックが並んでいる場所は初めて見た)。しかし、印刷から製本までは轟音鳴り響く工場の中で行われる。25年前の機械が現役で動いている。それよりいい機械が出てこないそうだ。電子化がいくら進んだとしても、印刷業は設備産業であることがよくわかった。
かつて印刷工場は政治的パワーを握っていた。ビラや政治パンフレットを印刷し、大衆を動かすことができたからだ(レッシグ著『FREE CULTURE』ではイギリスの印刷屋がコピーライトを独占していた様子が書かれている)。印刷業は創発的な現象が起きるきっかけを作っていたとも考えられる。今はそれが電子媒体へ移ってきているのだろうが、10万枚、20万枚と一気に紙をすることができるのはやはりパワーだという気がした。
しかし、DNPは従来型の印刷に加えて、RFIDなどのハイテク化を進めている。ちなみにこういうイベントも(SFC生向け)。
http://www.kri.sfc.keio.ac.jp/collaboration/seminar050726.html
ミニトマトはどうしたと聞かれるのでレポート。実はびっくりする勢いで成長しており、植木鉢とのバランスが悪いらしくて先日風でひっくり返った。かわいそうだが飛び出ている枝を落とすようにしている。初収穫はとっくに終わっているのだが、すでにたくさん実がなっている。別の鉢に植えたシソ、バジル、パセリもジャングルのようになってきた。
学生たちと靖国神社を見に行く。別に定見があるわけでもないのだが、何事も自分で確かめてからでないと。
確かに大鳥居は大きかったが、神社そのものはそうでもなかった。桜の季節はきれいだろう。もうすぐお祭りがあるらしく、参道にたくさんの提灯が飾り付けられている。それぞれに名前が書いてあるが、おそらく寄付をした人の名前なのだろう。膨大な数だ。この提灯の数を見るだけでも、マスコミには出てこない多くの人々が靖国神社を支持していることが分かる。
脇にある遊就館には零戦が置いてある。ただ、どこの国に行っても軍事博物館はあり、国際比較で見てみれば、大して差はないだろう(自己正当化という点では米国のNSAの国家暗号学博物館のほうがよほどどぎつい)。
遊就館の展示の最後のほうにある戦没者の写真や遺書を読むと、日本兵も普通の人たちであり、大事な家族がいたことが分かる。分からないのは、なぜ国家は彼らにあんな戦争に行かせたのかだ。50分間放映されるビデオでは、戦わずして負けるよりも、戦って負ける方が民族の誇りを保てると主張していたが、戦わずして勝つ方法を考えるべきだろう。
この図は、展示資料の一つだ。石油76.7%、鉄類66.9%を依存している相手に戦争を仕掛けるのは普通ではできない。自国の置かれた位置をどれだけの人が理解していたのだろう。
ロンドンで嫌な事件が起きた。クリエイティブ・コモンズの関係者は無事だという連絡が入っている。
サミットのタイミングをねらったものだとしても、これは大西洋の反対側にも影響を与えそうだ。米国議会はパトリオット法のサンセット条項(今年中に期限が切れる)を恒久化するかどうか議論している。もちろん、ブッシュ政権が恒久化しようとしている。
それに対し、ACLU(米国自由人権協会は)反対の署名を7月20日までに10万人分集めるキャンぺーンを開始した。
http://action.aclu.org/Petition1
パトリオット法の条項は、何の疑いもないのに医療記録、納税記録、図書館で借りたり書店で買ったりする本の記録まで、政府が調べることができることを認めている。テロリストとの関係が明白でなくても家宅捜索を無断で受けることがあるし、それが秘密裏に行われることもある。本当にこんな条項は必要なのかなあ。
浜村さんのブログで紹介されていたり、友人からメールで教えてもらったりしたGoogle Earthをようやく試す(私はマック・ユーザーなのだ!)。
IMINTをデスクトップにっという感じ。ワシントンDCで住んでいたアパートもばっちり見つかった。