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2010年09月 アーカイブ

2010年09月08日

SFCフォーラム「これからの日本づくり」(9月3~4日)

 処暑とは思えない暑さのなか、涼と学びを求めて箱根に上がってきました。


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 今回の目的は、企業人が集まる「SFCフォーラム 経営サロン」合宿での講演でした。

 私のお題は民主党と政治主導。「政治主導を問い直す―歴史的経験知からのアプローチ」と題して報告させて頂きました。
 政治主導、官僚主導、内閣主導、官邸主導といったことばを整理しながら、その歴史的経緯から現状を論じたところ、実際にそれらの分野で活躍された方々から多くのコメントを頂くことができました。これまでの政治学分野での研究報告とはかなり違った向きの議論になり、有益でした。

 何より楽しかったのは、同僚他分野の仲間の報告が聞けたこと。普段から親しくしている同僚が展開する最前線での議論は、さまざまな意味で新鮮でした。やはりここは本当に時代を拓くキャンパスなのだと改めて実感。そこで議論をできることの幸せを感じました。政治史、ユビキタス、プロボノ、パターン・ランゲージ。融合できたら本当に素敵です。

 悔やまれるのは、深更まで話し続けて温泉に漬かれなかったことでしょうか。また改めて、ゆっくり行きたいものです。


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 帰途、同僚に連れて行ってもらった蕎麦屋が小田原にあった山県有朋の邸宅「古稀庵」の離れを移築したお店(暁亭)でした。古稀庵の跡地には一度行ったことがあるのですが、某損保の保養所になり、門と庭は当時のままでしたが建物がなく寂しく思ったものでした。後日、政治家の別荘を研究している同業先生に伺ったところ、古稀庵の建物のうち、少なくとも本館と洋館は関東大震災で全壊したとのこと。この離れがそれ以前のものか、以後のものか気になるところです。
 

2010年09月11日

吉野作蔵記念館人材育成研修会(9月4~6日)

 箱根から戻った翌日、宮城に向かいました。吉野作造記念館「人材育成研修会」に参加するためです。この企画ももう4年目。私のなかではすっかり晩夏の恒例行事になりました。


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 私は箱根との兼ね合いで2日目からの参加になったのですが、初日のシンポジウム「吉野作造と現代」(『毎日新聞』記事へのリンク)がなんとも豪華。基調講演は御厨先生の「日本に政党政治は根づくのか-党名の政治学」。自由、民主といった人を惹きつけるワーディングから論を展開。これに猪木武徳先生、阿川尚之先生、苅部直先生に、奈良岡聰智さんがコメント、討論。ちょっと東京でもないメンバーです。聞けなかったのが悔やまれます(後日、DVDが送られてくるので、ゼミ生のみなさん、一緒に見ましょう)。


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 2日目、午前中に小川原正道さんによる報告のあと、午後すぐに「吉野作造と大正の公論空間」と題して発表させて頂きました。参加者は上記の先生方に加えて、東北大から12名、慶應から6名、京大から3名の学生のみなさん。先生方を中心にたくさんのコメントをいただき、活字にしてみようかと思えるところまでたどり着きました。政治史、日本史、思想史の合同セッションだったことによる益が大だったように思います。文献調査も進み、ありがたい機会でした。

 気にかかったのは、学生のみなさんの質問が「答え」を求める一方的なものになっていて、対話が意識されていないことでした。一方的に「授業」を受けることが多いでしょうか。一方通行では、公論空間はできませんよね。後半は、このあたりがうまく回ったように思います。

 しかし何よりこの企画には記念館のみなさんが多くの力を注いでくださっていることがありがたい。みなさまのご尽力に、心から感謝したいと思います。ありがとうございました。

 仙北の沃野では稲穂の波が太陽に輝いていました。もう秋ですね。


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2010年09月21日

「民主党執政後日本政治、経済と外交政策の転変」学術検討会

 政治大学国際関係研究中心で開催される表記シンポジウムで報告するため、台湾に行ってきました。

 が、折悪しく台風11号が直撃し、シンポジウムは中止。日本では台風で研究会議が中止になることはあまりありませんが、台湾は南国です。風雨は東京のそれとは比べものになりません(でした)。被害を押さえるため、台風が襲来すると自治体の判断で出勤停止、通学停止(停班停課)の決定がなされるそうです。

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 国際シンポジウムは残念ながら中止となってしまいましたが、そのおかげで日本側の研究者のみなさんとゆっくり意見交換することができました。これはこれでありがたい時間。戒厳令下のような街をみることができたのは、貴重な体験でした。

 翌20日は、台風も通り過ぎ「上班上課」。半年ぶりに政治大学歴史系の友人たちと会い、研究相談、意見交換をして帰国しました。お世話になったみなさん、ありがとうございます。

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 10月末には、羽田―台北(松山)線が就航するそうです。現在の成田―台北(桃園)はいずれも郊外にある空港。日本で1時間、台湾で1時間の短縮は大きいですよね。MRTに直結しているのもうれしいです。

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 さて、これから恒例のインゼミです。
 

「辛亥革命と日本の反応―『崛起する中国』と近代日本」

 shikkoku.jpg 小林道彦・中西寛編『歴史の桎梏を越えて―20世紀日中関係への新視点』(千倉書房、2010年)

 「辛亥革命と日本の反応―『崛起する中国』と近代日本」と題する論文を書きました。上掲書に所収されています。

 1911(明治44)年10月、日本は中国(清王朝)で起きた革命を、ある特殊な感覚を持って迎えました。日清戦争を経て日本は古代から模範としてきた中国を「乗り越えた」と理解していました。
 その中国で起こった共和政革命は、中国にとっての明治維新となるのか。むしろ、立憲君主制えを取る日本を越えて共和政になることは、東アジアにおける近代化レースの中で日本が追い抜かれることになるのではないか。
 そうした日本のとまどいをよそに、革命は進行していきました。崛起する中国にどう向き合うのか。近代日本は大きな課題に直面することになります。

 本稿では、新聞10紙、雑誌10誌の論調を追うことでこのテーマに世論レベルでアプローチしました。中国のめざましい発展を日本人はどう捉えたのか。今後も研究課題のひとつとして、このテーマに取り組んでいきたいと思います。ご高覧、ご批評いただければ幸いです。

 この原稿は、当初、小島朋之先生への追悼として書いたものでした。「崛起する中国」というサブタイトルも先生のご著書から頂いたもの。先生の口癖は「いいんじゃない?」。お元気であったら、そう言ってもらえたでしょうか。

 同書には、編者のおふたりのほか、多くの方の力が入った論文が並んでいます。静かに、しかし深く語りかけてくる一冊だと思います。

 それにしてもこの装丁、相変わらず凝っていますね。さすがです。
 いい顔の本。うれしいです。

<以下、目次。出版社のサイトから>
序論―小林道彦・中西寛
第Ⅰ部 分岐する運命―帝国日本と革命中国
 第1章 伊藤博文の中国観―立憲政友会創設期を中心に―瀧井一博
  1 国制としての立憲政友会
  2 立憲政友会への旅―明治三二年の憲法行脚
  3 もうひとつの旅―明治三一年の清国訪問
  4 戊戌政変の体験―政治的中国との距離
  5 張之洞との会見―経済的中国との出会い
  6 通商国家戦略としての政友会創設―市場としての中国
 第2章 辛亥革命と日本の反応―近代日本と「崛起する中国」―清水唯一朗
  1 本稿の視座
  2 革命の勃発と日本の反応
  3 講和交渉の進展と中華民国の成立
  4 清朝の滅亡と日中関係の彷徨
  5 近代日本と「崛起する中国」
 第3章 加藤高明と二十一ヵ条要求―第五号をめぐって―奈良岡聰智
  1 日本外交の転機としての二十一ヵ条要求
  2 第五号はいかにして提出されたのか
  3 第五号の作成過程
  4 第五号の秘匿
  5 第五号はいかなる波紋を及ぼしたのか
  6 海外メディアの反応
  7 イギリスの反応
  8 暗礁に乗り上げた交渉
  9 二十一ヵ条要求への新視点
 第4章 第一次世界大戦後の中国をめぐる日米英関係―大国間協調の変容―中谷直司
  1 大戦の終結と日中関係の決裂
  2 日米関係の変化―パリ講和会議
  3 日英関係の変化―新四国借款団の結成交渉
  4 「ワシントン体制」の成立と中国をめぐる国際政治の変容
 第5章 王正延の外交思想―高文勝
  1 王正延の文明観
  2 王正延の国際認識
  3 王正延の外交観
  4 王正延の不平等条約撤廃
  5 王正延の対日構想
 第6章 危機の連鎖と日本の対応―朝鮮・満州・「北支」・上海一九一九~一九三二―小林道彦
  1 ワシントン体制と朝鮮要因
  2 朝鮮統治の動揺と張作霖の中原進出
  3 政友会積極外交の迷走
  4 経済外交と朝鮮自治論
  5 危機の連鎖―朝鮮・満州・「北支」
  6 朝鮮独立運動と第一次上海事変
  7 新たな危機と体制の立て直し
第Ⅱ部 冷戦下の変容―帝国の解体から国交正常化へ
 第7章 トルーマン政権の極東政策―長尾龍一
  1 トルーマンの登場
  2 ポスダム宣言
  3 マッカーサー
  4 国共内戦と米国
  5 トルーマン政権と中国―アチソン外交
  6 マッカーシズム
  7 結語
第8章 ポーレー・ミッション―賠償問題と帝国の地域的再編―浅野豊美
  1 米国による賠償政策の起源
  2 賠償と日本人引揚命令―極東委員会成立をめぐって
  3 帝国の分割と在外財産活用による地域形成―米国による帝国再編構想
  4 終わりに―帝国の地域的再編の手段としての賠償
 第9章 戦後日本における華僑社会の再建と構造変化―台湾人の台頭と錯綜する東アジアの政治的帰属意識―陳來幸
  1 東アジアの冷戦と華僑社会
  2 戦後における在日華僑社会の再建
  3 華僑民主促進の成立と朝鮮戦争による情勢の変化
 第10章 日中国交正常化交渉における台湾問題一九七一~七二年―井上正也
  1 台湾問題をめぐる日中関係
  2 佐藤政権の対中接近の模索と挫析
  3 田中角栄訪中への道
  4 日中国交正常化交渉と台湾問題
  5 台湾問題をめぐる暫定協定
第Ⅲ部 歴史像の転換―二一世紀日中関係の礎
 第11章 体制変革期における日本と中国一九二七~一九六〇年―中西寛
  1 体制変革という視点
  2 一九二七、八年の日中関係
  3 日本の降伏と象徴天皇制の選択
  4 安保改定をめぐる騒乱と体制競争の決着
  5 「革命と戦争の世紀」としての二〇世紀東アジア
 第12章 歴史は鑑か鏡か?―国際比較の中の日中歴史教科書―等松春夫
  1 分断された記憶
  2 南京虐殺事件―事例研究1
  3 真珠湾攻撃―事例研究2
  4 戦時下の強制労働(「従軍慰安婦」問題を含む)―事例研究3
  5 満洲事変―事例研究4
  6 東京裁判(および靖國神社)―事例研究5
  7 教科書の叙述の背後にあるもの
 第13章 「中国の台頭」と国際秩序―浅野亮
  1 「中国の台頭」への分析視座
  2 アジア秩序の変容と中国の役割
  3 秩序形成の行方
 結論―小林道彦・中西寛
 あとがき
 主要人名索引

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