井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

新規メンバー募集!井庭研A:Natural & Creative Living Lab(2020春)シラバス

井庭研Aシラバス(2020年度春学期)
Natural & Creative Living Lab - 未来をつくる言葉をつくる

[ 地球温暖化 / スタートアップ(ベンチャー起業) / 自分らしく生きる / エシカル・イノベーション / 自然と創造性のまちづくり / 創造的マネジメント ]
担当:井庭 崇(総合政策学部教授)
研究会タイプ:A型(4単位)

2020年1⽉16⽇(木)6限:井庭研説明会 @ κ12
2020年1⽉19⽇(日):エントリー〆切
2020年1⽉21日(火)・23日(木):面接
2020年1月25日(土):2019年度最終発表会(履修希望者は原則参加)@ τ11

以下の6プロジェクトのメンバーを募集します。

(A)「地球温暖化 - CO2ネットゼロの暮らしのデザイン」プロジェクト
(B)「スタートアップの実践知」プロジェクト
(C)「自分らしく突き抜ける生き方」プロジェクト
(D)「エシカル・イノベーション」プロジェクト
(E)「NaturalとCreativeの出会う場所のつくりかた」プロジェクト
(F)「クリエイティブ・マネジメント」プロジェクト

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【研究テーマ】
井庭研では、情報社会の次に来るこれからの社会を「創造社会」(Creative Society)と考え、創造的で豊かな生き方を実践・支援するための研究を行なっています。

井庭研で 「創造的」(creative) というとき、それは「発見の連鎖」をつないでいくということを意味しています。日常的な創造性でも、専門的な創造性でも、小さな発見が次々と生じているような状態を「創造的」だと捉えます。そのような「発見の連鎖」が起きている状況では、つくり手も想定していなかったような展開が生まれ、その経験を通してつくり手は変化・成長します。つくることは探究することであり、学ぶこと、そして変化することなのです。

このような創造的な活動がいろいろな分野で起きやすくなるための支援の研究が、井庭研で取り組んでいることです。具体的にどのようなテーマの研究を行うのかは毎年変わります(2020年春学期に予定しているプロジェクトについては、下記の【プロジェクト】を参照)。

井庭研では、 一人ひとりがもっている自然な創造性(ナチュラル・クリエイティビティ:Natural Creativity)の力を信じ、それがより発揮されることを目指しています。かつて、作家のミヒャエル・エンデは、「創造的であるというのは、要するに、人間的であるということにほかならない。」と語りました。井庭研ではさらに、創造的であることは人間的であり、そしてそれは自然(ナチュラル)なことである、と考えています。人為的・作為的な創造行為ではなく、より自然のあり方・かたちに近い創造性のあり方(無我の創造)と生き方を探究しています。


【アプローチ】
そのような未来に向けての転換・変化のためには、思想と理論、方法論と道具を駆使していく必要があります。井庭研究室では、「プラグマティズム」「現象学」「構造主義」などの思想とともに、「システム理論」や「創造性」、「学び」の理論等を踏まえながら、日常的な創造的活動を支援する「パターン・ランゲージ」という「メディア」をつくり、その方法論を開発することで、創造的で豊かな生き方ができる社会へのシフトを目指します。

パターン・ランゲージ(Pattern Language)は、物事の秘訣や経験則、コツを言語化して共有する方法です。もともとは、建築やソフトウェアのデザイン(設計)の知を言語化する方法として考案・発展してきたものですが、井庭研では人間行為の経験則を言語化する方法として応用してきました。学び、プレゼンテーション、コラボレーション、企画、料理、暮らしのデザインなど、井庭研ではこれまでに70種類以上の領域で1700パターン以上をつくってきました。パターン・ランゲージの使い方については、「対話」のメディアとして用いるということを提案し、実践してきました。いろいろな実践領域のパターン・ランゲージをつくるということは、新しい分野を始める支援をするということで、ソフトな社会インフラをつくっている、と言うことができます。

井庭研では、パターン・ランゲージの作成に加えて、ワークショップを設計・実施したり、日常の環境に埋め込むための新しいメディアのデザインなども行うことで、よりナチュラルでクリエイティブな生き方を支援し、そのための社会の変化を促すことに取り組んでいきます。

そして、そのような創造実践の研究活動を通じて、物事への理解を深め、力を養っていく「クリエイティブ・ラーニング」(創造的な学び、つくることによる学び)を実践します。日頃の活動については、井庭研のFacebookグループ(https://www.facebook.com/ilabsfc/)で写真とともに紹介しているので、そちらも併せて見てみてください。


【プロジェクト】
2020年春学期は、以下の6つのプロジェクトが予定されています。

(A)「地球温暖化 - CO2ネットゼロの暮らしのデザイン」プロジェクト
世界全体の平均気温の上昇が産業革命以前に比べ1.5度を超えると、地球上のかなりの変化を引き起こし、人類・暮らしに大きな影響があると言われている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のレポートでは、早ければ10年以内にその1.5度を超える可能性があるという。この地球規模の環境危機に対し、私たちが日常レベルで行動や暮らしを変えることで、その進行を食い止めることはできないだろうか?本プロジェクトでは、国内外での実践事例・研究を調べ、そこから、暮らしを再構築するためのパターン・ランゲージを作成する。

(B)「スタートアップの実践知」プロジェクト
起業家コミュニティとの共同研究により、スタートアップ(ベンチャー起業)の実践の経験則・コツ・秘訣を言語化したパターン・ランゲージを作成する。最終成果物は書籍化する予定。

(C)「自分らしく突き抜ける生き方」プロジェクト
世の中が大きく変わり、人生に対する思いは変わってきても、日本において多くの人が実際に採用する生き方は、依然として昭和の時代からあまり変わっていないというのが現状ではないだろうか。本プロジェクトでは、昔ながらの人生のレールに乗るのではなく、自分らしく突き抜ける生き方をしている方々を研究し、自分らしく突き抜ける生き方のパターン・ランゲージを作成する。

(D)「エシカル・イノベーション」プロジェクト
社会の基盤となるような新しい方法・道具の研究とイノベーション社会実装と普及の方法について、インターネットのWIDEプロジェクトの事例から学び、パターン・ランゲージを作成する(村井純さんとの共同研究)。最終成果物は書籍化を目指している。

(E)「NaturalとCreativeの出会う場所のつくりかた」プロジェクト
ポートランドのまちづくりから学ぶ、コミュニティによるエコでクリエイティブな街のつくり方のパターン・ランゲージを作成する(元・ポートランド市開発局の山崎満広さんと共同研究)。山崎さんは『ポートランド:世界で一番住みたい街をつくる』や『ポートランド・メイカーズ:クリエイティブコミュニティのつくり方』の著者でもある。最終成果物は書籍化を目指している。

(F)「クリエイティブ・マネジメント」プロジェクト
魅力的な事業コンセプト、メンバーの強みを活かした組織づくり、創造的人材育成などのクリエイティブ・マネジメント(創造的経営)のパターン・ランゲージを作成する(UDS株式会社との共同研究)。『プロジェクト・デザイン・パターン』と『おもてなしデザイン・パターン』に続くパターン・ランゲージ作成共同研究第三弾。最終成果物は書籍化する予定。

このほか、この春から「これからの訪問看護」についての対話のツール(パターン・ランゲージ)をつくるプロジェクトが、看護医療学部生たちとともに進行中です。こちらは、看護医療学部の授業等も考慮し、上記のプロジェクトとは異なる時間帯で活動しています。詳しくは説明会やメール等で聞いてください。

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【運営方針】
各自どれかひとつのプロジェクトに参加し、研究に取り組みます。 各プロジェクトは、複数人で構成され、成果を生み出すためのチームとして、ともに助け合い、高め合い、学び合いながら、研究に取り組みます。

井庭研の大きな特徴として、学部生でも自分たちの研究成果を論文にまとめ、国際学会で数多く発表しているということがあります。例えば、2019年は、計11本の論⽂を書き、それをドイツ、カナダ、ポーランド等で開催された国際学会で発表してきました。また、国際学会でのワークショップも2本行いました。そのほとんどで、学部 2年⽣〜4年⽣が活躍しています。2020年度は台湾、ドイツ、アメリカ、イタリア等で国際学会発表を行う予定です。このように学部生のうちから、学術的な海外のコミュニティを経験できるというのも、井庭研の特徴・魅力のひとつです。

また、研究成果を書籍として出版することもあります。井庭研では、そのくらい本格的に研究・実践に取り組んでいます。まさに、井庭研がSFC生活の中心となるような活動量です。そういう本格的な研究・実践に一緒に取り組みたいという人を募集します。

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【履修条件】
  • 知的な好奇心と、創造への情熱を持っている多様な人を募集します。
  • 井庭研での研究・活動に積極的かつ徹底的に取り組もうという気持ちがあること。
  • 個々の研究だけでなく、「知的・創造的なコミュニティとしての井庭研」を一緒につくっていく意志があること。

    【その他・留意事項】
  • 井庭研では、たくさん本を読みます。難しいものもたくさん読みます。それは、知識を身につけるというだけでなく、考え方の型を知り、考える力をつけるためでもあります。さらに、他のメンバーとの共通認識を持ち、共通言語で話すことができるようになるためでもあります。創造の基盤となるのです。

  • 井庭研では、たくさん話して、たくさん手を動かします。文献を読んで考えるということはたくさんやりますが、それだけでは足りません。他のメンバーと議論し、ともに考え、一緒につくっていく、ということによって、一人ひとりの限界を超えることができます。こうして、ようやく《世界を変える力》をもつものをつくることができるのです。


    【授業スケジュール】
    井庭研では、どっぷりと浸かって日々一緒に活動に取り組むことが大切だと考えています。大学生活の・時間割上の一部の時間を井庭研の活動に当てるというよりは、 井庭研が大学生活のベースになるということです。井庭研に入るということは、SFCでの「ホーム」ができるということもあるのです。創造的な活動とその社会的な変革は、毎週数時間集まって作業するというだけでは成り立ちません。いつも、どこにいても考え、アンテナを張り、必要なときに必要なだけ手を動かすことが不可欠です。そのため、自分の生活の一部を埋めるような感覚ではなく、生活の全体に重なり、日々の土台となるようなイメージをもってもらえればと思います。

    そのなかでも、全員で集まって活動する時間も、しっかりとります。各自が準備をしたり勉強したりする時間とは別に、みんなで集まって話し合ったり、作業を進める時間が必要だからです。井庭研では、 水曜の3限から夜までと、木曜の4限から夜までの時間は、メンバー全員で集まって活動する 《まとまった時間》 としています。これらの時間は、授業や他の予定を入れないようにしてください。


    【評価方法】
    研究・実践活動への貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。


    【エントリー課題】
    1月19日(日)までに、指定の内容を書いたメールを提出してください。

    エントリーメールの提出先: ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp ([at]を@に変えてください)

    メールのサブジェクト(件名): 井庭研(2020春) 履修希望

    以下の内容を書いたファイル(PDF)を、メールに添付してください。

    井庭研(2020春) 履修希望

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真や絵などを入れてください)
    3. 井庭研の志望理由
    4. 参加したいプロジェクト
    5. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    6. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    7. これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
    8. これまでに所属した研究会と、来学期、並行して所属することを考えている研究会(あれば)

    1月21日(火)もしくは23日(木)に面接を行います。詳細の日時についてはエントリー〆切後に連絡します。また、1月25日(土)に、2019年度最終発表会を開催します。履修希望者は原則参加としますので、予定に入れておいてください(τ11)。

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    【教材・参考文献】

  • クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』(井庭 崇 編著, 鈴木 寛, 岩瀬 直樹, 今井 むつみ, 市川 力, 慶應義塾大学出版会, 2019)
  • パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』 (井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)
  • 社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』(井庭 崇 編著, 宮台 真司, 熊坂 賢次, 公文 俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)
  • プロジェクト・デザイン・パターン:企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32』 (井庭 崇 , 梶原 文生, 翔泳社, 2016)
  • おもてなしデザイン・パターン:インバウンド時代を生き抜くための「創造的おもてなし」の心得28』(井庭 崇, 中川 敬文, 翔泳社, 2019)
  • 対話のことば:オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』(井庭 崇, 長井 雅史, 丸善出版, 2018)
  • 旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』 (井庭 崇, 岡田 誠 編著, 慶應義塾大学 井庭崇研究室, 認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ, 丸善出版, 2015)
    園づくりのことば:保育をつなぐミドルリーダーの秘訣』(井庭 崇, 秋田 喜代美 編著, 野澤 祥子, 天野 美和子, 宮田 まり子, 丸善出版, 2019年)
    探究パターン・カード(創造的な探究のためのパターン・ランゲージ)」(クリエイティブシフト, 2019)
    アクティブ・ラーニング支援パターン・カード(ALP)」(クリエイティブシフト, 2019)
  • プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』 (井庭崇, 井庭研究室, 慶應義塾大学出版会, 2013)
  • 時を超えた建設の道』 (クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)
  • クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989)
  • ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)
  • 創造性とは何か』 (川喜田二郎, 詳伝社新書, 詳伝社, 2010)
  • 哲学は対話する:プラトン、フッサールの〈共通了解をつくる方法〉』(西 研, 筑摩選書, 2019)
    人間科学におけるエヴィデンスとは何か:現象学と実践をつなぐ』(小林隆児, 西研 編著, 竹田青嗣, 山竹伸二, 鯨岡 峻, 新曜社, 2015)
  • 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです:村上春樹インタビュー集 1997-2011』 (村上春樹, 文春文庫,文藝春秋, 2011)
  • 感動をつくれますか?』 (久石 譲, 角川oneテーマ21, 角川書店, 2006)
  • 創造的論文の書き方』 (伊丹 敬之, 有斐閣, 2001)
  • 考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)

    【関連プロジェクト】
    Iba Lab B: Future Study on Natural & Creative Society (in English)

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