生活世界をめぐる、3つの構成原理
 
1. 客観的世界の構成原理
2. 主観的世界の構成原理
3. 間主観的世界の構成原理
4. メディアスケープ(媒介景)
5. 核家族の視点(産業社会に対応)
6. 粒子家族の視点(消費社会に対応)
7. 携帯家族の視点(情報社会に対応)
5.核家族の視点(産業社会に対応)

核家族の構成は、『機能(役割)分化』の原理に基づいており、男の 機能(道具的)と女の機能(表出的)と親の機能(リーダーシップ) と子供の機能(フォロアー)からなる。しかもフェミニズムが抗議し たように、ここでの機能関係は強く非対称的であるから、その意味で は核家族は権力的なシステムでもある。そこで、核家族は、4つの役 割関係から構成されても、権力的には主人=父親=夫を核にして成立す る家族類型なのである。とすると、核家族の視点は、主人の行動・意 識特性を基準に構成されざるをえなくなる。それが、以下のような特 性である。

◇価値

◆目的:「拡大」という目的達成

・ここでは、目的達成が価値(望ましさ)である。目的達成感のない行為は、ここでは評価されない。

◇主体

◆未来志向/手段(道具)的志向

◆真面目/合理・効率志向/禁欲(我慢・頑張り)

・目的達成のためには、未来に向かって現在を手段(道具)化しなければならない。その場合、必要なのは、真面目で、無駄なく(効率・合理)で、禁欲的(我慢する)なパーソナリティである。

◆自立/同一化(アイデンティティ)

・上記のようなパーソナリティをもって、目的達成に邁進できるとき、自分のことは自分ですべて達成できるという事実を確認できるし、その成果によって、自己の存在証明が保証されるのである。

◆成人・男性(その典型が、主人)

・このような特性をもつのは、厳密には、成人の男性のみで、とくに核家族の主人の役割を全うしている人に限定されている。だからこそ、ここでは、女・子供・高齢者は、あくまでも自立した主人のリーダーシップのもとで従う存在にすぎないのである。

◇関係

◆生産優位

◆交換・競争(経済)

◆権力・闘争(政治)

◆利便性

・上記の主体が重視する社会関係は、仕事の世界であり、いわゆる男の世界における関係である。そこでは、消費生活は無視され、組織での生産関係が優先され、したがって、目的達成を効率的に行うための利便性は重視され、冗長な関係は拒否される。このような関係は、一般的には、政治・経済の領域にみられるもので、生活や文化の領域にはみられない。ここは、どこまでも、直線的な関係が優先される世界である。

◇環境

◆貧しさ(物的)

・結局、このような主体と関係が優先される社会とは、単純に貧しい社会環境にあるからなのである。1955年以降、産業化が一気に推進されたが、それは、貧困からの離陸が最優先される社会環境にあったからである。核家族のみんなが、父親のもとで、みんな頑張って生きるのも、その背景は貧しかったからである。核家族は、このような背景のなかで、もっとも合理的な家族類型だったのである。