メディヴァの講演から「医療業界における情報化の遅れ」という率直な感想を持つ。医療従事者が医療と情報が融合することにより社会にどれだけ貢献できるか、その価値を良く理解する必要性を感じる。現在の医療業界では、医師、看護士、医療機器および患者が個々に情報を保有し、保有する情報の質や量および情報交換についても十分といえない。メディヴァの試みは情報化により医療従事者の可能性を拡大するものであり、現在の医療に不足する情報問題の解決には大切である。メディヴァの試みの一つである病・診・患連携システムは、「医療機関間」、「地域連携」および「患者間」の3種の情報連携を提案している。その他にも病院経営に関するコンサルティングサービスや医療従事者を中心としたSNS運営などいずれも医療に情報を融合するものであり、医療業界における情報価値向上を追及する活動である。
医療業界において情報の流れは大学病院、医師、看護士そして患者といった上流から下流へと流れる一方向の流れが前提でありトップダウン方式あるいはコンピュータでいえばホスト、サーバおよびクライアントの関係に近い。今後はボトムアップの情報の流れを含めWeb2.0の概念にあるようにクライアントも情報発信者となるようなSNS的情報交流により情報の活性化を生み、医療従事者および患者あるいは健者までも含め相互に情報化の恩恵を受けるべきと考える。そのためには、これまで遅れている情報の蓄積および蓄積した情報の解析による新たな知識創出のサイクルを確立すべきであり、電子カルテやレセプトなどデジタル情報として再利用可能な形式で情報蓄積を進めることは、情報化による恩恵の効果拡大を期待できる。医療関連情報においては、個人情報の秘匿性といった医師と患者の関係といった垂直方向の情報連携を必要とする一方で、医師同士あるいは患者同士の情報連携といった水平方向の情報連携を必要とする。言い換えると垂直方向のクローズドな情報連携と水平方向のオープンな情報連携の2種類の情報連携が必要である。各々の特徴として、垂直方向は医師と患者のように異なる立場の関係者間の情報連携により「情報を行使する場」であり、水平方向は医師同士あるいは患者同士といった同じ立場間の情報連携により「情報のクレジットを得る場」であり。医療情報は生命に関わる可能性があり慎重に扱う必要がある。しかし電気、水道、交通などインフラ事業においても情報化なしでは事業実現困難なほど情報化は浸透しており、医療分野においても情報化に臆病である必要はないと考える。メディヴァではさらに一歩進みカルテ開示を条件にするなど積極的に情報を活用しており、医療と情報の融合による価値創造を実践する貴重な存在であると認識する。今後の活躍を期待したい。
メディヴァ(提橋さん)
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