「鶴岡では、病院間で対立するようなことはやめましょう。患者を奪い合うと言うような発想ではなくて、地域として良い医療を提供するためにお互いに協力しましょう。」鶴岡地区医師会の中目会長が庄内医療生活協同組合鶴岡協立病院の先生へ、このような呼びかけをしている場に幸運にも居合わせることができました。
山形県の鶴岡地区は全国でもまれな地域医療情報システムを運用している地域です。
鶴岡地区では鶴岡地区医師会が運用するNet4UというIT活用による医療を中心としたネットワークを構築し地域内の病院、医院、訪問看護ステーションとの間で情報交換し地域医療連携を実践しています。
1地域1患者1カルテを実現し医療の効率的な提供、また病院・医院と訪問看護ステーションの情報連携により主治医と看護、介護が一体となったより質の高い在宅医療を目指し構築されたNet4Uについて地域の先生方が自信に満ちた笑顔で話してくれます。当初、経済産業省による「先進的IT活用による医療を中心としたネットワーク化推進事業」に参画し開発を進め、現在では鶴岡地区の約70%の病院、医院が加入していると言います。
中目会長は、「鶴岡地区がNet4Uを成功できたのは要因の一つとして、システムを運用するに当たり十分な資金を持っていたからではないか。」ともいいます。日本全国の多くの地域で政府の予算を利用して開発したものの、その後の運用に問題があるケースが多くありますが、これらは運用コストが大きくのしかかっていることも少なくありません。Net4Uも現在ではそれなりの運営をしていますが、立ち上げた当初は年間にわずかな利用者しかない状況だったそうです。それでも継続するだけの資金が医師会にあったから現在の運用まで進められたようです。
今日、医師会の役目が疑問視されることもありますが、鶴岡の場合は、病院同士ではできなかった医療連携を医師会が資金的にも人的にも推進役となり情報化による医療リソース連携を実現している大変貴重な例です。今後も地域で役に立つ情報化を進めることと期待します。
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