Hopkin, Mary

May
13
2008
cover.jpg 1970年初頭のイギリスのフォークムーブメントを最も良く表現した一枚であろう。重厚なベースの音、スコティッシュな伝統の響き、アコースティックなギターの旋律、そして控えめでありながら全体の空気を作り上げているストリングスなど、シンガーの、こうしたアルバムを創りたいという意図がひしひしと伝わってくる力作である。他人の曲だけを歌っていても、SSWのドノヴァンや、ニック・ドレイクなどに決してひけをとらない、時代を代表するアルバムである。

 しかし、全体が同じ色調で染められているとはいえ、内容は単調ではない。ホプキンのヴォーカルは、瑞々しいが、決して少女っぽい歌い方ではない。むしろ堂々と声を響かせ、凛々しい歌声を聞かせてくれる。There's Got To Be Moreのようにノリがよく、しかも力強い抑揚を聞かせてくれる曲、Streets of Londonのようなフォークのミニマルな美しさが際立つ曲、さらにはWater, Paper and Clayは、単純なメロディが何度も打ち寄せるトラッドっぽい曲であるが、次第に、どんどん熱く荘厳になっていく展開は、決してフォークの一言ではすませられない、豊かな情感を表現している。

 このアルバムでのメリー・ホプキンは、まさに日本盤タイトル『大地の歌』にふさわしく、しっかり大地を踏みしめ、自然の息吹を感じながら、生命があふれる喜びを歌っているように感じる。それはジャケットの美しい写真のせいもあるだろう。表のEarth song、裏のOcean Song、それぞれにふさわしい情景の写真が使われている。写真におさまる19歳のホプキンには、イギリスの過去と今が見事に結晶化している。

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