Hopkin, Mary
May
13
2008

しかし、全体が同じ色調で染められているとはいえ、内容は単調ではない。ホプキンのヴォーカルは、瑞々しいが、決して少女っぽい歌い方ではない。むしろ堂々と声を響かせ、凛々しい歌声を聞かせてくれる。There's Got To Be Moreのようにノリがよく、しかも力強い抑揚を聞かせてくれる曲、Streets of Londonのようなフォークのミニマルな美しさが際立つ曲、さらにはWater, Paper and Clayは、単純なメロディが何度も打ち寄せるトラッドっぽい曲であるが、次第に、どんどん熱く荘厳になっていく展開は、決してフォークの一言ではすませられない、豊かな情感を表現している。
このアルバムでのメリー・ホプキンは、まさに日本盤タイトル『大地の歌』にふさわしく、しっかり大地を踏みしめ、自然の息吹を感じながら、生命があふれる喜びを歌っているように感じる。それはジャケットの美しい写真のせいもあるだろう。表のEarth song、裏のOcean Song、それぞれにふさわしい情景の写真が使われている。写真におさまる19歳のホプキンには、イギリスの過去と今が見事に結晶化している。