2004年8月アーカイブ
「固定電話網、2010年代に完全IP化目標 総務省」(asahi.com)
2010年代に国内の固定電話網をすべてIP(インターネット・プロトコル)電話に切り替える、という目標を総務省が掲げる。実現のための研究開発に、05年度から5年で100億円を投じる方針。従来の固定電話の利用者が減るのに対し、主にブロードバンド(高速大容量通信)網を使うIP電話は料金の安さで利用者を増やしているうえ、テレビ電話やデータ伝送など利用法も広がるためだ。
いずれ固定電話はなくなると皆が思っていたとはいえ、こんな目標が作られるとは思わなかった。
スタン・ターナー(佐藤紀久夫訳)『CIAの内幕—ターナー元長官の告発—』時事通信社、1986年。
カーター政権でCIAの改革に腐心したターナー長官の回顧録。よくある暴露本かと思ったが、いろいろと勉強になった。
一九四七年の国家安全保障法の起案者たちはDCI長官に、全情報機関が収集した情報の拡知に関する管理権を与えた。起案者たちは、日本の作戦計画に関する情報を狭く押し込めた結果、パールハーバーを招いたような事態の再現を望まなかった。(p. 239)
今とまったく同じではないかと思ってしまう。9.11を防げなかったことから、ブッシュ政権はインテリジェンス・コミュニティを総括するポストの新設を迫られている。しかし、すでにCIA長官=DIAであり、インテリジェンス・コミュニティを総括する役割を担っていたはずだ。
訳書では、ターナーの肩書をCIA長官ではなくDCI長官としたが、原書に従ってそうするのが適当だと思ったからである。もちろんCIA長官のことである。アメリカ政府の法制では、この地位はディレクター・オブ・セントラル・インテリジェンス(DCI)であって、CIAを含む全情報機関を統轄する。原書はすべて、この肩書で記述している。同長官はCIAの長でもあるが、それは権限の一部である。つまりDCI長官は全情報部門とCIAの双方の責任者であるわけで、単なるCIA長官ではない。(p. 262:訳者あとがき)
現在ブッシュ政権が求められているのは、CIAからも独立した総括ポストということになる。しかし、そうするとよほどうまくやらないとどこからも情報が上がって来なくなるという危険がある。それに、9.11後に国土安全保障省を新設し、その時にCIAやFBI、NSAなどは入れないということになったはずだ。コミュニティ全体の秩序が混乱するだけのような気がする。
田中 宇「テロをわざと防がなかった大統領」(2002年1月24日)
そんな愛国的な雰囲気のフォールズチャーチには、アメリカを愛していないと思われる人々も住んでいた。この町には、911のテロ事件の容疑者のうち4人が以前に住んでいたと思われるアパートがある。リーズバーク・パイク通り5913番地(5913 Leesburg Pike)という住所である。
これもたまたま見つけた田中ニュースの記事。ここに出てくる番地は、私が住んでいたところに結構近い。Yahoo!のドライビング・マップでは車で12分の距離だ。先に知っていれば見に行ってきたのになあ。しかし、このアパートは本当に使われていたのだろうか。この辺は確かに住宅街で、ところどころ大きなアパート(日本のマンション)が立ち並んでいる。巨大アパートになると、隣がどんな人かはあまり気にしないのは日本と同じ。ワシントン近郊なら外国人が住んでいても特に目立つことはない。
毎日新聞社会部『情報デモクラシー』毎日新聞社、1992年。
一昔前の本だが、「一見、便利で快適な「情報化社会」でありながら、重要な情報はテクノクラートに操られ、情報公開は遅々として進まない『日本的情報世界』」というのがテーマ。新聞社の取材本だけあっていろいろなエピソードが入っていておもしろい。
警視庁では「データを持ち出した、あるいは持ち込んだ行為に対して規制する法律はない。背任や横領など背景に明確な動機があれば別だが、これも認定がかなり難しい」(広報課)としている。(75〜76ページ)
という現状は今も変わらない。情報を盗む行為そのものを罰する規定がない。個人情報保護法は、情報管理を怠った者は罰することができるが、情報を盗んだ者はコピー用紙の窃盗罪として裁かれるだけだという。情報の価値を定義づけるのが困難だかららしい。プライバシーに関する情報は、当事者にとってはすごく高価だが、関係ない人にとってはゼロに等しい。商業的価値に換算するのは難しい。住居侵入や不正アクセスで捕まえることになるが、電子データをコピーしてその痕跡を残さなかったとすると、裁くのはますます難しくなる。外国では、スパイ防止法や産業スパイ防止法のようなものがあるが、日本ではトレード・シークレットとして守るのがせいぜいで、個人のプライバシーは裁判でいちいち争わないといけないようだ。
蛇足ながら、
私たちの身の回りを眺めると、一口に「情報」といっても、一次情報としてのinformationと、二次情報としてのintelligenceを混同していることが多いのではないか。(254ページ)
という記述はいただけない。形式的には二次情報ともいえなくはないが、これでは単なる伝聞もインテリジェンスになってしまわないか。インテリジェンスそのものの理解ができてないのではないかと思う。
今日は久しぶりにキャンパスに行って、オープン・キャンパスで模擬講義をやった。どうやったらいいのかよく分からなかったが、ひとまず終わってほっとした。
今日のオープン・キャンパスには総勢1000人ぐらい来ていたのではという話を聞いたが、本当だろうか。
そもそもオープン・キャンパスを日本で最初に始めたのはsfcで、それも学生が勝手に始めて、後から大学が公式行事にしたそうだ。今ではどこの大学でも行われている。他にも、AO入試もsfcが最初に始めたが、今では200大学近くが行っているらしい。革新の精神が生きている。
岩島久夫「『情報無視・思惑先行』型日本政治−昔を思い今を憂う」
当時外交当局を牛耳っていた最高幹部(今は退職)が冗談ともつかず言った。「日本が独自に撮影した写真に基づく自前情報が入ってくるようになると、国際政治上の日本の責任が増え、大きくなるので困るよ・・・」
ウェブを検索中にたまたま見つけた。この最高幹部はひょっとするとあの人かなあ。
さすがに今はそんなことはないと思いたい。
Jeffrey Selingo, "In the Classroom, Web Blogs Are the New Bulletin Boards," New York Times, August 19, 2004.
アメリカの小学校でもブログを活用し始めたそうだ。これまでの掲示板(BBS)よりも維持が楽だとか。
hotwiredの記事で紹介されていたこのサイトの「This Land」というアニメはとてもおかしい。
思うところあり、sfcに引っ越すことにした。新しいところはこちら(http://web.sfc.keio.ac.jp/~taiyo/mt/)。
「無線タグで大量の書類管理 NECなどが新システム」(asahi.com)
書類を収めたファイルにICタグを取り付け、書棚に今回新たに開発する「全方向型ICタグ読みとりアンテナ」を設置して、書類の番号や種別を認識し、パソコンなどで一覧できるようにする。日付や融資先を手がかりに、書類の保管場所を検索することも可能だ。
すばらしい。あの書類どこいった問題は無くなるのだろうか。でも紙幣にはつけないで欲しい。
一週間ほど前に冷蔵庫が壊れた。ようやく昨日、修理に来てくれた。あっという間に分解され、のぞいて見ると奥には霜がずいぶんたまっていた。霜を溶かすヒーターが切れてしまったらしい。ま、直って良かった。
せっかくなのでsfcに引っ越した。ココログからMovable Type 3.0に変えた。若干使いやすくなったかな。
リチャード・クラーク(楡井浩一訳)『爆弾証言―すべての敵に向かって―』徳間書店、2004年。
遅ればせながらようやく読んだ。原書が出たときに大変な話題となり、クリントン政権と現ブッシュ政権の閣僚が議会の公聴会に呼ばれて内容を問いただされたという曰く付きの書だ。クラークはレーガン政権から現在のブッシュ政権まで四人の大統領の下で官僚をずっと務め続けた異例の人だ。クリントン政権以降はホワイトハウスで対テロ対策にあたってきて、ブッシュ政権のやる気のなさといい加減さに怒って辞職した。
この本は米国のインテリジェンス・コミュニティの現実を学ぶのに格好の教科書だと思う。クラークやFBIのジョン・オニール(あるいはCIAのジョージ・テネットを含めて)が9.11の前からアルカイダをどれだけ追いつめようと努力してきたかが分かる。クリントン政権はうまく対処しようとしてきたが、クリントンのスキャンダルで政治力を失ってしまい、ブッシュ政権は最初からアルカイダを無視してイラクを叩こうとしていた。9.11を利用してイラクを叩いたと言っても過言ではないだろう。
また、ホワイトハウスはインテリジェンス・コミュニティの陰の部分である工作活動(covert action)の発動にためらいを見せていないのに対し、逆にCIAと国防総省が極度にそれを嫌っている姿は面白い。いったん事が露見するとホワイトハウスはCIAや国防総省に責任を押しつけて知らんぷりするのがこれまでのパターンだったからのようだ。
いずれにせよ、現場の様子がよく分かって面白い本だった。インテリジェンスの訳語が相変わらず諜報とか情報になっているので、インテリジェンスの重要性が埋もれてしまっているのが残念。
「すべての敵に向かって(Against All Enemies)」という原書のタイトルは、米国の公務員が就任する時に行う宣誓に入っている言葉だそうだ。
「預かり金流用の「日本学会事務センター」が破産へ」(YOMIURI ON-LINE)
先月、各学会からの預かり金の流用や深刻な財務状況が表面化。財団は同月、再建計画を策定し、文科省に報告するとともに、各学会に返済の猶予を要請。金融機関にも援助を求めるなどしたが、受け入れられなかった模様だ。
某学会からこの件についてお知らせが来た。困ったものだ。学会運営は大変そうだからアウトソースしたのだろうけど、アウトソースもいいことばかりではないなあ。
下記はソウルで泊まったホテルの有線ブロードバンドの説明。利用時間を計測して料金請求している。上限があるとはいえ、あまりうれしくない。上限の約26000ウォンは米ドルで20ドルぐらいだから相場より高い。つなぎっぱなしにするのには抵抗がある。しかし、いちいちケーブルを外すのは煩わしい。
米国でもISPの収益が悪化しているので、従量制が検討されているという記事を見たことがある。常時接続がブロードバンドの隠された魅力のはずなのだが。
高速インターネット接続ザービスをお楽しみ下さい KRW648.67 を1分毎に課金し、 KRW25,946.80 を上限として24時間ご利用出来ます。 記載されたすべての価格にVATが含まれています。購入時の利用期間は、購入された時間から次の日の同じ時間までを1日として計算します。全てのご利用料金はお部屋に課金され、追加料金を請求されるまで何度でも利用可能です。接続回数は関係有りません。
ご注意:料金は、コンピュータ毎のものです。お客様のコンピュータからインタータッチ社のケーブルが外されるまで、またはお客様のコンピュータがオフになるまで、料金は計算され続けます。
ソウルから戻った。今回は4日間で252通のスパム/ウイルス・メールが届いた。若干少な目か。
今週は韓国の休暇のピークだった。そのせいでソウル名物の渋滞がだいぶ緩和されており、めずらしく一度もアポに遅刻することがなかった。会いたい人にはほぼ会えたので、とても充実していた。
ただ、やはり蒸し暑いので、疲れた。ソウルは車優先で街並みが作られている。片側8車線という広い道路があるが、歩行者は横断するのに地下道を通らなくてはいけない。エスカレーターはほとんど設置されていないので、階段を上り下りする機会が多い。小さい子供連れや老人にはつらいだろうなあといつも思う。
やはり韓国では冬ソナは人気がなかった。ペ・ヨンジュンは10年前のアイドルという評価で、角刈りマッチョを求める韓国の男性像とは一致しない。「なぜ日本で人気あるの?」というのが一般的な韓国人の見方だ。
何度かデモに出くわした。中心街で数百人の警官が集まっているから何事かと思ったら、イラク派兵に反対するデモ・グループがアメリカ大使館突入を計画していたらしい。いやあ激しいなあ。これほど大規模な警官隊の投入は久しぶりとの通訳さんのコメント。
日本をよく知る研究者と夕食をともにした。彼は日本語が堪能なこともあり、ここ数年毎月のように日本に通って、電子政府の講演を続けてきた。しかし、もうしばらくは行くのをやめるという。いくら改革を勧めても日本は一向に変わる気配がないからだという。
なぜ日本の電子政府が進まないのか。同行しているシンクタンクの研究員は、行政の職員に何もインセンティブがないからだという。減点主義の行政では何か新しいことをやって失敗すると、昇進に響く。改革派の首長に従って新しいことを始めても、首長が変わってしまえばはしごを外される。
しかし、地方自治体では多選が現実なのだから、首長がその気になればいい。ところが、その首長がITにまったく興味がない。自分が知らないことを進める気もないし部下に教えを請うこともいやなのだろう。だが、ある市では、市長が自分で電子メールの返事を出したら、職員が一斉に使い始めたという。潜在的なニーズはある。首長のためのIT講習をこっそりやってもいいはずだ。
なぜやる気のない首長がそもそも当選してしまうのか。韓国では落選運動も激しいし、政治家のブログのランキングまであるそうだ。日本の政治家の中で自分でブログを書いている人はまだまだ少数派だろう。そもそもITが使えるということは政治家の資質には入っていない。選挙でインターネットを使うことすらできない。
e-Japanで日本中でブロードバンドが使えるようになったと総務省は胸を張った。しかし、同じ総務省(の自治省系)は選挙にインターネットを使わせない。選挙は紙でやるもので、インターネットでは多くの人に情報がいきわたらないからだという。これは大きな矛盾ではないだろうか。
シンクタンクがそうした批判と提言をすればいいではないかというと、シンクタンクは役所の仕事で食っているからできないという。その韓国の研究者は、「日本では役所にぶらさがって生きている人が多すぎる」という。その通りだ。見かけ上、霞が関や地方自治体の職員は減っているが、財団法人や関連団体に追いやられているだけで、事実上公務員という人がたくさんいる。シンクタンクや大学なども、政府のお金で仕事をしている部分が大きい。
では、政府から独立した大きな資金があるかというと、アメリカ型の大きな財団は育っていない。市民側にも寄付をする土壌やインセンティブがないし、財団を作れば節税行為にしか見られない。どこかにあるはずのお金が日本では回っていない。
韓国は今、IMF危機を上回る経済不況にあるという。だから、ITによって景気回復が進むというほど単純ではない。韓国の家電メーカーは輸出で大いに儲けているが、その儲けを投資に回さないので、国内で金が回らない。ITで人減らしがどんどん進んで、失業率が高止まりしている。それでもこれが本当の構造改革だと韓国の人々は信じて、次を目指そうとしている。
日本は、構造改革といいながら、どうしても韓国ほどの危機感を持てない。不況の10年だって、多くの人がほどほどに幸せに生きてこられた。しかし、複雑に絡まったさまざまな社会機能の不全をそのままにして景気が回復してしまうと、いい方向に行くかもしれないが、問題を先送りにしてしまうだけのような気もする。「韓国なんて見てもしょうがないよ」という人はいまだに多いが、そんなことはない。社会システムが似ている韓国から学べることはたくさんある。
昨日、ソウルに来た。昼に着いて、午後は時間があったので、情報通信部(総務省にあたる)の一階にある「Ubiquitous Dream Hall」に行ってきた。通常はとても混んでいて予約が必要らしいが、韓国は今が夏休みのピークなので人がほとんどおらず、予約なしですぐに見ることができた。
RFIDをはじめ韓国のハイテク製品のアプリケーション展示場となっていて、各社がいろいろな製品を実演している。ガイドの女性の首からは大きめのRFIDタグがぶら下がっていて、展示ブースに彼女が入るたびに、脇においてあるリーダーがそれを読み取ってデモが動き出す(ガイドなしで勝手に見て回ることはできない)。
家庭にあるパソコンの画面をオフィスのパソコンの画面にそのまま表示させたり、音声認識で洗面所の鏡の中にニュースを表示させたり、ロボットがカフェで注文をとってくれたり、留守中に掃除機ロボットが部屋を掃除してくれたりとさまざまな利用法を示してくれる。スーパーの会計のデモでは、各商品についたRFIDタグを会計リーダーが読み取り、その金額と承認コードを携帯電話に送る。買い物客はその金額を確認して承認コードをレジに打ち込むと決済が終わり、レシートがまた携帯に送られる。
韓国は日本と同じくu-Korea構想を打ち出しており、ブロードバンドの次のターゲットはユビキタスだ。
しかし、通訳の人によるとハングルではユビ「コ」タスと書いてあるそうだ。ユビコタス社会のほうがなんとなくかわいい気がする。