著作: 2008年2月アーカイブ

20080226keidanren.jpgおととい、経団連ホールで国際シンポジウム「通信と放送の融合をめぐる法制のあり方について」を開いた。慶應のSFC研究所と21世紀政策研究所の共催である。あまり深く考えていなかったのだが、13時から18時まで5時間かかるシンポジウムというのも、言われてみればあまりないかもしれない。


第1部では海外からのゲスト3人がキーノートとして話した。米国ジョージ・メイソン大学のトーマス・ヘイズレット教授は規制撤廃が投資を促進すると主張し、エコノミスト誌のケン・クーキエ氏はメディア融合とは脅威ではなく機会であり、早くコンバージェンスに対応するほど強くなれるという。延世大学のイ・ミョンホ教授は規制改革、制度改革には政治的な決断が必要だと韓国の事例から述べた。

第2部で慶應の國領二郎&中村伊知哉の対談があり、総務省研究会の舞台裏、思惑が議論された。それがおもしろかったのか、最前列で聞いていた元政治家二人が「官僚統制はダメなんだ」と叫びだして異様な盛り上がりになった。

私は第3部のパネル・ディスカッションの司会をしたが、ここはちょっと時間が足りなくて、壇上のパネリストには2回ずつしか発言の機会を与えられなかった。実に残念。しかし、それぞれの主張は明確で、総務省の内藤氏が総務省の議論を紹介し、世界最先端の法体系を作ると述べたのに対し、経団連の上田氏は、事業者主導からの転換、事後規制への転換という対案を示した。ソウル国立大学のキム・サンベは、韓国のIPTV論議は3年もかかり、新大統領の下で新しい規制機関を作ることを明らかにし、エセックス大学のクリス・マーズデンは、レギュレーターが大きな杖を持って後ろに立っているというco-regulationというアイデアを紹介した。慶應の金正勲は、ただ法律をいじる話をしてもダメで、市場にとっての意味、法政策にとっての意味を考えろと主張した。

フロアからも、制作プロダクション、芸能プロダクションという作り手の話をしなくちゃダメだというもっともな指摘などがあり、とても有意義だった。

私の感想は、(1)大きなチャンスだ、(2)グローバルに通用するものにしたい、(3)まだまだやることが山積みだ、という三つ。やることとしては、話に出ていたように、著作権のこと、電波割り当てのこと、レギュレーターのこと、広告ビジネスの変容のこと、基幹放送のことなどなど。融合の話をすると、いつも放送局がやり玉に挙がる。確かに放送局にはもっと変わってもらいたい。しかし、通信事業者ももっと変わって良いと思う。中村さんによれば、日本はインフラでは先進国だったのに、コンテンツでは後進国になってしまったそうだ。

後進国でもいいのかなという気も私はするのだけど、おもしろいコンテンツやサービスが出てくるのは大歓迎だ(ついでにアメリカのように日本でもネット政治が盛り上がってくれるといいなあ)。

ところで、冒頭の写真は舞台裏の控え室でのもの。登壇者がみんなで窓の外の風景を議論しているところ。みんな暇だったんだね。私はとにかく疲れた。だけど、多くの人が手伝ってくれたからこそうまくいったのは言うまでもない。感謝!

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