井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

2021年春学期 井庭研「ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて」シラバス

井庭研シラバス(2021年度春学期)

ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて:創造の研究 & 未来をつくる言葉をつくる(ことで、本当に未来をかたちづくる)

[ 自然のなかの子育て / 創造的な学校・教育 / 企業理念の実践支援 / 生態系保全活動 / 新しい開発援助 / ともに生きる高齢者ケア / ワクワクする人生のZINE制作 / 道を極めることのボードゲーム開発 / 商いの実践探究コミュニティ研究 / 卒 資本主義 & 創造的民主主義への構想 / 音楽作曲 ]

担当:井庭 崇(総合政策学部教授)
研究会タイプ:A型(4単位)

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2021年2⽉6⽇(土):エントリー〆切
2021年2⽉8日(月)・9(火):面接@オンライン

※エントリーを考えている人は、「井庭研に興味があるSFC生の連絡先登録(2020年12月〜2021年2月用)」に登録してください。最新情報をメールで送ります。

※最新情報や説明の映像などを、こちら「慶応SFC 井庭研2021年度 新規エントリー者向け情報」(note)にアップしていく予定です。そちらのページもたまにチェックしてみてください。


2021年度春学期は、以下の10プロジェクトのメンバーを募集します。

(1) 自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成
(2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成
(3) 組織の理念を具体的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成
(4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成
(5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助
(6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン
(7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作
(8)「 道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発
(9) 商いの実践探究コミュニティの研究
(10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想


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☆      ☆      ☆


井庭研究室では、より自然で創造的な暮らし・生き方・社会へのシフトを目指して、一緒に研究・実践に取り組む仲間を募集します。

井庭研では、これからの社会を「創造社会」(クリエイティブ・ソサエティ:Creative Society)だと考え、特に、自然とつながり人間らしく豊かに生きる「ナチュラルな創造社会」へのシフトを目指し、それが可能となるための支援メディア(パターン・ランゲージ)をつくるとともに、そのベースとなる理論・方法論を含む新しい学問の構築に取り組んでいます。

研究・教育は「未来に向けての取り組み」であるため、まずは僕(井庭)が「これからの未来をどう見据えているのか」について語ることが不可欠だと思います。そこで、まず、そのことについて簡単に述べておきたいと思います(のちのVisionのところで、より詳しく紹介します)。

僕が見ている・目指している未来社会は、「創造社会」と呼び得る社会です。しかも、自然との関わりを深めた「ナチュラルな創造社会」です。

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自然(ナチュラル)」というとき、そこには、(突き詰めると表裏一体となる)2つの意味を持っていることに気づきます。一つには、自然(森林や海山など)などの「外なる自然」のことを意味しており、もう一つは、素の自分らしさと自由度をもっていきいきと生きるという「内なる自然」の意味です。これらは別ものではなく、相互に関係しており、理想的な状態では、これらは調和的に重なり合って、ひとつの「自然(ナチュラル)に生きる」ということに収斂します。

この二つの「自然(ナチュラル)」が分離してしまっていることが、現代の諸問題の根源にあると、僕は見ています。「外なる自然」と「内なる自然」のつながり抜きに、どんなに人工的に別の手をつくしても、限界があると思うのです。ですので、これら2つの意味の「自然(ナチュラル)」---「外なる自然」と「内なる自然」---がうまく重なり合うようことが可能な未来を目指したいと思っています。

そして、実は、その意味での「自然(ナチュラル)」は、「創造的(クリエイティブ)」であるということにも重なります。かつて、作家のミヒャエル・エンデは、「創造的であるというのは、要するに、人間的であるということにほかならない」と語りました。一人ひとり創造的に生きるということは、誰かがつくった(社会的に与えられた)「人工的」な人生ではなく、その人らしく(「内なる自然」の意味での)自然で人間的な人生を生きるということにほかなりません。そして、そういうことが可能なのは、人工的な環境のなかではなく、深く美しい自然(「外なる自然」)の秩序との触れ合いがある生のなかで、本当に実現できると考えているのです。

その意味で、井庭研が目指す「創造的(クリエイティブ)」というのは、何らかのメソッドやテクノロジーを用いて「人工的」に飛躍的な思考を実現するというようなものではなく、一人ひとりが本来もっている創造性を十全に発揮するということなのです。この一人ひとりがもつ創造性は、人工的なものではなく、自然(ナチュラル)なものなので、それを僕は、「ナチュラル・クリエイティビティ」(Natural Creativity:自然な創造性)と呼んでいます。世の中的にはAI(人工知能)が全盛ですが、だからこそ、僕らは人間が本来持っている「ナチュラル・クリエイティビティ」の方に着目したいのです。

ナチュラルにクリエイティブに生きる」とは、一人ひとりがもつナチュラル・クリエイティビティを発揮して生きていくということです。そして、それが最も高まるのは、「外なる自然」とつながり調和し共鳴するときである、と考えているわけなのです。このような考えのもと、井庭研では、一人ひとりが自身のナチュラル・クリエイティビティを発揮し、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことができる社会、すなわち「ナチュラルな創造社会」を実現することを目指して、研究・実践に取り組んでいます。

以下では、井庭研が目指している未来像(Vision)、それに向かう研究・活動の根底にある「問い」(Mission)とアプローチ(Approach)、そして、その研究の学問的な位置づけ・野望に対する考え(Academic)、そして、そのための教育・育成の方針(Education)について説明します。


■Vision - 「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことができる「ナチュラルな創造社会」へ

僕は、ここ一世紀の社会の変化として、3つのCの重点のシフト --- Consumption → Communication → Creation --- が起きていると見ています。「消費社会」から「情報社会」、そして「創造社会」へのシフトです。

欧米では一世紀ほど前に、日本では戦後に「消費社会」が始まり、物やサービスを享受するということに人々の関心が集まり、それこそが生活・人生の豊かさの象徴となる時代でした。その後、1990年代から始まった「コミュニケーション社会」(いわゆる情報社会)では、インターネットと携帯電話が普及するにつれて、人間関係やコミュケーションに意識がより向けられるようになり、オンライン/オフラインを問わず、よい関係やよいコミュニケーションを持つことが生活・人生の豊かさを象徴するものになりました。そして、これからの「創造社会」の時代においては、自分(たち)を取り巻く世界や自分の暮らし・人生を構成するものを、どれだけ自分(たち)でつくっているのか、ということが生活・人生の豊かさを表すようになっていくと思われます。

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創造社会はいま徐々に始まりつつあるのですが、その萌芽的な事例としては、ファブ(FAB)による「ものづくりの民主化」、社会問題を解決する独自のモデル・仕組みを試みる「社会起業家」、地域における「住民参加型のまちづくり」、自分たちでの新しいライフスタイルやワークスタイルの構築、自分らしい人生キャリアをつくる、などがわかりやすいでしょう。このような、自分(たち)でつくるという「創造化」は、これから、教育、ビジネス、組織、行政、地域、家庭などあらゆる場を変えていくことになるでしょう(情報化によっていろいろなことが変わったように)。

このような創造社会では、一人ひとりがもつナチュラル・クリエイティビティを発揮しながら、日常や仕事上の問題を解決したり、これまでにないものを生み出したりしていくことになります。これには、そういうことができるという自由度・可能性が高まるという希望に満ちた素晴らしい面と、そうやって各自が自分で問題解決や創造をしていかないと、誰も代わりにはやってくれない(すなわち、自分たちでなんとかしなければ生き残れない)というシビアで過酷な面もあります。複雑多様化した社会を動的に維持・生成し続けるためには、一人ひとりがもつナチュラル・クリエイティビティを発揮することが求められるのです。

「創造社会」に重なる未来ヴィジョンを早くから描き伝えてきたダニエル・ピンクは、ロジカルで分析的な「情報化」の時代に対して、これからの時代は、創作力や共感、喜び、意義というものが、より重要になってくると指摘しています。まず、「パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力」が発揮される機会が増え、求められるようになります(ダニエル・ピンク『ハイコンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』)。そして、「他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力」も重要になると言います。

このように、一人ひとりが、自分の自然な創造性を発揮する「創造社会」では、このような力とセンス(感性)を磨いていく必要があり、それらをうまく発揮することそのための教育・支援が重要となります。さらに、一人ひとりが創造性を発揮するとともに、チームでのコラボレーションや、より広い他者との連鎖・増幅を通じて共創していくことができれば、自分たちで自分たちの社会をアップデートしていく「自己革新的な社会」になるでしょう。そうなれば、現在、すでに限界が感じられているような「一部の人が考え、それを承認して受け入れるだけの民主主義」から、誰もがその具体的なアイデア生成に寄与することで社会を形成していく「創造的民主主義」(クリエイティブ・デモクラシー:Creative Democracy)の世界へとシフトしていくでしょう。

しかも、それは単に「創造的」であればよいだけではありません。現代社会が抱える諸問題を解決していくためには、「ナチュラル(自然)」という側面が欠かせないと思うのです。ここ一世紀の間に、日本をはじめ世界中の多くの人々が、自然から離れた暮らしをするようになりました。改めて、自然との関わり方自分たちの暮らし方について再考しなければならない時期に来ていると思います。

解剖学者の養老孟司は『都市主義の限界』という本のなかで、「戦後社会の変革を、私は都市化と定義してきた」と述べています。都市化においては「なにごとも人間の意識、考えること」が重要だとされ、「排除されるのは、意識が作らなかったもの、すなわち自然」であると言います。そして、「排除された自然は、やがて都会人のなかでは現実ではなくなる」のだと指摘しました。そして、「人間を構成するもう一つの重大な要素」である「無意識」も、意識化できないがゆえに排除されてしまうと指摘しました。まさに現代社会で起きていることだと思います。

さらに、「都市とはすべてが人間の所行で生じたものであるから、そこで起こる不祥事はすべて『他人の所為』なのである」ため、すべてのことが行為・思考に帰せられる「人工的」な世界になるわけです。養老孟司との対談のなかで宮崎駿が「視線の矛先が、いまの時代、人間にばかり向いているというのは、ドキリとさせられます」(『虫眼とアニ眼』)と語っているのですが、同感です。このように、人工的な環境のなかで、意識化された物事と人間同士の関係のなかで生きているために、現在のようなとても息苦しく、閉塞感を感じるようになってしまっているのではないでしょうか。

そして、現代では、あまりにも人々が自然から離れてしまっています。哲学者ミシェル・セールは、現在のフランスでは農家の人口は全体の約10%に過ぎないけれども、一世紀前には80%が農民だったと言い、「われわれの子どもたち、いや、私以降の世代の大半が都会育ちで、農業の経験も動物や植物の生に触れるような体験も非常に少ない」(『惑星の風景 中沢新一対談集』)と憂いていたことがあるのですが、これは日本も同様でしょう。これからの「ナチュラルにクリエイティブに生きる」時代においては、もっと多くの人が、自然のなかに入り、農にも多少関わり、自分たちの身体をつくる「食」のこと、そして、「暮らしの環境」について考えていくことが重要になるでしょう。そして、そういうことに関わることが、生活・人生の豊かさを考えるということになるのです。

これまでの近代の人工的な社会から「ナチュラルな創造社会」にシフトし、人々がより「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ようになる --- このような未来ヴィジョンのもと、井庭研では、そのような未来に向かうための研究・実践・教育を行っています。

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■Mission - 研究の根底にある問い

井庭研での研究の根底にある問いは、「創造とはどういうことか」、「どうしたら一人ひとりのよりよい創造実践が可能になるのか」、そして「創造的な組織・社会を実現するにはどうしたらよいのか」ということです。その背景には、創造という出来事や、一人ひとりのよりよい創造実践、創造的な組織・社会の実現は簡単ではなく、蓋然性が低い(起きやすさが低い)ということがあります。その蓋然性の低さを乗り越えて、それらが可能になるのはいかにしてなのか、そのことを根源的に問うています。

この問いに答えるためには、「創造の研究」に取り組むとともに、「どのような方法・メディアがあれば、人は自らの自然な創造性を発揮して、他者ともに協働的に創造実践することができるのか」ということを考える必要があります。そして、それがいろいろな分野でどのようなことなのかを具体的に明らかにしていくことも不可欠です(その成果が個々のパターン・ランゲージとして表現されます)。さらに、「ナチュラル(自然)であることとクリエイティブ(創造的)であることはどのように関係し、重なり合い、融合させていくことができるのか」ということについても、その本質を深く考えることが重要になります。

井庭研で取り組んでいるすべての研究は、それぞれのプロジェクト目標を達成するだけでなく、今挙げたような根本的な問いに答えるための研究になります。

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■Approach - 創造実践のための言葉をつくる

井庭研では、個人の思考・実践を支えるとともに、組織・社会のなかでのコミュニケーションを変えるメディアとして、「パターン・ランゲージ」の作成と研究に取り組んでいます。パターン・ランゲージが、僕らがつくっている「未来をつくる言葉」なのです。

パターン・ランゲージ(Pattern Language)は、もともとは、人間的な自然な質を生む設計(デザイン)の知を共有するための方法として、建築分野で生まれたものでした。その後、ソフトウェアの設計(デザイン)に応用され、さらには教育や組織におけるやり方・型の共有にも応用されました。井庭研では、そこからさらに領域を広げ、暮らしや仕事、生き方のパターン・ランゲージをつくってきました。これまで十数年間で、70種類を超えるいろいろな領域の1700以上のパターンをつくってきました。それらは書籍として出版されたほか、パターン・カードは全国で使われています。

それぞれの領域のパターン・ランゲージは、それぞれの領域での実践を支え、それについて思考したり、コミュニケーションしたりすることを支援します。それがあることで、多くの人が、起こりがちな問題(落とし穴)に陥ることなく実践したり、問題を解決したりできるようになります。また、今後のことを予期・計画できるようになったり、振り返り、改善していったりすることもできるようになります。さらに、パターン・ランゲージで提供されている新しい「言葉」を語彙(ボキャブラリー)として、実践について語ったり問いを投げたりしやすくなります。このように、パターン・ランゲージは、パターンに支えられた実践を通して、それを使う人たちの「未来をつくる」ことを支援します。

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井庭研では、いろいろな領域に関するプロジェクトを行っています。それぞれのプロジェクトは、自然、創造、暮らし、生き方、仕事、組織、教育、芸術などの個別領域における課題・目標を持っており、これらのプロジェクトは、個別の目標を持ちながらも、その根底には、すでに紹介した「どうしたら一人ひとりがよりよい創造実践を実践できるのか」と「どうしたらチームや社会的によりよい創造実践ができるのか」という問いへ答えようとしているのです。また、ワークショップを設計・実施したり、日常の環境に埋め込むための新しいメディアのデザインなども行うことで、「ナチュラルでクリエイティブに生きる」ことを支援することに取り組んでいます。

さらに、井庭研でつくるパターン・ランゲージは、「ナチュラルな創造社会」という「未来をつくる」ことにも寄与します。パターン・ランゲージがいろいろな領域でつくられていくことで、多くの人々がその人にとっての新しい領域の創造実践を始めやすくなる状況が生まれます。つまり、人々の創造実践の自由度が高まるのです。井庭研が目指しているのは、あらゆる領域でパターン・ランゲージが創造実践の下支えをしている世界であり、僕たちの研究・実践は「ソフトな社会インフラ」をつくることの一翼を担っていると言うことができます。

このように、井庭研では、個々のパターン・ランゲージによって、各人がパターンに支えられた実践によってその人の「未来をつくる」ことを支援するとともに、さまざまな領域でパターン・ランゲージの「ソフトな社会インフラ」を整備していくことで、「ナチュラルな創造社会」という「未来をつくる」--- その二重の意味で「未来をつくる言葉をつくる」ことに取り組んでいるのです。

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■Academic - 今の実学、未来への実学、未来の実学となる「新しい学問」をつくる

井庭研が取り組んでいるのは、社会的な意義をもつ極めて「実学的」な研究です。しかしながら、現在の問題を解決するというだけでなく、将来起きる問題を解決することにも寄与し、未来をかたちづくるということにつながっています。つまり、「今の実学」であるとともに、「未来への実学」「未来の実学」でもあるのです。

学問的に見たときに、実は、上記のような問いに直球で答えてくれる学問分野は、現在ありません。そのため、既存の学問的枠組みや方法論を超えた「新しい学問」を構築しながら取り組むことが必要となります。それゆえ、井庭研では、新しい学問の土台をつくりながら、その上で具体的な研究を進め、そのことによってさらに土台が固まっていくというような、大胆で実験的なやり方で研究に取り組んでいます。

その「新しい学問」を、僕は仮に「創造実践学」と名づけています。まだその全貌は見えていませんが、おぼろげに主要な骨格が見えてきているところです。もちろん、いまやっている研究のベースとなり、指針が得られるくらいに固まってきている部分もあります。その点は安心してください。「創造実践学」という名称には、創造実践を研究する学問だという「創造実践・学」(Study on Creative Practice)という意味と、創造の実践と学術的研究の両方に取り組む「創造の実践 / 創造の学」(Practice and Study of Creation)でもあります。

この「新しい学問」を構築では、単に、既存学問同士を結びつけるというような「学際的」(インター・ディシプリナリー:inter-disciplinary)なものにはとどまりません。いろいろな学問領域を横断し、それらを超越して研究するという「超領域的」(トランス・ディシプリナリー:trans-disciplinary)な研究になります。つまり、すでに有効だと知っている方法や知識の「合わせ技」で戦うというのではなく、そもそもの根本から再考し、自分たちの方法や道具を自分たちでつくっていく必要があるのです。

科学哲学者のトーマス・クーンは、パラダイムシフトが起きるような状況では、哲学に立ち戻ってそこから考えるということが重要になると述べました。「危機が認められる時代には、科学者たちは自らの分野の謎を解明する手段として、哲学的分析に立ち向かうことがある」(トーマス・クーン『科学革命の構造』)。同じように、井庭研では、ときに哲学にまで立ち戻り、自分たちの考えや方法を再構築するということをしています。そしてさらに、哲学のみならず、社会学、人類学、認知科学、心理学、教育学、建築学、デザイン論、芸術論、美学、数学、文学、経営学、思想史などを必要に応じて縦横無尽に飛び込み、学び、取り入れていきます。しかも、西洋の学問だけでなく、東洋哲学・思想とも積極的に関わり、西洋と東洋の知を融合させたこれからの学問をつくっていこうとしています。

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また、学問のあり方も「ナチュラルでクリエイティブ」なかたちに変わっていくことになります。すでに上でも取り上げた哲学者ミシェル・セールは、農業に関わる人口の減少について触れた文脈のなかで、次のように語っています。「作家であれ哲学者であれ社会学者であれ、今世紀初頭にはほとんど万人が農業を直接に体験していたのに、現在では誰もそんな体験をしていない。すなわち二〇世紀最大の問題、最重要の事件は、思想のモデルとしての農業の消失だとさえ言えると思います」。これは非常に興味深い指摘です。これからの学問は、物事を分解して分析する機械論的なアプローチや「工業的な製造」型の設計・制御の思想にもとづくものではなく、生命的な複雑さをまるごとつかみ、それを育てていくような「農業的な育成」型の学問になるのではないかと僕は考えています --- それがどういうことなのかは、正直まだはっきりとはわかりませんが。

井庭研では「新しい学問」をつくるんだという話は、そういうことに興味が湧く人にとっては、その挑戦・議論に参加できるという魅力があると思いますが、必ずしも学生メンバーの一人ひとりに求めるものではありません。それでも、これから取り組む研究が、そのようなワクワクする知的な冒険の一部であるということを「なんだか、面白そう!」と思ってくれる人を歓迎します。

なお、今年の春休み期間中に、パターン・ランゲージのつくり方について研究する特別研究プロジェクトを実施します。春学期から新しく入るメンバーも原則として参加してほしいと思っています(春学期からの研究プロジェクト参加のための助走・準備になるとともに、いろいろなメンバーと仲よくなる機会になります)。

  • 2021年度 春の特別研究プロジェクト(井庭研)シラバス 「オンライン時代のパターン・ランゲージのつくりかた研究」(2021年 2月22日(月)〜3月5日(金))

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    ■Education - 本格的に「つくる」経験を積んでいくクリエイティブ・ラーニング

    井庭研では、以上のような研究において、本格的に「つくる」経験を積むクリエイティブ・ラーニング」(創造的な学びつくることによる学び)によって、物事への理解を深め、力を養っていきます。これからの創造的な未来を生きるみんなにとって、井庭研で「つくる」経験を徹底的に積むということは、人生における重要な"財産"を得ることになるはずです。井庭研での「つくる」経験を糧として、将来、自分たちで「未来をつくる」ことに寄与・貢献していってほしいと思っています。

    かつて、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)を構想した石川忠雄 元・塾長は、これからの社会で必要となる人を育てるために、慶應義塾に新しい学部(SFC)をつくることを提唱しました。これからの変化の時代においては、「豊かな発想で問題を発見し、分析し、推理し、判断して、実行をすること」が必要になり、それが「人間が経験のない新しい現象に対応する時に使う最も重要な能力」であるとして、「『ものを考える力』を強くするという教育をどうしてもしなければならない」(石川忠雄『未来を創るこころ』)と考えたのです。こうして、「未来を創る大学」として、SFCでは「個性を引き出し、優れた創造性を養い、考える力を強くする教育」が重視されてきました。井庭研では、この問題意識と方針をしっかり受け継ぎ、さらに創造(つくる)の面を強化して、教育・育成にあたっています。

    パターン・ランゲージという「未来をつくる言葉」をつくるという研究・実践のなかで、「パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力」および「他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力」を身につけてほしいと思います。

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    将来的には、なるべく大学院まで進み、しっかりと経験を積んでいくことを強く推奨しています。大学院への進学は、研究者になるためではなく自らの力を高め、センス(感性)を磨き、本当に「未来をつくる」ことができる人として、社会に巣立ち活躍するようになるためです。学部4年生で卒業する人がいても構いませんが、少なくとも修士までの「6年制一貫教育」だというくらいの心持ち・意気込みでいてくれると、本腰を入れて取り組み、大きく成長することができるのではないかと思います。そのくらい本格的に取り組んで初めて、日本や世界において実際に変化をもたらし、「未来をつくる」人になる道が開かれるのです。博士課程まで進み、その道の第一人者になるまで「突き抜け」、未来をつくることを先導していけるようになる人も歓迎します。

    僕は、井庭研で修士マスター:master)になるということは、「未来をつくる言葉」をつくることを自分の領域で経験し、ひととおりのことをマスターした人になるということであり、博士ドクター:doctor)は、社会の問題(病)が解消・治癒されるように治療するドクター(社会の問題を治す医者)になるということだと捉えています。そのためのマスター・コース、ドクター・コースであり、必ずしも研究者になるための場ということではありません(もちろん、「未来をつくる」一つの職業として、研究者という立ち位置は選択肢の一つになると思いますが)。これは、「21世紀の社会を担うプロフェッショナル」=「高度な職業人を育成する」というSFCの大学院(政策・メディア研究科)の趣旨にもずばり合う捉え方です。

    研究会に入る前から、そのように進路を決めたり、恐れおののいたりする必要はありません。ただ、井庭研で取り組んでいることや、そこで身につける力とセンス(感性)が、単に大学時代から就職に向かうための「通り道」なのではなく、自分の人生を自分でつくっていく(そして社会に貢献し、未来をよりよくしていく)ための力とセンス(感性)をしっかりと身につける重要なステップ=階段であると知っておいてもらえればと思います。一段上るだけでなく、何段も上っていかないと、新しい見通しの視野は開けてこないのです。

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    ■Project - 2021年度のプロジェクト

    2021年度は、以下の11のプロジェクトを予定しています。井庭研のメンバーは、どれかひとつのプロジェクトに参加し、研究に取り組みます。 各プロジェクトは、複数人で構成され、成果を生み出すためのチームとして、ともに助け合い、高め合い、学び合いながら、研究に取り組みます。

    (1) 自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成
    (2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成
    (3) 組織の理念を具体的的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成
    (4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成
    (5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助
    (6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン
    (7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作
    (8)「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発
    (9) 商いの実践探究コミュニティの研究
    (10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想
    (11) 音楽作曲のパターン・ランゲージの作成(新規募集無し)


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    各プロジェクトの概要は、以下のとおりです。各プロジェクトで扱うテーマの範囲・特徴がわかる重要文献のリストは、こちら「2021年春学期 井庭研 各プロジェクトにまつわる文献リスト」を参照してください。

    (1) 自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成
    現代社会では、人間は自然との関わりの多くを失い、人工的な環境・制度のなかで育ち・暮らしています。その「人間関係」「人工的な環境・制度」のなかで息苦しさや窮屈さ、閉塞感を感じている人は多く、心身への悪影響も少なからずあるようです。そこで、本プロジェクトでは、子どもの健全な成長を支え、生きる力を育むこと、そして、よりいきいきと暮らしていく人生に向けての心身の豊かな土壌を養うことを目指します。具体的には、0〜14歳くらいの子どもの子育て中の親や、保育・教育に携わる人が、どのように「自然のなかの子育て・暮らし」を実現することができるのかを明らかにし、「自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージ」を作成していきます。作成にあたっては、北欧から始まった「森の幼稚園」や、日本での里山遊び、シュタイナー教育、自然を読み解く力などについての文献調査を中心に、関係者のインタビューも行うことで、実践における大切なことを抽出・言語化・体系化していきます。

    (2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成
    軽井沢風越学園や大日向小学校 しなのイエナプランスクールなど、日本でも新しいタイプの学校が始まっており、また全国のいろいろな学校でさまざまな工夫がなされています。未来に向けた創造的な人を育てる教育は、どのようにデザイン(設計)され、実践されているのでしょうか? 本プロジェクトでは、主に「創造的な学び」(クリエイティブ・ラーニング)の面に注目し、そのような創造的な教育実践を行っている学校を研究し、関係者にインタビューすることで、設計・実践上の大切なことを抽出・言語化・体系化し、「新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージ」を作成していきます。

    (3) 組織の理念を具体的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成
    組織が大切にしている理念やコア・バリューが、個々の実践においてしっかりと体現されるようになるには、どのような支援ができるでしょうか? 本プロジェクトでは、理念やコア・バリューのひとつひとつが、どのような状況でどのように実践されているのかを明らかにし、それをもとに、理念やコア・バリューを実践につなげるためのパターン・ランゲージを作成します。本プロジェクトは、ある企業との共同研究として行われ、具体的にその企業の理念・状況に合わせてパターン・ランゲージを作成した後には、実際に組織内での活用導入・効果検証へとつなげていく予定です。

    (4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成
    人間の暮らしは自然との関係のなかで成り立っています。食品や衣類はもちろん、エネルギーや日々の生活で用いるあらゆる物は自然資源を活用しています。しかし、近代化の過程で、暮らしや産業の変化とともに人間と自然との関係も変化し、過開発による生態系の破壊(オーバーユース)、あるいは管理放棄による荒廃(アンダーユース)といった問題が発生しています。こうした状況に対し、各地域レベルでどのように自然との関係を再構築していくことができるでしょうか? そして、そのための活動をどのように展開していけばよいのでしょうか? 本プロジェクトでは、生態系保全・活用の活動がうまくいっている事例を研究し、そこから実践上の大切なことを抽出・言語化・体系化して「生態系保全活動のパターン・ランゲージ」を作成します。これまではフィールドワークとインタビューによって調査を進めてきましたが、来学期は、主に文献調査を中心として事例・知見を研究していきます。

    (5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助
    これまで井庭研では、仕事、教育、暮らし、生き方などのさまざまな分野のパターン・ランゲージをつくってきました。それらのパターン・ランゲージは、いろいろな分野の実践上のコツ・大切なことを共有するための実践支援のために活用されています(実践を支える言語)。また、パターン・ランゲージを用いると、自らの経験や未来について語り合うことができるようになることもわかっています(コミュニケーションのメディア)。さらに、他者の実践・事例を見たときに、何をしてどういう効果が出ているのかを分節化して把握しやすくもなります(認識の眼鏡)。本プロジェクトでは、このような効果をもつパターン・ランゲージを、国内外の諸地域の人々のエンパワーに活かしていくことを試みます。例えば、フィリピンの若者の支援として、現地の関係者や支援者と協力し合いながら、これまで井庭研でつくってきたパターンのなかから重要なパターンのセットをつくり、現地語で提供し、活用するための伴走を行います(パターン・ランゲージ・リミックスと伴走型支援)。その実践のなかで、人々のケイパビリティ(潜在能力)を高める、新しい開発援助(発達・発展の支援)のかたちを構築していきます。本プロジェクトでは、海外だけでなく、日本の地方の高校生のエンパワーメントなどにも取り組みたいと思っています。

    (6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン
    高齢者ケアの分野では、現場での実践のなかで多くのことが学ばれていますが、そのような現場での学びにおいて、どのようによりよいケア・介護について意識・経験を豊かにしていくことができるでしょうか? 本研究プロジェクトでは、パターン・ランゲージを用いた対話や実践支援による新しいアプローチを開発し、実践導入していきます。具体的には、井庭研でこれまでに作成してきた「ともに生きることば:その人らしく生きるケアの実践」(仮)や『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』とともに、『対話のことば』や『コラボレーション・パターン』『おもてなしデザイン・パターン』など、井庭研で作成してきた様々なパターン・ランゲージを活用し、実際に介護施設等で研修を実施していきます。支援する側/支援される側という区分を超えて、自分たちの「ともに生きる」スタイルを育てていくことを促すことを目指します。

    (7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作
    「自分らしい、よい人生を送りたい」という思いは、誰もが持っているでしょう。しかし実際には、世の中の常識的な生き方を踏襲して、思うようにはいかないと感じている人も多いのではないでしょうか。そのような現代の日本において、自分なりにワクワクする人生を生きている人は、一体、どのようにしてそのような生き方・人生が可能になったのでしょうか? 井庭研では2020年度に、ワクワクする人生を生きている方々にインタビューし、「ワクワクする人生の育て方:一度きりの人生を自分らしく生きるヒント」というパターン・ランゲージを作成しました。そのなかで、ワクワクする人生を生きている方々は、「庭」を育てるように自分の人生を育て、楽しんでいることがわかりました。本プロジェクトでは、その成果を活かして、「ワクワクする人生」を生きている人たちの「人生の育て方」を紹介する「ZINE」(ジン:オリジナルの小冊子の雑誌)を制作し、ワクワクする人生を生きたいと思う人の生き方の参考になることを目指します。

    (8)「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発
    芸術でも、学問でも、スポーツでも、どのような分野でも、「道を極める」ということは、極めた者にしかわからない世界です。しかし、「道を極める」上で何が大切かということは、もしかしたら知ることができるかもしれません。そこで、井庭研では2020年度に、「道を極める」ということを研究し、「道を極める」ことのパターン・ランゲージを作成しました。その研究では、650年以上続いている「能」の世界の道の極めかたを、秘伝書である『風姿花伝』を読み解くとともに、能楽師にもインタビューをして、「道を極める」ための大切なことを明らかにしてきました。本プロジェクトでは、その成果を活かして、「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発に取り組みます。ここでいうボードゲームというのは、「道を極める人生ゲーム」のようなものだと考えれば、イメージしやすいと思います。そのようなゲームがあることで、遊んでいるなかで、道を極める感覚を養ったり、チームメンバーと共通認識をもったり、家族で大切なことを共有し語り合ったりすることができるようになると考えられます。本プロジェクトでは、子どもから大人まで、ゲームとして楽しむことができるボードゲームの開発を目指します。

    (9) 商いの実践探究コミュニティの研究
    実践者がそれぞれ探究し、集まり交流する「実践探究コミュニティ」と呼び得るコミュニティがあります。小阪裕司さんが主宰するワクワク系マーケティング実践会では、1500店・社の会員が、日々の商いの実践について報告し、交流し、学び合っています。そのような実践探究コミュニティはどのように成り立ち、どのような学びが展開されているのでしょうか? また、なぜ、成立が難しい大人数の「学びのコミュニティ」が維持され、拡大し得ているのでしょうか? 本プロジェクトではその秘密に迫り、そのメカニズムを明らかにしていきます。本プロジェクトの成果は、単に現存するコミュニティの研究にとどまらず、これから立ち上がるコミュニティに対しても役に立つ知見を得ることを目指します。本研究は、小阪裕司さんのオラクルひと・しくみ研究所との共同研究です。

    (10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想
    地球温暖化に象徴されるような地球環境破壊は、人類の拡大的な活動の結果であり、それは資本主義による自然の搾取の結果だと言われています。そのような現状のなか、私たち人類は、資本主義や経済への依存の状態からいかにして離れることができるでしょうか? そのひとつの可能性が、「創造社会」(creative society)にあると思われます。一人ひとりが日常的な創造性を駆使し、いろいろな物や仕組みをつくることができるようになると、経済的な調達に頼らなくてよくなります。また、社会の共創システムが大規模に立ち上がることになれば、これまでとは異なる社会のあり方を切り拓くことができるでしょう。本プロジェクトでは、そのような資本主義を卒業する「卒資本主義」の可能性を探っていきます。また、民主的な社会の実現のために、一部の人に集合的決定を委ねるかたちとは異なる、新しい民主主義の可能性についても探究します。かつてアメリカのプラグマティズム哲学者ジョン・デューイが「創造的民主主義」(creative democracy)と呼び、日本の政治学者 宇野重規が「プラグマティズム型の民主主義」と呼んだ、民主主義の新しいあり方を、創造社会やパターン・ランゲージに絡めて構想していきます。

    (11) 音楽作曲のパターン・ランゲージの作成
    音楽の楽曲に潜む秩序・構造の分析と、作曲における発想・考え方を研究し、楽曲の設計のパターン・ランゲージとしてまとめていきます。パターン・ランゲージの分野のなかでは、芸術における創造に直球で向き合う珍しい、挑戦的なプロジェクトです。また、作曲の実践についてや、音楽をマスターするということに関するパターン・ランゲージも作成します。本研究は、映画やCMの映像音楽を手がける作曲家・音楽プロデューサーの渡邊崇さん(大阪音楽大学特任准教授)との共同研究です。本プロジェクトは、2020年度からの継続プロジェクトで、新規メンバー募集はありません。


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    【履修条件】

  • 知的な好奇心と、創造への情熱を持っている多様な人を募集します。
  • 井庭研での研究・活動に積極的かつ徹底的に取り組もうという気持ちがあること。
  • 「知的・創造的なコミュニティ」としての井庭研を、与えられたものとしてのではなく、一緒につくっていく意志があること。


    【その他・留意事項】

  • 井庭研では、たくさん本を読みます。難しいものもたくさん読みます。それは、知識を身につけるというだけでなく、考え方の型を知り、考える力をつけるためでもあります。さらに、他のメンバーとの共通認識を持ち、共通言語で話すことができるようになるためでもあります。創造の基盤となるのです。

  • 井庭研では、たくさん話して、たくさん手を動かします。文献を読んで考えるということはたくさんやりますが、それだけでは足りません。他のメンバーと議論し、ともに考え、一緒につくっていく、ということによって、一人ひとりの限界を超えることができます。こうして、ようやく《世界を変える力》をもつものをつくることができるのです。

  • 2021年度春学期も、全活動をオンラインで行います。安定したネット環境で参加してください。

  • 現1年生(9月生含む)、大歓迎です。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を推奨しています。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

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    【授業スケジュール】

    井庭研では、どっぷりと浸かって日々一緒に活動に取り組むことが大切だと考えています。大学生活の・時間割上の一部の時間を井庭研の活動に当てるというよりは、 井庭研が大学生活のベースになるということです。井庭研に入るということは、SFCでの「ホーム」ができるということもあるのです。創造的な活動とその社会的な変革は、毎週数時間集まって作業するというだけでは成り立ちません。いつも、どこにいても考え、アンテナを張り、必要なときに必要なだけ手を動かすことが不可欠です。そのため、自分の生活の一部を埋めるような感覚ではなく、生活の全体に重なり、日々の土台となるようなイメージをもってもらえればと思います。

    そのなかでも、全員で集まって活動する時間も、しっかりとります。各自が準備をしたり勉強したりする時間とは別に、みんなで集まって話し合ったり、作業を進める時間が必要だからです。井庭研では、 水曜の3限から夜までと、木曜の4限から夜までの時間は、メンバー全員で集まって活動する 《まとまった時間》 としています。これらの時間は、授業や他の予定を入れないようにしてください。


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    【評価方法】

    研究・実践活動への貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。


    【エントリー課題】

    このシラバスをよく読んだ上で、2月6日(土)までに、指定の内容を書いたメールを提出してください。

    エントリーメールの提出先: ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp ([at]を@に変えてください)

    メールのサブジェクト(件名): 井庭研(2021春) 履修希望

    以下の内容を書いたファイル(PDF)を、メールに添付してください。


    件名:井庭研(2021春)履修希望

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真や絵などを入れてください)
    3. 井庭研の志望理由
    4. この研究会シラバスを読んで、強く惹かれたところや共感・共鳴したところ
    5. 参加したいプロジェクト(複数ある場合は、第一希望など、明示してください)
    6. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    7. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    8. これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
    9. これまでに所属した研究会と、来学期、並行して所属することを考えている研究会(あれば)

    2⽉8日(月)・9(火)に面接@オンラインを行う予定です。詳細の日時については、エントリー〆切後に個別に連絡します。

    ※エントリーを考えている人は、「井庭研に興味があるSFC生の連絡先登録(2020年12月〜2021年2月用)」に登録してください。最新情報をメールで送ります。

    ※最新情報や説明の映像などを、こちら「慶応SFC 井庭研2021年度 新規エントリー者向け情報」(note)にアップしていく予定です。そちらのページもたまにチェックしてみてください。


    【教材・参考文献】

    井庭研共通の重要文献は、以下の通りです。プロジェクトごとの文献リストは、こちら「2021年春学期 井庭研 各プロジェクトにまつわる文献リスト」をご覧ください。



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