千葉県鴨川市に所在する医療法人亀田メディカルセンター(以下亀田病院)の視察リポート。
亀田病院では、院内で共通利用できる電子カルテシステムを開発、運営している。当初はIBMとの共同開発により始めプロトタイプの設計だけでも2~3年を費やし94年秋に入院病棟を最初に立ち上げた。その後病院の関連会社を設立し現在では14名のITスタッフが在籍し独自開発している。システムは200床以上の規模の病院で一般的に適応できるようパッケージ化されており、300~400床程度の病院を対象に販売、関西方面の病院では好評だそうである。亀田病院の電子カルテシステムの特徴は、他の大学関係では科毎のカルテであるのに対し「1患者1カルテ」としていることだ。亀田病院では1患者1カルテをシステム導入以前より実現していたことから電子カルテシステムの導入もスムーズに実現できた。また現在では患者に対しカルテ開示するPLANETというサービスの提供をしているが、患者を中心とした1患者1カルテによる情報開示は患者側にも有益である。
電子カルテシステム導入の経緯について、そもそも入院のカルテと外来のカルテは事業所毎になければいけなかったが亀田病院は別事業所となっていることから、カルテを統合するためには電子化は必須であった。しかし導入にあたり医者の反対が多く理事長の海外出張中に導入延期となるなど混乱もあったが、理事長の主導により導入予定日に間に合わせた経緯もある。
システム導入後の運営における亀田の特徴として、一度作成したシステムをフレキシブルに変更できる体質だ。開業当初は週に3、4回プログラムが変わるほどフレキシブルに対応した。病院内では合理的に考えられる体質が上から下まであり、電子カルテ改善委員会を設置し意見を反映、システム導入への準備および導入後の改善へと成果をあげている。亀田病院の先生方からもそのフレキシブルさが伝わってくる。「電子カルテは生きている。生き物だ。理論は当然変わる。変化に応じて医療情報を変えるものだと感じている。無論造り変えて、使いにくくなる部分もあるのは当然である。しかし自分も病院の一員で、この病院が良くなって欲しいと思う人がメジャーである。院内でこのような考えを持つ背景には、経営者が情報に明るいこと、そして声の大きさに偏らない合理的な体質があるからだ。」そう発言する自身に満ちた先生が印象的であった。
(補足) 亀田病院の関連会社で電子カルテASP事業をする株式会社アピウスは資本金4.8億円で各種ベンチャーキャピタルが出資しており、株式上場を視野にいれた亀田病院経営者のモチベーション向上に貢献していると推測する。
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