Rundgren, Todd
中でもTodd Rundgrenのライノレーベルからの再発は、ちょっとした大事件であった。とくにファースト、セカンドは当時ほとんど手にはいることはなく、そのジャケットセンスと名曲Be nice to meがはいったセカンドはかなりの値がついていた。それがすべて再発である。
このアルバムは、Toddのメロディセンスがいかんなく発揮されたアルバムであるが、何よりも手触り感のする音の作りが素晴らしい。1曲目はドリーミィな雰囲気をただよわせた、Toddらしいポップな曲。そして2曲目はチャイムの音が美しい、バラード。いかにもToddらしい甘美でメランコリックな名曲。5曲目はワルツのリズムにのせた、わずか2分半の小曲だが、ギターの音色のせつなさが心に響く名曲。そしてアコースティックギターから始まり、Toddのヴォーカルが重なるうちに、曲が壮大に展開する6曲目は、このアルバムの一番の盛り上がりどころである。とくにThis is the ending of my songの歌詞にぐっとくる。
Toddのアルバムのなかでこのアルバムが人気があるのも、どの曲もメロディがまとまっていて、他のアルバムにある変調や、あるいはとっぴょうしもなくヘヴィーな曲がほとんどはいっていないせいだろう。その分Toddがかなりの嗜好をみせるハードロック感はここでは抑えられ、こじんまりした感じも受けるが、それほどソウルでもなく、もちろんフォークでもなく、エンジニアとして凝りに凝ったというほどでもない・・・。それらのテイストがほどよく織り込まれ、そのあたりのアレンジの品のよさが、Toddの職人芸のなせるわざなのだと思う。ここまでのポップアルバムをつくるのは並大抵のことではないだろう。そしてここにおさめられた曲は決して古くならない、時代をこえたエヴァー・グリーンな輝きがある。
Be nice to meはやっぱり美しい。曲の後半、nice to meの「ミ〜」の高音のところがすっとひきのばされ、ピアノと鐘の音がかさなるところなど、何度聞いても心をうたれる。
なんだか凡庸な比喩ばかりで、「Toddらしい」という言い方に終始してしまった・・・が、とにかく時代の流れとはまったく関係のないところに存在する、ロックアルバムの古典だということは間違いないだろう。