情報社会学を構築するの最近のブログ記事

ドメイン・ネームとIPアドレスを管理するICANNが、米国政府(だけ)の手を離れて、各国政府との関係を結ぶという決定を下した。これはインターネットの歴史の中では大きな出来事で、きっと年表に中には書かれることになるだろう。

インドの友人がわかりやすいコラムを書いたので紹介。

Subimal Bhattacharjee, "League of Cyberspace Nations," livemint.com (October 7, 2009).

民主主義の同盟なんて言葉がはやっているけど、サイバースペース国家の同盟だそうだ。

【追記】前村さんのエントリーも参考になりますね。

「噂の政治的・社会的インパクト」なんてテーマの会議がシンガポールの南洋工科大学で開かれるそうです。知り合いから頼まれたので載せておきます。論文の締切は10月28日です。開催は来年2月22日です。

Call for Papers - The Political and Social Impact of Rumours

 ゴールデンウィークが終わってからようやく調子が出てきたなあと思っていたら、その分、忙しくなってきて、もう息切れ気味になっている。

 週末になって気分転換がしたくなり、読んでいなかったマルコム・グラッドウェルの『ティッピング・ポイント(The Tipping Point)』と『第1感(blink)』を続けて読む。アメリカにいるとき、『Outliers』がベストセラーになっていて(翻訳のタイトルは『天才!』らしい。注文したけどまだ届いていない)、audible.comからダウンロードした朗読版を聞いていた。『Outliers』のおかげで『ティッピング・ポイント』も『第1感』もアメリカの本屋で平積みになっていたので、読みたいなあと思っていた。
 『ティッピング・ポイント』のtipとは傾くこと。物事が一気に傾くところがティッピング・ポイント。創発(emergence)の概念と似ている(たぶん同じだ)。バラバシやワッツが紹介するネットワーク理論の考え方も入っている。インフルエンザが騒がれている今の時期に読むとちょっとおもしろい。きっとコネクターと呼ばれるばらまき屋がウイルスを広めているのだろう。潜伏期間があることを考えると、コネクターが飛行機に乗って世界中を飛び回るのを止めるのは不可能だ。
 『第1感』の最初に出てくるクーロス像と愛情ラボのエピソードはどこかで読んだ気がした。書いてありそうな本を30分ほどあさってみたが見つからない。どこだったかなあと考えたら、ある講演会で紹介されていたのだった。講演会の資料をひっくり返したら書いてあった。私の第1感はいまいち切れが悪い。しかし、「なんとなく」が第1感では重要だ。第1感のアイデアはスロウィッキーの『「みんなの意見」は案外正しい』に近いが、『第1感』では専門家の能力により力点が置かれている。

 同じようなアイデアが創発して、大きな流れを作り出している気がする。インターネットが出てこなければこれだけネットワークへの注目は高まらなかったかもしれないが、ネットワークの概念はインターネットにとどまらない。

 次は何を読もうかと思いながらスケジュール表をちらっと見ると、これから2週間はメチャクチャ忙しそうだ。業績につながらない締切が少なくとも6つある。授業もある。ICPCもある。第1感じゃなくても危険なことが分かる。

インターネットの未来に関する議論が世界中で始まっている。IPアドレスの枯渇の話はいうまでもなく、セキュリティやフィルタリングなどいろいろなトピックが出てきているし、キルナム・チョン先生のようにあと40億人つなぎましょうという人も出てきている。

そんな流れの中で私もヨーロッパのプロジェクトに参加することになった。ウェブ(ブログ)も少し前から立ち上がっている。私も世界の人たちに向けて日本やアジアのニュースを投稿することが期待されている。自分のブログも定期的に書けないのだから、できるかどうか不安だが前向きにやってみよう。

Towards a Future Internet

このプロジェクト、この秋から来年にかけて、ベルギーのブリュッセル、アメリカのボストン、そして東京で次々にワークショップを開催しながら、インターネットの未来に向けたシナリオ作りをする予定。楽しみだ。

昨年、第1回が開かれたハーバード大学の政治的ネットワーク・カンファレンスの第2回が6月11日から13日まで開かれるそうで、プログラムが決定したようだ。

http://www.hks.harvard.edu/netgov/html/colloquia_HPNC2009.htm

それほど名前の知られていない人が多い。昨年の感じからすると、若い大学院生などの発表が多いのだと思う。しかし、今年のトリは『新ネットワーク思考』のバラバシだ。

とても行きたい。久しぶりにケンブリッジの空気が吸いたい。6月は良い季節だ。しかし、13日か14日のどちらか、日本で学会発表をしなくてはいけない。13日の朝に発表があるとすれば、11日の朝にアメリカを出て12日の夕方に日本着になる。どう見ても無理だ。実に、実に残念。

3月16日(月)に情報通信学会のソーシャル・イノベーション研究会の今年度最終回を開催します。

スピーカーは韓国のインターネットの父といわれるキルナム・チョン教授です。幸い、日本語で講演してくださる予定です。

チョン教授はアフリカとアジアで取り残されている人々にインターネット・アクセスを提供するためのプロジェクトを開始しておられます。その概要と意気込みを伺う予定です。

ようやく私も出席の見込みです。



【日時】2009年3月16日(月)18:30~20:30

【発表者】キルナム・チョン氏(韓国KAIST教授、慶應義塾大学特別研究教授)

【テーマ】残り数十億人のための未来のインターネット

【概要】未来のインターネットに関する研究が世界中で始まっている。その多くは最初の10億人、つまり、先進国の現在のインターネット利用者に焦点を絞っている。残り数十億のインターネット・アクセスを持たない人々、特に発展途上国の人々のための研究努力もまた非常に重要である。これは、世界中の多くの研究者、先進国および発展途上国の双方の研究者にとって良い研究機会となるだろう。

※講演は日本語で行われます(資料は英語のみになります)。

【会場】インテル株式会社内 会議室
     千代田区丸の内 3-1-1 国際ビル 5階
     (JR有楽町駅徒歩3分。東京駅徒歩6分。)
http://www.intel.co.jp/jp/intel/map_tokyo.htm

【申し込み】情報通信学会事務局研究会窓口(kenkyu2◆jotsugakkai.or.jp)にメールでお申し込み下さい(◆を@に代えてください)。

主査がいないまま行われている情報通信学会のソーシャル・イノベーション研究会の第3回研究会が開かれます。学会員以外でも参加可能ですので、お申し込みの上、ご参加ください。


ICTのイノベーションにより、選挙はどのように変わるのか―日米韓の比較討論会
開催日時 12月23日(火) 午後1時から3時
会場    国立情報学研究所(学術総合センター)12階講義室I・II
共催    国立情報学研究所
会場の準備の都合により、事前申込が必要になります。
12月19日(金)までに事務局(kenkyu3@jotsugakkai.or.jp)にお申込ください。

パネリスト

司会  上田昌史 国立情報学研究所助教

発表者 杉原佳尭 
インテル株式会社 渉外部長、 特定非営利活動法人 地域情報化推進機構 理事長
自民党本部勤務、長野県知事選挙の総括責任者、自身も芦屋市長選挙に出馬、残念ながら次点。著書に 『ソフトな政治(一世出版)、 民主主義は機能しているか?』(英治出版)

発表者 李洪千(り・ほんちょん)
慶應義塾グローバルCOE研究員、2002年韓国大統領選挙民主党候補演説秘書

発表者 清原聖子
情報通信総合研究所研究員、慶應義塾大学法学部・総合政策学部非常勤講師
著書に『現代アメリカのテレコミュニケーション政策過程 ユニバーサル・サービス基金の改革』(慶應義塾大学出版会)、情報通信総合研究所ホームページ記事「第4回:民主党オバマ候補の圧勝―Web2.0時代の大統領選挙戦」
http://www.icr.co.jp/newsletter/usvote/2008/uv2008004.html

講演題目と要旨

杉原
●タイトル 日本の選挙:その理想と現実
●要旨
アメリカやその他選挙戦をみているとメディア戦略、マーケット戦略など企業の戦略をとりいれて上手く生かしたものが、多い。また、当選している候補者は、メッセージをたくみに操り、国民への浸透に成功している。それに比べて、日本は、小泉選挙のときに、世耕参議院議員がその試みをしたものの、その後の展開は見受けられない。公職選挙法も含めて、実際の選挙現場でなにが行われているのかを紹介し、その理由を考えたい。


●タイトル:市民ジャーナリズムと大統領選挙に及ぼしたインターネットの影響
●要旨:選挙結果に与えるインターネットの影響は特に韓国において強いと言われている。特に2002年の大統領選挙は、オーマイニュースなどの市民ジャーナリズムが盧武鉉政権の誕生に大きな役割を果たしたという事が通説である。しかし、当時のメディア利用に関するアンケート調査を見るとインターネットから選挙情報を得ている人は少人数であり、年齢層においても20代~30代に偏っており、多くの人は従来のオールドメディアを情報源としていた。また、盧武鉉氏への支持率も選挙告示前と選挙期間中に変化がなく、一環して野党の候補より優位であった。それにしても、インターネットの影響が強く語られていることを考えるとインターネットの影響が無かったとは言い切れない。従って、2002年の大統領選挙においては、インターネットから有権者という直接的な影響を考えるより、迂回または間接的な影響を考えることが妥当であろう。本報告では、その詳細を説明させていただきたい。

清原
●タイトル:2008年米国大統領選挙戦におけるインターネットの利用とその影響
●要旨:2008年米国大統領選挙戦は1年半の長期にわたったが、ついに民主党のオバマ候補の勝利により幕を閉じた。オバマ氏の勝利の要因の分析はこれから多くの政治学者の手により、様々な角度から行われるであろう。ここではインターネットを使った選挙運動戦略に焦点を当てたい。オバマ氏は予備選挙中からFacebookや携帯電話のテキストメッセージなど、新しいメディアを巧みに利用することで、選挙に関心の薄い若年層の掘り起こし、そして、多額の選挙資金を集めることに成功した。それは本選挙終盤での全国的なテレビCMを可能にする豊富な資金源ともなった。2008年の大統領選挙戦では、2000年や2004年の大統領選挙戦と比べても、インターネットが選挙戦において非常に大きな役割を果たしたと言えるだろう。今回の報告では、2008年大統領選挙戦を振り返り、特にオバマ陣営のインターネット選挙戦略を検討してみたい。

以前にもお知らせしたとおり、情報通信学会のソーシャル・イノベーション研究会第2回が9月18日に開催されます。総務省の情報流通行政局から追加ゲストが来てくださるそうです。

申し込みは学会のウェブページの載せられている電子メール・アドレスからどうぞ。軽食付きです。


日時:2008年9月18日(木)18時~

場所:マルチメディア振興センター会議室

発表者:秋山美紀(慶應義塾大学総合政策学部専任講師)

題目:地域医療におけるコミュニケーションとICT

発表要旨:地域医療連携のためにICTを用いる関する各地の取り組み事例の中から、組織を越えて他職種が日常的にITを用いて情報共有している成功事例について、密度の濃いフィールドワークを行い、定量的・定性的に分析を行った結果を報告する。非同期で蓄積型という特徴を持つメディアが、医師と共同で医療を行う職種に対して、効果をもたらしていることが明らかになっている。

参考資料:秋山美紀『地域医療におけるコミュニケーションと情報技術―医療現場エンパワーメントの視点から』慶應義塾大学出版会、2008年。

MITの学生たちが、ボストンの地下鉄に関するセキュリティについて分析し、カンファレンスで発表しようとしたところ、それを禁じられるという騒ぎが起きた。EFFがMITの3人の学生を支援するべく法廷で争おうとしている。学問の自由と抵触するというわけだ。MITの学生たちには頑張って欲しい。

EFF Urges Judge to Lift Gag Order on MIT Students

タングルウッドの夜の公演からそのまま帰宅すると夜の1時ぐらいになるので、今回は途中の安宿で一泊。翌日は独立戦争で知られるコンコードを散策。イギリス軍と民兵が最初に戦火を交えたノース・ブリッジを見る。復元された橋が架かっていて渡ることができる。橋の手前には戦死したイギリス兵の墓がある。

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昼食を食べている間に大雨になって雷が鳴り始める。と思ったらすぐにやんだので、ヘンリー・デイヴィッド・ソローが『森の生活』を送ったウォールデン湖を見に行く。駐車場の横に彼が暮らした小屋のレプリカがある。ワンルームで日本の学生の下宿みたいな感じだ。ベッドと机、それに暖房兼調理用のストーブがあるだけ。実際に小屋があったところは湖沿いに10分ほど歩くと見つかり、礎石が残っている。ソローの『森の生活』は最近は日本でも見直されてアウトドア系の雑誌などでも紹介されるようになっている。

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現在のウォールデン湖はレクリエーション・スポットになっていて、家族連れが湖水浴にたくさん来ている。

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数年前にカリフォルニアでネットの関係者にインタビューをしていたとき、「市民的不服従」という言葉が出てきた。これはソローの死後にまとめられた本のタイトルになっている。自分の信じるところに従って政府の政策には従わないといったような意味だと思うが、そのネット関係者は、政府が主導してネット・インフラを作ることに反対していて、その議論の中で出てきた言葉だ。とても印象に残っていて、ソローのことをもっと知りたいと思っていたので、彼の小屋を見るのは興味深かった。

2年あまりとはいえ、あんなところで一人で過ごすのは大変だろう。そうした反骨精神ともいえるような強い思いが当初のネットを作った人たちの中に息づいているとしたらおもしろい。市民的不服従はソローの後、ガンジーやアメリカの公民権運動にも受け継がれていく強い思想になっていく。

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