情報社会学を構築する: 2008年11月アーカイブ
主査がいないまま行われている情報通信学会のソーシャル・イノベーション研究会の第3回研究会が開かれます。学会員以外でも参加可能ですので、お申し込みの上、ご参加ください。
「ICTのイノベーションにより、選挙はどのように変わるのか―日米韓の比較討論会」
開催日時 12月23日(火) 午後1時から3時
会場 国立情報学研究所(学術総合センター)12階講義室I・II
共催 国立情報学研究所
会場の準備の都合により、事前申込が必要になります。
12月19日(金)までに事務局(kenkyu3@jotsugakkai.or.jp)にお申込ください。
パネリスト
司会 上田昌史 国立情報学研究所助教
発表者 杉原佳尭
インテル株式会社 渉外部長、 特定非営利活動法人 地域情報化推進機構 理事長
自民党本部勤務、長野県知事選挙の総括責任者、自身も芦屋市長選挙に出馬、残念ながら次点。著書に 『ソフトな政治(一世出版)、 民主主義は機能しているか?』(英治出版)
発表者 李洪千(り・ほんちょん)
慶應義塾グローバルCOE研究員、2002年韓国大統領選挙民主党候補演説秘書
発表者 清原聖子
情報通信総合研究所研究員、慶應義塾大学法学部・総合政策学部非常勤講師
著書に『現代アメリカのテレコミュニケーション政策過程 ユニバーサル・サービス基金の改革』(慶應義塾大学出版会)、情報通信総合研究所ホームページ記事「第4回:民主党オバマ候補の圧勝―Web2.0時代の大統領選挙戦」
http://www.icr.co.jp/newsletter/usvote/2008/uv2008004.html
講演題目と要旨
杉原
●タイトル 日本の選挙:その理想と現実
●要旨
アメリカやその他選挙戦をみているとメディア戦略、マーケット戦略など企業の戦略をとりいれて上手く生かしたものが、多い。また、当選している候補者は、メッセージをたくみに操り、国民への浸透に成功している。それに比べて、日本は、小泉選挙のときに、世耕参議院議員がその試みをしたものの、その後の展開は見受けられない。公職選挙法も含めて、実際の選挙現場でなにが行われているのかを紹介し、その理由を考えたい。
李
●タイトル:市民ジャーナリズムと大統領選挙に及ぼしたインターネットの影響
●要旨:選挙結果に与えるインターネットの影響は特に韓国において強いと言われている。特に2002年の大統領選挙は、オーマイニュースなどの市民ジャーナリズムが盧武鉉政権の誕生に大きな役割を果たしたという事が通説である。しかし、当時のメディア利用に関するアンケート調査を見るとインターネットから選挙情報を得ている人は少人数であり、年齢層においても20代~30代に偏っており、多くの人は従来のオールドメディアを情報源としていた。また、盧武鉉氏への支持率も選挙告示前と選挙期間中に変化がなく、一環して野党の候補より優位であった。それにしても、インターネットの影響が強く語られていることを考えるとインターネットの影響が無かったとは言い切れない。従って、2002年の大統領選挙においては、インターネットから有権者という直接的な影響を考えるより、迂回または間接的な影響を考えることが妥当であろう。本報告では、その詳細を説明させていただきたい。
清原
●タイトル:2008年米国大統領選挙戦におけるインターネットの利用とその影響
●要旨:2008年米国大統領選挙戦は1年半の長期にわたったが、ついに民主党のオバマ候補の勝利により幕を閉じた。オバマ氏の勝利の要因の分析はこれから多くの政治学者の手により、様々な角度から行われるであろう。ここではインターネットを使った選挙運動戦略に焦点を当てたい。オバマ氏は予備選挙中からFacebookや携帯電話のテキストメッセージなど、新しいメディアを巧みに利用することで、選挙に関心の薄い若年層の掘り起こし、そして、多額の選挙資金を集めることに成功した。それは本選挙終盤での全国的なテレビCMを可能にする豊富な資金源ともなった。2008年の大統領選挙戦では、2000年や2004年の大統領選挙戦と比べても、インターネットが選挙戦において非常に大きな役割を果たしたと言えるだろう。今回の報告では、2008年大統領選挙戦を振り返り、特にオバマ陣営のインターネット選挙戦略を検討してみたい。