Aug
22
2009

タケカワユキヒデ、Agnes in wonderland. Home recording demo in 1979 (1979)

|
 時間のないときに限って、ついユニオンに寄ってしまう。このときも少しだけと思い店内に入った瞬間に、ピアノの弾き語りに英語の歌詞、転調のきらびやかな曲にすっかりみせられた。Now Playingをみると、アグネスの文字が・・・だがあらためてよくみると、タケカワユキヒデのクレジットである。
 そのときにかかっていたのはオフィシャルのアグネスのほうではなく(こちらはまだ聞いていない)、その再発CDに2枚目として収録されていたデモ録音である。79年に発表されたゴダイゴが全面的にバックアップしたアグネス・チャンのアルバムのことはまったく知らなかった。またゴダイゴは、当時のはやりの曲を耳にしていたくらいである。だがこのデモ録音を聞くとメロディメイカーとしてのタケカワユキヒデの創意に舌を巻く。そう、よいメロディがどんどんあふれてきてしまい、気づくとすでに曲ができてしまっているような、なにも恐いもののない瞬間と言おうか。たとえば当時で思い出すのは、原田真二のシングル三連発だろうか。「てぃーんず・ぶるーす」、「キャンディ」、「シャドーボクサー」と立て続けにシングルがでたのは77年。「てぃーんず」のあとに、「キャンディ」のせつないメロディを聞いたときは、本当になんてこの人は才能がある人なんだろうと思った。そして「シャドーボクサー」はほとんど愛唱歌のように歌詞が浮かんでくるようなキャッチーでクールな名曲だ。
 デモ録音とはいえ、ヴォーカルが重ねられていたり、かなり凝ったつくりで実に完成されている。ビートルズのマジカル・ミステリー・ツアーではないが、マジックでミステリアスなんだけれども、それよりも曲自身のもつ高揚感と、それをしっかりと表現するヴォーカルの力強さに圧倒される。そう、「不思議の国」といっても、ドノヴァンのような伝統歌謡とは違って、彼の曲は洗練されているのだ。
 70年代後半とはどんな時代だったのだろうか。もはや音楽にメッセージ性はなく、さきほどの原田真二や、尾崎亜美、久保田早紀のようなメロディのきらびやかさと新鮮さが世界を明るく染めるような、そんな時代だろうか。
 いずれにせよ30年を経て今回日の目をみたこのデモには、バラードっぽいせつない曲もあれば、ポップスの軽快感を感じさせる曲もある。実に幸福感に包まれたアルバムなのだ。店内では2曲目のJabberwockyのサビのところですっかり購入を決心した。この曲、静かな予兆を秘めたメロディが、いっきに親しみやすいサビにいくところが、本当によいです。そしてWho am I?の静かに幕が開けるようなバラードの進行も素敵。で4曲目はビートルズ〜XTCの路線を忠実に踏んだ曲。と聞き惚れていて、あわてて現物を購入してそそくさとユニオンを立ち去りました。

Menu 1

main
personality
research
seminar1
seminar2
class1
class2
bibliographie
link
event
about
podcast