国際関係論: 2004年6月アーカイブ
経済学を落第したことがある身としては、ユーロダラーとかユーロ市場というのはどうも分かりにくいので、古い本だけど、及能正男『国際マネー戦争』(講談社現代新書、1987年)で少し勉強した。
ヨーロッパ(EUROPE)に集まったドルであるためにユーロ・ダラー(EURODOLLAR)と略称されるようになった、巨大な無国籍的な国際資金市場の誕生である。(22ページ)米国をはなれたドルがユーロ・ダラーと呼ばれるように、ドイツ国外にあるマルク建ての預金がユーロ・マルク、スイス国外にあるフラン建ての勘定がユーロ・スイス・フランと称されており、同様に日本国領土以外に所在する銀行が取引する日本円はユーロ円と呼ばれている。(78ページ)
広く非居住者に金融システムを開放し、居住者・非居住者間で当該主権通貨以外の通貨を自由に貸借する市場をユーロ通貨取引市場と呼んでいる。つまり、ロンドンで英ポンドを居住者間、居住者非居住者間、非居住者間で取引するのはいわば国内金融取引である。しかし、同じ関係の下でマルクやドルや円を定期預金の形で貸借する市場がユーロ・カレンシー市場である。(87〜88ページ)
結局のところ、最初はヨーロッパ(特にロンドン)で取引されるようになった米ドルのことだったが、徐々に、自国以外で取引される通貨をユーロカレンシーと呼ぶようになってきたようだ。
グローバリゼーションは80年代後半になって突然使われるようになった言葉だというが、この本でははっきりと次のように書いているのも興味深い。
グローバリゼーションとは経済規模の拡大、開放経済体制の進展、情報の迅速化と緻密化、取引内容の統一化、国内法・慣行規制の形骸化などによって、金融市場を第一義的な国内市場と第二義的な海外市場とに分断するという既定概念を放棄して、双方をひとつの合体した金融市場として見ることである。(191ページ)
それと、長年疑問だったことも解決した。
たとえば日本における国際金融市場のひとつの形態である外国為替市場をとらえてみても、丸の内界隈になにか特定の外国為替市場ビルというものがあって、そこの一室内で毎度NHKニュースにおなじみの、ワイシャツ姿の若い男性たち(最近は女性の進出もさかんであるが)が、マージャン台を特別に大きくしたような四角なテーブルをかこんで、両手に電話受信機を握りしめ、猛り狂い、怒鳴りあい、目をつりあげながら叫びつづけているのが、いわゆるトーキョイガイタメ市場だと思うのは錯覚である。あれはたとえば東京短資とか山根短資とかの公認ブローカー業者の事務室にすぎないのであって、実は同市場はほとんどが電話の市場、テレフォン・マーケットとして形成されているのである。テレビ局は具象的な視覚対象を放映上必要とするので、やむをえず怒鳴り合いの修羅場じみた場所を放映しているのである。(85ページ)
ちなみに山根短資は合併でセントラル短資になったらしい。
しかし、だとするとテレビのニュースで流れてくる数字はどこで誰が決めているのか。たぶん、さまざまなデータをどこかで集計して平均しているのだとは思うけど。