国際関係論: 2005年6月アーカイブ

元GATT事務局長のドンケル氏が亡くなったそうだ。彼がまだ現役か、引退直後の頃だったと思うが、日本にシンポジウムで来たことがあった。私は学部の3年生か4年生で、ゼミの悪友たちと会議誘導のアルバイトをした。その後、アルバイトもレセプションに呼んでもらったのだが、そうそうたる顔ぶれに気後れしてしまっていた。

しかし、勇気を出して、しどろもどろの英語でドンケルに話しかけた。その時、扉が開いて、シンガポールのリー・クアン・ユーがオーラを発しながら登場して、ドンケルとの話は中断してしまっった。ところが、一息ついたところでドンケルが手招きしてくれた。日米半導体摩擦の勉強をしていたので、多角的な貿易自由化の視点から見たら、日米の二国間の合意は的はずれじゃないかというようなことを聞いた気がする。

残念ながら私の英語力は今よりはるかに悪かったので、彼の(おそらく)ドイツ語なまりの英語はほとんど理解できなかった。しかし、最後に「お前はもっと勉強しなくちゃいけない」といわれたことだけは鮮明に覚えている。

ドンケルとのこの何気ない会話は、勉強している間に思い出すことがあった。実は最近もあった。ドンケルとの議論に負けないためにはどうロジックを組み立てたらいいかと考えるのだ。そういう意味では、彼は私の中で教師のひとりとして存在してきた。

彼にとってはどうでもいいパーティー・トークだったと思うが、私にとっては本気で勉強しなくてはと思わされた重大な出来事だったと今では思う。ご冥福をお祈りしたい。

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