情報通信政策の最近のブログ記事
二人の友人がそれぞれネットワーク中立性について本を書いた。
一人目はChris Marsden。この本にはクリエイティブ・コモンズのライセンス(Attribution Non-Commercial)が付いていて、PDFで配布されている。長すぎて私はまだ読めていない。
Chris Marsden, Net Neutrality: Towards a Co-regulatory Solution, London: Bloomsbury Academic, 2010. (PDFファイルがダウンロードされます。)
彼のブログでアップデートも行われているそうだ。
もう一人は九州大学の実積寿也先生。一昨年のITSでの報告がベースになっており、本の中の1章として収録されるそうだ(5月刊行予定)。
Toshiya Jitsuzumi, "Efficiency and Sustainability of Network Neutrality Proposals," Anastassios Gentzoglanis and Anders Henten, eds., Regulation And The Evolution Of The Global Telecommunications Industry, Cheltenham Glos: Edward Elgar, 2010.
私も頑張ろう。刺激になる。
「第3章 世界情報社会サミットと中国外交——インターネット・ガバナンスをめぐる単独主義?」(72〜96頁)担当。
2006年10月に日本国際政治学会で発表したペーパーが本に収録されました。脱稿後に大きな動きがあり、追記という形になってしまったのが残念。
インターネットの話が国際政治学の枠組みですんなり取り入れてもらえるようになったのは時代の変化ですね。ありがたいことです。
他の執筆陣は以下のようになっています。
序章 東アジア地域協力の展開——多国間主義の視点による分析へ:大矢根聡
第1章 中国の多国間主義:現実的リベラリズム?——「中国の台頭」下における新たな役割の模索:浅野亮
第2章 貿易分野における中国の多国間主義——「協力と自主」の現れとしてのWTO対応:川島富士雄
第3章 世界情報社会サミットと中国外交——インターネット・ガバナンスをめぐる単独主義?:土屋大洋
第4章 多国間主義とインド外交——核保有と経済成長:竹中千春
第5章 大国化するインドにおける多国間主義の動揺——現代「実利」外交の展開:伊藤融
第6章 韓国におけるFTA戦略の変遷——多国間主義の推進と挫折:磯崎典世
第7章 タイの多国間主義外交——経済外交の変化と持続:永井史男
第8章 オーストラリア対外経済政策の転換——多国間主義から二国間主義へ:岡本次郎
第9章 ASEAN外交の改革と東アジア共同体の功罪——政府志向の多国間主義から市民志向の多国間主義へ:勝間田弘
第10章 アメリカの多国間主義をめぐるサイクル——消極的関与と急進的追求の振幅とその背景:大矢根聡
Wikinomiksの中でDon TapscottとAnthony Williamsは、「つながったものだけが生き残るだろう(only the connected will survive)」と言っている。Anne-Marie Slaughterはフォーリン・アフェアーズに掲載された"America's Edge: Power in the Networked Century"の中で政府も例外ではないとしている。
日本でも今年6月に発表された総務省の「ICTビジョン懇談会報告書」でも「霞が関クラウド」が提唱されている。
国においては、各府省の情報システムの最適化をさらに進めていく必要がある。情報システムの効率化・費用低廉化に向け、クラウドコンピューティング技術等の最新の技術を活用し、可能なものから順次システムの統合化・集約化などを図る「霞が関クラウド」の構築を進めるべきである
しかし、政府が本格的にクラウド・コンピューティングに乗り出すとなると、セキュリティの問題がどうしても浮かび上がってくる。情報は共有されればされるほどブリーチのリスクにさらされる。
21世紀を生き残るためには政府もまたネットワークの中で生き残らなくては行けない一方で、そのネットワークが政府の業務をリスクにさらす。これは「クラウドのジレンマ」と言ってもいいだろう。
無論、このジレンマは政府だけではなく、プライバシー情報などを扱う企業にもある。しかし、国家機密が流出する危機ほど大きなインパクトはないだろう。単純に国家機密はネットワークに載せないというのが正解だろうが、情報の仕分けは新たな業務を作り出すことになり、業務改善に逆行する。
政府はすべてを縦割りにし、階層構造にすることで成立してきた。ネットワークの導入は政府の組織に変更を迫ることになる。霞が関クラウドはそうした長期的インパクトを作り出すことになるのだろうか。そこまで深遠な意図を持って構築されるのだろうか。
ドメイン・ネームとIPアドレスを管理するICANNが、米国政府(だけ)の手を離れて、各国政府との関係を結ぶという決定を下した。これはインターネットの歴史の中では大きな出来事で、きっと年表に中には書かれることになるだろう。
インドの友人がわかりやすいコラムを書いたので紹介。
Subimal Bhattacharjee, "League of Cyberspace Nations," livemint.com (October 7, 2009).
民主主義の同盟なんて言葉がはやっているけど、サイバースペース国家の同盟だそうだ。
【追記】前村さんのエントリーも参考になりますね。
前の職場でもあり、客員研究員をさせてもらってもいるGLOCOMのフォーラムが久しぶりに開かれる。
もう残席わずからしいので、お申し込みはお早めに。
http://sites.google.com/site/glocomforum09/
私はこの日、どうしても参加できない。とても残念。
私がGLOCOMに入った年は確か軽井沢でGLOCOMフォーラムがあり、刺激的な議論があったのを覚えている。今年は都内なのでアクセスが良い。行きたいなあ。
2004年から秘密結社のように開かれてきたICPCですが(別に秘密じゃありませんが)、今年もやります。まだプログラムが固まっていません。もうすぐ固まると思います。
http://www.icpc.gr.jp/meetings/200905.html
春の会合はどなたでも参加しやすいように都内でやるようにしています。ご興味のある方はウェブから申し込んでください。今回は慶應の三田キャンパスで開催です。
インターネットの未来に関する議論が世界中で始まっている。IPアドレスの枯渇の話はいうまでもなく、セキュリティやフィルタリングなどいろいろなトピックが出てきているし、キルナム・チョン先生のようにあと40億人つなぎましょうという人も出てきている。
そんな流れの中で私もヨーロッパのプロジェクトに参加することになった。ウェブ(ブログ)も少し前から立ち上がっている。私も世界の人たちに向けて日本やアジアのニュースを投稿することが期待されている。自分のブログも定期的に書けないのだから、できるかどうか不安だが前向きにやってみよう。
Towards a Future Internet
このプロジェクト、この秋から来年にかけて、ベルギーのブリュッセル、アメリカのボストン、そして東京で次々にワークショップを開催しながら、インターネットの未来に向けたシナリオ作りをする予定。楽しみだ。
3月16日(月)に情報通信学会のソーシャル・イノベーション研究会の今年度最終回を開催します。
スピーカーは韓国のインターネットの父といわれるキルナム・チョン教授です。幸い、日本語で講演してくださる予定です。
チョン教授はアフリカとアジアで取り残されている人々にインターネット・アクセスを提供するためのプロジェクトを開始しておられます。その概要と意気込みを伺う予定です。
ようやく私も出席の見込みです。
【日時】2009年3月16日(月)18:30~20:30
【発表者】キルナム・チョン氏(韓国KAIST教授、慶應義塾大学特別研究教授)
【テーマ】残り数十億人のための未来のインターネット
【概要】未来のインターネットに関する研究が世界中で始まっている。その多くは最初の10億人、つまり、先進国の現在のインターネット利用者に焦点を絞っている。残り数十億のインターネット・アクセスを持たない人々、特に発展途上国の人々のための研究努力もまた非常に重要である。これは、世界中の多くの研究者、先進国および発展途上国の双方の研究者にとって良い研究機会となるだろう。
※講演は日本語で行われます(資料は英語のみになります)。
【会場】インテル株式会社内 会議室
千代田区丸の内 3-1-1 国際ビル 5階
(JR有楽町駅徒歩3分。東京駅徒歩6分。)
http://www.intel.co.jp/jp/intel/map_tokyo.htm
【申し込み】情報通信学会事務局研究会窓口(kenkyu2◆jotsugakkai.or.jp)にメールでお申し込み下さい(◆を@に代えてください)。